街角のよろず屋の風景

極小の間口、中で店主が椅子にでも座るとそれでいっぱい。

そんな小さな店ながらも、なかなかの品揃えの雑貨屋さん。限られたスペースを「店舗兼倉庫」としてフル活用。先入れ先出しで品物を効率よく回転させていくこうした店はカッコよくはないかもしれないけど、ある種の機能美を感じる。店頭で何かを頼むと、迷うことなく数秒後にはカウンターの上に「ほらよ!」と出てくるものだ。

もちろん店主の人柄、性格にもよるので、狭くてかつ埃だらけだったりするところもなくはないものの、たいていは上手に切り盛りしている。

おそらく父親から教え込まれたこと、自ら経験して得てきたことなどが、店内に反映されているのだろう。

長年立ち寄ることが多い街角では、そんな店の中にいる人が年配男性からいつの間にか若者になっていて「代替わりかな?」と思ったり、まったく別の店に入れ替わっていることに気が付くこともある。

いつも同じに見える一角も、実は日々少しずつ変化している。ちょうど店の中の品物がお客に売れて新しい商品が入荷したり、製品が廃版となり、後継商品が発売されたりという具合に、街角の中身も入れ替わっていくものだ。

いろいろな人やモノがぎっしり詰まっているのもまた、街角のよろず屋さんのたたずまいに似ているように感じる。

内容は新型コロナ感染症が流行する前のものです。

昔々の習慣

さすがに今はドミトリーに泊まることはないのだが、最近ムンバイ利用した宿は、金額(2,135Rs/泊)の割にはバストイレが共同であった。

昔からムンバイは宿泊費が高いことで知られている。かつてバックパッカーをしていたころは、コラバ地区、フォート地区で可能なオプションは、コラバにあるサルベーションアーミーのドミトリーであった。それでも当時の私がデリーやカルカッタなど、他の大きな街でのシングルルームに払う宿泊費(安宿)よりも高かった気がする。それは当時の貧しかったインドにおいて、ムンバイが突出した商都であったこと、周囲に郊外地域が広がる余地のない半島の形状などが背景にあった。

現在では、デリー周辺には隣接するUP州西部やハリヤーナー州なども含めて、工業団地が発展しており国外からの投資も佐官になっている。またアーメダーバード、バンガロール、ハイデラーバードなども同様で、宿泊費がどんどん高くなっている地域が多い。そのため今ではムンバイだけが非常に高いという具合ではなくなりつつある。

話は戻る。その共同バストイレで思い出したのは、カイロのバックパッカーの常宿だったオックスフォードホテルのドミトリーでのこと。当時はアジア人バックパッカーといえば、ほぼ日本人しかいなかった(ときどき香港人はいた。海外旅行が自由化された直後の韓国からは中高年の団体旅行者はときおり見かけたが若者のバックパッカーはほとんどいなかった)ためもあってか、ここの宿のドミトリーは「西洋人部屋」と「日本人部屋」に分けられていた。なぜそうだったのか、管理上そうすると楽なのかは知らないが、いつ利用してもそんな具合であった。

大きくヘリテージな感じの見事な石造りの 建物上階にあり、清潔で広々としている割には宿泊費は安く人気の宿だった。確かギリシャ系のエジプト人による経営である。ときどき映画やCM出演者を求めるブローカーがやってきて、そうした機会と小遣い程度野お金を得る人もいた。

ドミトリーの日本人部屋では、夕方に連れ立って食事に出た後はトランプに興じるのが常となっていた。そんなあるとき、「大富豪」をやっている輪の中のAくんが突然、「やべー!」と叫んで脱兎のごとく廊下へ駆け出して行った。

みんなビックリして、しばらく固まっていたが、しばらくすると青ざめた表情の彼がドミトリーに戻ってきた。

「やられたー!」

なんでもシャワーを浴びる際、所持金やパスポートなどの入った貴重品袋をビニール袋に入れて、シャワー室内の壁に掛けておいたのだそうだが、ついそれを忘れてドミトリーに戻り、トランプに興じていたというのだ。

ドミトリーにいた旅行者たちは、手分けしてフロントに聞いたり、他のドミトリーや浴室に出入りする人たちに尋ねまくったが、出てくることはなかった。A君自身は気の毒であったし、持ち去った者は、その晩に宿の中に居た者であることか確実なので、とても気分の悪いことでもあった。

彼は翌朝、警察に出向いて盗難の証明書を発行してもらい、アメックスに出向いてトラベラーズチェック(当時の旅行者はこの形で大部分の旅費を所持していた)の再発行を申請してきた。

そんな一件があってから「毎日のことだから共同シャワーへの置き忘れって、いつかやりそうだよな。」という会話がドミトリーの中で広まり、しばらくの間は新しく入ってきた宿泊者たちにもAその「レガシー」が引き継がれていたようだ。ネット出現前の時代であったため、情報交換の意味もあり、同宿になった者たちは互いにいろんな話をしたものだ。A君自身は大変だったが、同じ旅行者仲間たちに身を以って注意喚起してくれたことになる。

