インド北東部専門ニュース雑誌 Northeast Today

インド国内にありながらも、周縁地域といった位置づけで、アッサム州以外は人口が少なく、経済面でも他地域に比して相対的に重要度が高くないこと、地域全体で政情不安が長く続いてきたこと、民族的にもこの国の主流とは異なるモンゴロイド系の人々が多く暮らす北東部がインドの主要メディアに取り上げられる機会はあまり多くない。

そんなわけで、インド国内にあっても往々にして何が起きているのか、何が問題なのかが広く知られることのあまりない北東地域。もちろん他地域の人々からの関心が高くないということもあるが、北東地域のメディアの情報発信力の貧弱さもまたひとつの要因ではないかと思う。

各州都にそれなりにポピュラーなメディアが存在しているとはいえ、往々にして影響力は州内に限られているようだ。また紙媒体の新聞・ニュース雑誌の流通範囲の関係もあり、地域外からコンスタントに北東部の時事ニュースをコンスタントに入手したくても、なかなか容易ではなかったりする。

そうした現況下、比較的役に立つと思われるのが、ニュース雑誌Northeast Todayのウェブサイトだ。

このNortheast Todayについては、嬉しいことにiPadやアンドロイド等のタブレットPCなどを通じてインドの雑誌を購入できるmagzterにて、紙媒体で流通しているものと同一の誌面の電子版を購入することができる。残念ながら週刊ではなく、月刊なので情報量や鮮度はいまひとつということになるが、インド北東部の動向に触れるためのひとつの有力なオプションといえる。

Northeast Today 12月号

ボリウッドの大スターたちとペーシャーワル

数々の有名な俳優、女優を輩出してきたカプール一族のルーツは、現在パーキスターンのペーシャーワルにあることは広く知られている。偶然にしてはあまりに偶然すぎることに、ペーシャーワルの街のキッサー・クワーニー地区の半径200mほどのエリアに、ディリープ・クマール、そしてシャー・ルク・カーンの父親の生家があったというから驚く。

Bollywood’s Shah Rukh Khan, Dilip Kumar and the Peshawar club (BBC NEWS ASIA)

もともと北西地域の商業・経済の中心地としてだけではなく、文化と芸術の核として栄えてきたペーシャーワルではあるが、やはりそういう土壌があってこそ、映画人の揺籃の地となったのではないだろうか。いまやイスラーム原理主義過激派が跋扈する街というネガティヴなイメージが定着してしまっているが、非常に保守的な地域にありながら、とりわけリベラルな気風で知られた土地であることを忘れてはならない。

上記リンク先記事にあるように、カプール一族の先祖や伝説的な俳優ディリープ・クマールはともかく、シャー・ルク・カーンは今をときめくボリウッドを代表する映画人だ。彼が10代の頃に幾度か父の故郷を訪れていたこと、いとこのヌール・ジャハーンと息子で同名のシャー・ルク・カーンに関する逸話等々、非常に興味深いものがある。

シャー・ルク・カーン自身も、やはり父方の親戚はすべて向こうに在住ということもあり、ペーシャーワルについては格別な思い入れがあるのではないかと思われる。それはともかく、言うまでもないがインド北部と現在のパーキスターンは、まさに血の繋がった身内であり、たとえ国が分かれても、その縁はどうにも否定できない。

マドゥバラー、アムジャド・カーン、ヴィノード・カンナー、そしてアニル・カプールの父親で映画プロデューサーとして活躍したスリンダル・カプールもまた、ペーシャーワルの出身であるとは、この記事を目にするまで知らなかった。

よく知られた映画スターでさえ、このようにペーシャーワルをルーツとする人たちが多いくらいだから、映画関係の技術職やその他周辺産業に関わる人々の中で、父祖が同地を故郷とする人は相当あるのではなかろうか、と私は想像している。

記事内にあるように、インドを代表する映画人たちのルーツでありながらも、シャー・ルク・カーンの父親の実家近くにある映画館が二度ほど爆弾テロに遭ったことに象徴されるように、これを非イスラーム的であるとして敵視する過激派の活動により、映画という文化の存在さえ危うくなっている状況について胸が痛む。

インドとパーキスターンというふたつの国に分かれて65年が経過しているが、その時間の経過とともに、その記憶と伝統は次第に風化していく。それがゆえに、私たちよりももっと前の世代のボリウッド映画ファンにとっては周知の事実であったことが、こうして改めてメディアで取り上げられると「そうだったのか!」とあちこちでツイートされ、Facebookでシェアされ、ブログ等で話題になる。

