巻きが少ないトイレ紙

インドで近年こそ巻きの大きなものもふんだんに出回るようになったが、伝統的な巻きのサイズはこれだし、これらは今でも流通している。

感覚で言うと2回分、うまくいけば3回分だろうか。カバンの中で邪魔にならないよう芯を抜くと、本当に少なくて心許ない。

インド式トイレであれば水で済ますが、洋式だと姿勢上容易ではないため紙を使う。いやインド式だって置いてあるのが汚い缶とかならやはり触るのはちょっと・・・で、紙を使うという人は少なくないだろう。

それで出先でパーニープーリーをつまんだりするから、朝のお通じ(笑)以外に予定外のものがやってきたりする。カバンを開けたらすでに一度使用済みだと、「あいやー!足りるかなぁ、こりゃー?」となると大変焦るのである。

公営のホテル

インドの多くの州にそれぞれの州営観光公社による宿泊施設がある、というかあったというか、まだあるところもけっこうあるというか。

日本ならかつての「国民宿舎」「かんぼの宿」自治体の宿泊施設などがこれに近い性格のように感じなくもないが、やはり異なる。

州営観光公社は、州観光のワンストップサービス機関として、州の観光をリードする存在ということになっており、宿泊施設、バスやクルマなど手配、韓国人パッケージの取り扱い、土産物屋などを総合的に取り扱い、州内の観光業の発展のモデルケースとしてリードすることになっていた。

インドが社会主義を志向しつつも民間財閥の力を活用する「混合経済」時代からのもので、90年代前半以降の規制緩和の流れの中で、業務の幅が次第に狭くなったり、公営の宿が民間に売却されたり、旅行手配部門は収益を上げることが強化されたりと、大きく姿を変えてきた。

そうした中で、ある時期までは州営公社の宿は、質の割には料金が安めで、部屋の広さや設備についてはそれぞれの公社が定めた基準に従っている。そのためあまり当たり外れがないとともに、初めての利用でも不安がないといった利点があった。駐車スペースも充分で部屋以外のロビーであったり芝生の庭であったりといった「余白部分」も充実していることが多かったのも人気の背景にあったのだろう。

例えてみるならば、私たち一般人はなかなか利用する機会のない「ダークバンガロー」のような政府関係者が出張時に利用する宿泊施設のような「一般的な想定範囲」の官舎的な安心感があった。

そんなわけで、当時のロンプラにもよくRTDC(ラージャスターン)、UPTDC(ウッタル・プラデーシュ)、HPTDC (ヒマーチャル・プラデーシュ)等々、各地の州営公社が多く掲載されていた。

RTDC Hotel Sarovar
敷地入口から建物まで少し距離がある。ぜいたくな立地だ。

だが90年代半ば以降はインド人たち自身の間での観光ブームにより、各地で民間宿泊施が急増。その中には価格と質のバランスの良いホテルも出てきたため、総体的にサービス精神とメンテナンス意識に劣る公営施設の人気は凋落していった。

キャラバンサライ風の建物は「新館」
新館入口

そして現在はすでに民間に売却されてしまったり、民営化されたりした「元は公営ホテル」がいろいろあるものの、そうではなく現在もそのままの公営ホテルは、予約サイトでの取り扱いもないことが多いため一般的に予約しにくい、面倒くさい施設となっていることが少なくないようだ。

レセプション

レセプションに面したところにあるロビー

メールや電話で予約した後、代金は宿泊当日払いであればそれでも構わないが、予約したとたん、「それでは○日以内に宿泊料金を私どもの以下の口座にお振込ください」など言われたらどうだろう?そんな感じなのである。

実はプシュカルには、州営RTDCのホテル・サローワルというホテルがあり、これが1980年代後半のロンプラでは一番のオススメだった。清潔で快適なドミトリーがあり、新館には広くてきれい、加えてゆったりとしたスペースのベランダがあり、とても眺めが良かった。また旧館はかつてこの地を領有した王の宮殿のひとつが宿に転用されており、「パレスにエコノミーな値段で泊まれる」と、これまた人気があった。

新館客室内

ベランダも広い

私は個室を利用したことがあり、最初は旅行途中でしばらく同行することになったカナダの旅行者とシェア、そのしばらく後には当時付き合っていた彼女と利用した。いずれも快適で、広々としたロビーで本などを読むのも良かったし、併設されているレストランも外の食堂で食べるよりも、なかなか良いものが提供されていたように記憶している。

「旧館」は元パレス

もうあのホテルは無くなっているのだろうと思っていたが、まだ同じところにあった。ただし門からしてかつての輝きのようなものはなく、宿泊客の姿のない寂れた施設になっていた。もうこうなると、政府がこのような施設を運営すべき理由もないだろう。

カフェテリアはかなりくたびれている。

ただしロケーションと建物自体は良いので、民間に売却してきれいに改装すれば、地域で一番の宿泊施設に返り咲くことは充分可能に思える。今のままではたいへんもったいないRTDCホテル・サローワルだ。

せっかく来たので、ホテルのカフェテリアでチャーイ、ナーシター(お茶と軽食)を楽しんでみた。

 

 

ホテルの出入口付近でこんな碑文を見つけた。2022年にRTDCの再生プログラムが開始されたとのことで、その式典には州政府の関係閣僚(観光大臣、産業大臣、元保健大臣)とともにRTDCの長官の名前が刻まれている。

しかし「再生プログラム」とやらが適用されてもこんな状態なのか?という気がしてしまう。

JKテンプル

カーンプルにあるシュリー・ラーダークリシュナ寺院ことJKテンプルもJKグループによるもの。この寺院を運営するトラストは、JKのいわば宗教部門ということになる。

JKテンプルで多くの人々に参拝してもらう一方で、JK本部がある路地裏にはちいさいけどきれいなこのお寺があり、路地のおばちゃん、おばあちゃんたちが夕方集ってアールティーをやっている。グローバルに展開しつつも、先祖代々の超ローカルな繋がりも大切にする姿勢には驚かされる。

私は芝生の庭でパニールバーガーを食べている。ガーデンにはご覧のようなスマートな店があり、メニューには様々なアイテムが用意されており、子供たちが大好きなアイス類も充実している。屋外のイベント会場のようでもあり、どこかリゾートに来たようでもある。

パニールバーガー

屋外のイベント会場かリゾートにでも来たかのようだ。

だが実はここはヒンドゥー寺院の境内であり、小洒落た店で働くスタッフたちは、このお寺を運営するトラストの人たち。つまりこうした「サービス」がお寺のプラサードという位置づけであり、世俗の空間ではないのだ。

お寺は旧来からの宗教団体ではなく、成功した企業家による慈善事業としての活動であり、その企業の宗教団体部門ということにもなるのだろうが、なかなか面白い取り組みだ。JKテンプルは近年できたものではなく1960年に始まったものである。

抹香臭くなくスマート、清潔かつスタイリッシュ、説教臭く臭くなくカジュアル。日本でも外食産業でもアパレル企業でもなんでもいいのだが、宗教臭のしないお寺や神社みたいなものを作ると良いかもしれない。