実はそのしばらく後にも同じようなことがあった。日本人宿泊者のひとりがシャワー室に入ったら誰かの貴重品袋がドア内側にぶら下がっていたというのだ。そのときはすぐにフロントに知らせて、中に入っていた旅券で所持者がわかり、シャワーから上がってきたばかりの本人にマネージャーから引き渡せたので事なきを得た。貴重品袋に変なことがないようにと、僕らははしばらくそこで立会っていたのだが、持ち主は西洋人だった。知らされるまで本人は置き忘れに気付いてさえいなかったのだが、事情を呑み込むと、言いようもないほど狼狽していた。

そんなこんなこともあり、先述のムンバイのコラバのホテルの共同シャワーを出るとき、かつて安宿を泊まり歩いていたときの如く、「貴重品袋よーし!」「確認完了!」と小さく発声しながら指差し確認をしていたのであった。昔々の古い習慣が、ひょんなことから自然と蘇ってくることはあるものだ。それまですっかり記憶の彼方にあったA君の青ざめた表情が脳裏に浮かんだ。

内容は新型コロナ感染症が流行する前のものです。

ENGAGED

こちらはトイレ のドアの表示。「occupied」とあるよりも、少し厳粛な感じがする。中の人が真剣に取り組んでいるような印象を受けるではないか。

少なくとも便座に腰掛けてスマホでもいじっているような、待たされている側にとっては腹の立つイメージは浮かばない。

電話にしても、そうだ。話中で「busy」と考えると、無駄話のせいで繋がらないような気もするが、「engaged 」であれば、何か真面目な会話が進行中であるようなシーンが目に浮かんでこなくもない。

なぜこのように違ってくるのかといえば、occupied、busyは、いずれも単一の人物Aさんの行動を反映したものであるのに対して、engagedであれば、Aさんの意思にかかわらず、自然現象や第三者との関係により、その状態にあることを余儀なくされているというイメージをも想起され、「それならば仕方ない」というムードを醸成するのだ。

仕方ないは仕方ないのだが、トイレを待つというのは、まさに一日千秋の想いである。実に切ない・・・。

※内容は新型コロナ感染症が流行する前のものです。

夜遅く着いたときの宿

こんな思いをしたことのある人は少なくないだろう。

路地裏にあるホテル、夜遅い時間帯に戻ろうとすると、行く手を阻む野犬集団。通りかかる人があれば、テキトーにくっついてやり過ごしたいところだが、あいにく誰もやってくることなく時間が過ぎていく。

そんなこともあるので、あまり路地裏深くにある宿はなるべく利用しないようにしている。できれば表通りにあればなお良い。クルマの騒音だの街のざわめきなどというのはまったく気にならないほうだ。普段生活している環境がいつも騒々しいからということもある。

遅い時間帯に鉄道やバスで到着した場合、駅やバススタンドすぐ近くのエリアの宿が取れるといいのだが、これらがひどく街外れに立地していることだってあるので、いつもそうとは限らない。

ちょっとした大きさの鉄道駅の場合、「リタイアリングルーム」が利用できるとたいへんラッキー。今は空きがあればネット予約することも出来るため、鉄道に乗って目的地の宿をまだ決めていなかったら、ウェブで確認してみると良いかもしれない。最大48時間しか滞在できないとはいえ、鉄道好きな人にとっては「駅に宿泊」というのもなかなか良いものだし、深夜あたりになって到着してクタクタの身にはとても助かる。

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ハザーリーバーグの食事処

ハザーリーバーグの食事にはまったく期待していなかった。宿泊施設はとても快適なところが当たり、こういうホテルならば旨いものを出すレストランは併設していても、ここは田舎町なので外にはダーバーしかないだろうとタカをくくっていた。

ホテルの隣にある「ムグライ・ミルチ」というレストラン

 

「時間がないので、すぐに出てきて食べられるものを」と注文したライスとダルフライ。これだけで大変美味しかったので料理の腕・質ともに高いことがわかった。
夜も再訪した「ムグライ・ミルチ」

ところがどうして、ホテルから徒歩圏内にいくつもちょっとアップマーケットで美味しいものを提供するレストランが複数あるのだ。嬉しい誤算だ。

「NEW FRONTIER BAKERY」の上にある「Frontier’s Cafe」も良かった。
田舎町にはそぐわない感じの洒落た店内
チキンロールがオススメとのこと。
宿泊費に込みのホテルの朝食。シンプルだがとても良質であった。

また美味しいケーキを作って販売している店もあり、食後の散歩がてらデザートを買いに出るのも良い。店番をしている女性もフレンドリーで世間話をするのが楽しい。

ケーキの製造・販売をしている店。開いているときに撮影しておけば良かった・・・。

田舎町なのに、食事情もなかなか好ましいハザーリーバーグである。

 

内容は新型コロナ感染症が流行する前のものです。