1947年、イギリスからの独立の際にインドと分離したパーキスターン。元々は同じインドという地域でありながら、別々の国家として成立した両国は、今後永遠に「ひとつ屋根の下」で暮らす日は来ないだろう。それでも、水よりも濃い血の繋がりを否定することは誰にもできはしない。

インドで高速鉄道計画

2017年までに、インド西部で最高時速200キロの高速鉄道を導入することが計画されている。

Railways looks to run Delhi-Mumbai trains at 200 kmph (The Times of India)

これにより、たとえばムンバイー・デリー間の列車移動にかかる時間が相当短縮されることになるらしい。プネー・ムンバイー・アーメダーバード間については、日本の新幹線システムを採用する方向にあるという点にも注目したい。

インド、日本の新幹線システム採用軸に協議 両首脳合意 (asahi.com)

現在のインドの「高速鉄道」といえば、ラージダーニー急行、シャターブディー急行といったところだが、どちらも最高速度は時速120キロ程度。ゆえに日本の新幹線システムや他国の高速鉄道技術の導入が計画されているわけだ。

インドの場合、どの分野にあってもシステムとしては良いものであっても、現場のクオリティ・コントロールが粗雑であるがゆえ、いろいろと問題が生じているケースが多い。鉄道についてはどうだろうか?

ときに、同じ線路の上を両方から走ってきた列車が正面衝突したり、古い橋梁が崩壊して車両が落下したりといった、信じられない惨事が起きたりするのもインドの鉄道。

輸送の高速化はもちろんのこと、安全管理についても飛躍的な向上が見られることを願ってやまない。

Magzterでインドの雑誌を読む

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昨年からインドの雑誌類の購読がずいぶん楽になった。iPadやアンドロイドOS搭載のタブレットPC等で、販売されているものと同じ誌面を読むことができるMagzter社のサービスが開始されたのは、2011年6月のことだ。同社は、アメリカのニューヨークを拠点とするインド系の企業である。

目下、私が年間購読しているのは、ニュース雑誌のIndia Today(ヒンディー版)と旅行マガジンのIndia Today travel Plus (英語版)のみだが、他誌で気になる内容のものがある場合には、その都度個別に購入している。とりわけ注目しているのはNortheast Todayという月刊誌。普段、地域外で扱われる機会が少ないインド北東地域のニュース専門誌だ。

ただし、個別に購入するのに比べて、年間購読のほうがはるかに割安だ。たとえば週刊誌の場合は年間に10回購入、月刊誌の場合も5~6回購入した時点で、年間購読契約をしたほうが安くなる。なるべくそのようにしてもらうよう誘導しているのだろう。

定期購読していない雑誌の個々の号について、プレビューできるページがいくつかあり、内容について多少の見当を付けることはできる。

私自身は英語とヒンディーしか分らないが、ベンガーリー、マラーティー、タミルその他の各地方語誌の取り扱いもいろいろある。また、ごく一部近隣国の雑誌も購買・購読することができる。雑誌の分野も、ニュース、ファッション、教育、映画、自動車、写真、音楽、スポーツ、IT等々多岐に渡っている。私には縁がないが女性誌の扱いも多い。

電子書籍として、利用している端末に自動的にダウンロードされることになるのだが、印刷や輸送の手間がかからないためだろう、前述のIndia Todayの場合、本来の発行日の前々日夕方には手元に届いてしまうため、紙媒体で読んでいる人たちよりも一足早く記事を目にすることができるというメリットもある。

同じアカウントでログインしていれば、異なる端末(タブレットPCやスマートフォン)でも購入した雑誌を共有できるし、同じくパソコンからの閲覧もできる。紙媒体であれば、まさにそれを手にしていないと読むことができないが、これならばいつでもどこでも記事にアクセスすることが可能。また、一度端末にダウンロードされた誌面はそのまま本体に保存されるため、オフライン状態でも普通に読むことができることは言うまでもない。

ただ、同社のサービスで少々気になる部分もある。一部ずつ購入する分には問題ないが、定期購読契約をする場合のことだ。支払い手続きはiTunesあるいはGoogleのアカウントからなされるため、とても簡単である反面、解約はMagzterのアプリ上で行なうのだが、やりかたが少々判りにくい。加えて、自分から解約手続きをしないと自動更新になってしまうし、その更新月についても、Magzter社側から連絡が届くわけでもないため、そのあたりについては留意が必要だ。やはり、そのあたりはインドの会社なので(?)気を抜けない。

