インドにおける国内観光客の大幅な増加もあるが、ワーラーナスィーにおいては「カーシー・ヴィシュワナート・コリドール」の完成もまた、訪問客の急増の要因となっているという話を耳にする。
ランチにしてはあまりに遅くて、さりとて夕飯にはあまりに早過ぎる、そんな時間帯に訪れたダシャーシュワメード・ガート近くの路地で食堂のご主人が、コリドール完成後の日々について話してくれた。
私の体感では、コリドールが出来てから、このあたりでは訪問者が4倍くらいになっていると思いますね。4割増ではありません、4倍です。大変なことです。
そんな具合なので、皆さんとても収入が増えていますよ。観光客相手の店だけじゃありません。雑貨屋さんなどもそうです。
たとえばこの路地なのですが、ここを進んだ先には南インドの人たちがよくお参りする寺があるんです。南由来の神様が祀られているからなのですが、もう朝3時くらいからかなり人が通るようになりました。うちも正直なところお客さんとても増えましたよ。
でもいいことばかりでもないのです。とにかく未明から深夜過ぎまでうるさい、トラブルも起きる、あまりの混雑で、私たちここの住民の往来にも四苦八苦。子供を毎日学校まで送り迎えするんですが、渋滞がひどくなって身動きが取れない。
以前は私も家族もガートで散歩したり、私はヨーガもやってましたが、今はそういう気にはなれない。とにかく人が多いからですよ。
それに私たちが行っても、あれ買えこれ買え、写真撮らないか、ボートに乗らないかとつきまとわれる。ああいう人たちはよそから来ているでしょう。私たちと繋がりもないから、観光客と地元の路地の私たちの区別もつかないんですよ。
急に仕事が増えたり、売り上げが上がったりするのもいいけど、どこかでコントロールが必要です。お金はあるに越したことないけど、まともな暮らしが出来なくなるようでは困りますから。
ところで、ワーラーナスィーのよく知られた4つの名前を知ってますか?
そう、ワーラーナスィー、カーシー、バナーラス、あとは何でしょう?
アーナンド・ワン(Anand Van=平安の森)です。昔はここには森があったのですね。のんびりした土地だったようです。とんでもなく大昔のことですけど。
でも今の時代、ここにはもう平安なんてありません。次から次へと押し寄せる人の洪水、ひどい騒音、ケンカ、忙しくて気の休まらない毎日・・・。
コリドールがもたらした功罪いろいろありますよ。
20年ぶりくらいに訪れたワーラーナスィー。昔から人は多かったような気がするが、それでも現在の混雑ぶりは確かに尋常ではない。生まれも育ちもバナーラスという店主が言うのだから、この状態はまったくもって、いかんともしがたいという具合なのだろう。