規制等緩和と同時進行の感染者再増加の狭間で

英国では記事にあるとおりだが、一時は日々の感染者数が1万人を割ろうとしていた米国でも1日の新規感染者数は5万人に迫るところとなっている。それでも規制緩和・解除の流れは変わらないのは、やはりワクチンにより、死者・重症者数の大きな減少があるのだとすれば、こうした先進国で、コロナに対する指定感染症指定レベルが下げられることだろう。

それによりインフルエンザと同等の指定となり「コロナ禍の終わり」となるとすれば幸いなことではあるものの、いっぽうでまだまだワクチンの普及が遅れている国も多く、コロナ禍を脱して余裕が出てくるであろう先進国からの力強い働きかけに期待したいところだ。(しばらくの間、日本はその域に達しないだろう。)

そのいっぽうで、市民としてはワクチンにより重症化リスクは相当低減されるといっても、インフルのタミフルやリレンザ並みに安価かつ手軽に服用できて、効き目もてきめんな治療薬が出てこないと安心できない部分は多い。

「第2波」によりピークには1日の感染者が40万人を超えたインドでは、このところ4万人前後で推移しており、下げ止まりといった具合。ロックダウン、夜間外出禁止、大型商業施設や遊興施設などの営業停止といった制限も順次解かれて、ヒルステーションへの避暑客が大勢集まっていることなども伝えられ、現在は第3波を懸念する声もある。

インドでも今後はワクチン接種済みの人々の割合が高くなっていくにつれて、「コロナ後」が近づいてくることになるのだろうが、あまりに膨大な人口がゆえに、だいぶ先のこととなりそうだ。

おそらくコロナの流行は終焉することなく、ワクチン普及によって罹患しても重症化したり亡くなったりする人の割合が急減していく。それによって「恐れるべき病」ではなくなり、感染症指定レベルが下がることにより、「コロナ禍が終焉へ」という流れになることは間違いないように思われる。

英国、新規感染者5万人超 死者・重症者減で規制は解除へ (日本経済新聞)

五輪の歴史の中でインドが獲得してきたメダル数は?

いよいよ昨日7月21日から一部種目の競技が始まり、明日23日に開会式が行われる東京五輪。

Tokyo Olympics 2021, Full India Schedule: Events, Dates, Times, Fixtures, Athletes (THE TIMES OF INDIA)

上記リンク先は、インド選手たちが出場する競技の一覧。女子のカヤックと同じく女子の水泳は、インドから初参加の競技・・・と書くと意外かもしれないが、それよりも「意外!」に謂われるかもしれないことは、五輪の歴史の中でインドが獲得したメダル数(色は問わず)は、通算でわずか28個しかないことだ。2012年のロンドン五輪ではボクシングなどで合計6つのメダルを獲得したことは、インド史上初、空前の快挙であったのだ。

ちなみにこの「通算28個」というのがどういう数字であるのか、リオ五輪での主要国のメダル数と比較すると、その少なさがよくわかる。米国121個、中国70個、ロシア56個、日本41個、韓国21個であった。これらの国々がたったひとつの大会でこれだけ獲得しているのに、人口13億のインドが「すべての大会分合計して28個」なのである。人口規模で拮抗する中国は世界有数のメダル獲得王国であることと較べると、実に対照的だ。

これにはもちろん理由がある。五輪を国威発揚の有効な手段とする社会主義国を除けば、五輪の世界は「先進国クラブ」であった(現在もそういう傾向は強い)ため、あまり縁のないものであったこともあるが、インドでクリケット以外では、国際的なレベルの選手たちが出にくい環境であったこともある。庶民の関心の対象がほぼクリケット(東部や南西部など、一部においてはサッカーも)に限られること、それ以外のスポーツで身を立てるということがかなり狭き門となっていることには、やはりスポーツの価値への認知度があまり高くないという文化的・社会的な要因も大きいように思う。

それも2,000年代に入ってからは、かなり大きく変わりつつあるようだ。クリケット以外の分野でも、人々が豊かになるにつれて、健康への関心も高まり、スポーツを楽しむ人々が増えてきていることが裾野を広げているとともに、体育施設の拡充、各種競技の協会が先導するナショナルレベルの選手たちの強化への取り組みも強化されているようだ。近年、陸上競技、レスリング、ボクシング、重量挙げ、テニス、バドミントンなどの国際大会で活躍するインド選手が増えていること、五輪でもメダル獲得者が出ていることは、その現れだろう。

女子スポーツについては、地域的にかなり偏りのある分野もあり、陸上競技といえばパンジャーブ州、ボクシングといえばパンジャーブ州、ハリヤーナー州か北東のマニプル州、重量挙げならばこれもマニプル州というように、頂点を占める選手たちの分布が極端に集中している種目がある。母体となる競技人口そのものに大きな偏りがあるのでは?と想像するに難くない。(おそらくそうだろう。)

これまでが大国にふさわしくない低い水準にあったインド、今後の伸びしろは大きいはず。東京大会での飛躍を期待したい。

しかしながら気になるのは新型コロナの感染状況。7/20時点でインドの1日の新規感染者数は3万8千人余り。いっぽう日本では3,758人であった。インドの人口は日本の約10倍であるため、人口当たりで比較した新規感染者数の規模はほぼ同じだ。インドは「第2波」の収束方向にあり、いろいろ規制等を緩和していく中での下げ止まりといった具合で、日本は「第5波」がまさに爆発しようかという状況。そんな中での五輪開幕だ。とても喜べるような状況にはないことがとても残念であるとともに、大会と「第5波」の行方がとても気がかりである。