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製造・販売実績64年! ヴィンテージ・バイク 「ロイヤル・エンフィールド」

製造・販売実績64年 !! Royal Enfield Bullet 350

ひょんなことから、ロイヤル・エンフィールドのバイクが日本でも販売されていることに気がついた。古典的なブリティッシュ・バイクのメーカーで、元々はイギリスのロイヤル・エンフィールド社が生産していた正真正銘の「ブリティッシュ・バイク」であったのだが、1970年にイギリス本国のロイヤル・エンフィールド社が倒産し、国外での生産拠点であったインドの法人は生き残ったため、現在でも生産が続けられている。

目下生産されているどのモデルもヴィンテージなスタイルが保たれているが、特筆すべきはBullet 350というモデルである。英国での生産は1948年開始(1960年に終了)で、インドにおいては、1955年から現在まで製造されているという超ロングセラーだ。インドにおいて55年間、イギリスでの製造開始時期から数えると64年間も造り続けられているのだから驚きだ。

現在、道路を走っているバイクの中で最も設計時期が古いクラシック・バイクだが、それでいて「新品で購入できる」という非常に希なモデルということになる。

インドでは、正直なところ、このバイクは若者たちの間で人気はほとんどない。彼にとって何ら珍しいものではなく、父親かそれより年上の世代の人々が乗っていた古臭い乗り物というイメージしかないのは仕方のないことだろう。

世界中から引き合いがあるロイヤル・エンフィールドだが、これを目当てに西欧等からインドにやってくる人々もある。「このバイクを乗り回すためにインドに来た。半年くらいツーリング楽しんでから売り払って帰るよ。」という人もいるし、ヒマラヤ地方でロイヤル・エンフィールドに乗ることをウリにするバイク・ツーリングのツアーに参加する人たちもある。中には、インドでこのバイクを購入して、一路西へと走り続ける人もいたりする。

「パキスタン、イランを経てトルコへ。そこからさらに陸路でチューリッヒまで帰ります」なんて言うスイスから来た男性に会ったことがある。もちろんバイクを購入するだけでなく、まとまった距離(ちょっと気が遠くなるほどだが・・・)を走破してみたかったのだろう。

このバイクが走行する様子を、Youtubeで閲覧していただきたい。クラシックな装いはもちろんのこと、単気筒エンジンのサウンドも素敵だ。まさに大人のバイク。

Enfiled Bullet 350 Review (Youtube)

ロイヤル・エンフィールドは、今年3月の東京モーターサイクルショーに出展しており、日本では年間販売300台を目指すというが、まだまだ超レアなバイクとして注目度満点だ。上記リンク先の記事内で、「インドで若者の間で人気が高く・・」というのは明らかに誤りで、「腹の出た年配者が乗るバイク」「オジサンの乗り物」と記述するのが正しいが、日本市場における営業面での配慮から、こうした表現になったのだろう。

伝統あるBullet 350は当然魅力的だが、個人的にはミリタリー風に仕立てられたClassic Military 500 EFIに大変惹かれる。まるで、映画「大脱走」でスティーヴ・マックイーンが駆っていたバイク(実はこのバイクもロイヤル・エンフィールド!)を再現したかのようである。

ロイヤル・エンフィールドを乗りまわす人たちによるロイヤルエンフィールド友の会Royal Enfield Owners Club of Japan、といったサークルもあり、かなりコアなファンや熱烈な愛好家たちの存在がうかがえる。

最後に、インド最北部のラダック地方の海抜3,000~4,000m級の高地をロイヤル・エンフィールドで駆け回る西欧人たちの映像をご覧いただきたい。

Ladakh Himalaya Ride by Royal Enfield, India.mpeg (Youtube)

古い時代のバイクなので、オフロードやコンディションの良くない場所での走行が快適とは思えないが、それでも臆することなく、ワイルドにガンガン乗りこなせてしまうのは、現在でも生産されているのでパーツの供給はふんだんにあること、そして何よりも他のヴィンテージ・バイク(とうの昔に生産が終了しているもの)と違い、車両価格が安い「実用車」ということもある。ロイヤル・エンフィールドの販売価格については、こちらをご参照いただきたい。(価格はインド・ルピー表示。1ルピー=約1.5円)

しかしながら、日本でのロイヤル・エンフィールドの販売価格は大きく異なることについてはご注意願いたい。