「対策」だけでは追い付かない

タイ同様に新型コロナ対策の優等生だったベトナムでも感染が拡大している。やはり感染防止対策は良くても、ワクチンが普及しないと、変異株の感染力が上がるとダメなようだ。

今後は「変異株により感染はあるものの低水準で続く米国と欧州」と「感染が急拡大するその他の地域」に二分されそうだ。

Vietnam records 2,454 new domestic Covid-19 cases (VNEXPRESS)

今年4月くらいまでは、コロナ対策において「優等生」だったはずのタイだが、ついに1日の新規感染者数が1万人を超えた。人口7千万人弱のこの国が「1万人」ということは、人口規模が約4倍のインドネシアと同等の感染拡大規模になっているということになる。「サンドボックス」のスキームを継続するような状態にあるのだろうか?

今のところ、インドネシアのような医療崩壊の話が聞こえてこないのは、タイがインドネシアよりもかなり社会システム等が進んだ国であること、島嶼部からなるわけではなく各地が陸続きであるというメリットゆえのことかもしれないが、それとてこのペースで拡大が続けば、遅かれ早かれ、似たようなことになるのではなかろうか?

やはり欧米での例で明かなように、コロナ対策でゲームチャンジャーとなるのは、ワクチンの普及をもって他にはないようだ。

Thailand plans more travel limits as COVID deaths hit record (REUTERS)

インドの駅舎

インド鉄道旅行の楽しみのひとつには、植民地時代から存在している歴史的な鉄道駅舎を楽しむこともある。

ムンバイCST、ハウラー、オールドデリー駅のような壮大な英国植民地鉄道建築は言うまでもなく、ハリヤーナー州の旧パティヤーラー藩王国には当時の藩営路線部分であっただけに、駅舎は個性的なデザインが施されたものであるし、同様にラージャスターン州、グジャラート州にも藩営路線があったため、かつての藩王家専用のプラットフォームであったところが残っていたり、バス路線による輸送に押されて、独立後にあまり発展を見せなかった路線では、「ガーンディーの塩の行進の時代もかくや?」と思われるような非常に古めかしい駅舎のままで残っていたりもする。同様に、地元の建築様式を反映させた駅舎も南インドなどで多く、長い汽車旅でプラットフォームに降りたそのときから「異国感」を感じることも少なくない。

そんなわけで、まるで国内線飛行機に乗るがごとく、出発の2時間くらい前には到着して、駅舎内を眺めて回ったり、用事もないのに列車のタイミングを尋ねるふりをしながら、駅長室その他を「ああ、ちょっとすみません」と覗いてみたりするのである。古くからある駅では乗客の待合室天井にパンカー(ファン。電化される前の植民地インドでは、天井から吊るされた板状のファンをサーバントが紐で振って風を送っていた。王家などでの様子として、時代ものの映画などで見られるシーン)があるなど、古い時代の痕跡がいろいろ見られるものだ。

もちろんインドの人たちは、そんなものに興味関心があるわけではなく、古色蒼然とした鉄道駅が好きなわけでもなく、今どきのインドで改築されたり新築されたりする駅は、そのような感じの建物ではなく、レンガとコンクリの無味乾燥な建物となるわけだが、このところはかなり豪華なものも造られるようだ。

ロークサバー(下院)での選挙区はバナーラスに移したものの、やはりモーディー首相お膝元のグジャラート州。州都ガーンディーナガルの新駅舎は、一昨日モーディー自身により開業式が行われたところなのだが、駅の上に300室を持つ五つ星ホテルが入るなど、複合施設を持つ大きな駅。プラットフォームを覆うドーム状の屋根は「コラムレス」つまり柱を持たず屋根そのものが支える構造だとか。

このような豪華な駅は例外的であるにしても、各地で駅舎がどんどん建て替わっているこの時代、「インド魅惑の鉄道駅~英領のヘリテージ~」みたいな写真集がどこかから出ないと、個人所蔵の写真以外にその姿を残すとなく、この世から消え去ってしまうことだろう。

東京五輪特集

インディア・トゥデイ2021年7月21日号

こちらはインディア・トゥデイ7月21号。今号の特集は、今月23日に開幕する東京五輪出場のインド人選手たち。

私たちにとっては「こんな時期に正気の沙汰ではないオリンピック」だが、ベストを尽くしてこの大会まで自身のコンディションを上げてきた選手たちには罪はない。出場選手たちが最高のパフォーマンスを発揮できるように祈るとともに、1年の延期というたいへん厳しい試練を乗り越えてきたアスリートたちを心から応援したい。

もちろん応援できるのは、テレビ画面その他のメディアを通じてのみ、ということになるが。せっかく日本で開催されるにも関わらず、地元との交流がほとんどないのは、もちろん仕方ないとはいえ当然残念。

次に開催される五輪は、このようなケチがつくことなく、誰もが気持ちよく楽しめる、そして選手たちが地元と交流も行なうことができる、本来の平和の祭典であることを信じたい。