インドで新薬治験による死者多数

しばらく前(2012年11月1日付)のものではあるが、看過できない記事がある。

Have India’s poor become human guinea pigs (BBC NEWS MAGAZINE)

従前から、インドは外資系製薬会社をはじめとする医薬品の治験大国として知られている。こうなったのは、2005年にインド政府が医薬品の治験に関する規制緩和を実施したからとのことである。

人口規模が桁違いに大きく、様々な分野のデータを収集しやすいこと、英語が広く普及しており、現場の医療従事者の中でもとりわけ治験を実施する臨床現場の医師については、英語を駆使できるのは当然であることも好都合だ。

都合が良いといえば、事故が起きた際の処理にかかる手間や費用についても同様なのだろう。これによる事故についてもしばしば報じられてきたが、具体的にどれくらいの件数が発生しているのかについてはよく知らなかった。

だが、上記リンク先記事によると、死亡事故だけで、2008年に288件、2009年に637件、2010年に668件、2011年には438件も発生しているのだという。対象となるのは、往々にして貧困層の人たちで、治験に関する説明をして、当人たちからきちんと同意を得ているかということについても不明瞭な部分が少なくない。

1984年12月、マッディヤ・プラデーシュ州のボーパールのユニオン・カーバイドの工場で起きた有毒ガス漏れにより、25,000名もの市民が亡くなった事故は、史上最大の産業事故として語り継がれている。そのユニオン・カーバイド社による賠償の一環として建てられたボーパール記念病院でも、やはり治験による事故が発生しており、前述のガス事故で被害を受けた人たちもその中に含まれているというのは、あまりにひどい話だ。

インド自身についても、周辺国で同様のケースを生じさせているのではないかということが懸念されないわけではない。インドの医科大学が、ネパールで近代的な病院を建てて、地域医療に貢献しているが、これとて単純に善意で行っているというわけではないだろう。医科大生や経験の浅い医師等の学びと実践の場でもあることは言うまでもない。それはともかく、こうした施設もまた、製薬会社の治験を引き受けるのには絶好の環境であることは間違いない。

TRAIN IMPOSSIBLE

インドの隣国バーングラーデーシュの首都ダーカー近郊のトンギにて、毎年1月あるいは2月に、3日間に渡って行われるビシュワ・イステマーは、ムスリムの人々が一堂に集まる催しとしては、サウジアラビアのメッカにおけるハッジに次ぐ規模の人々がやってくるという。

北インドのデオバンド学派の流れを汲むタブリーギー・ジャマアトの呼びかけにより、1946年に始まったものであるというから、まだ歴史は浅いものの、近年ではそこに集う人々の数は400万人とも500万人とも言われるようになっている。タブリーギー・ジャマアトの影響力の大きさを感じずにはいられない。

一国の首都に匹敵する規模の人数がその祝祭のために各地からはるばるやってくるということになるから大変だ。そんなわけで、交通機関も大変混み合うことになるようだが、その典型的(?)なラッシュぶりや祝祭の様子を伝える写真を掲載したウェブサイトへのリンクが、Facebookでシェアされていた。

こちらがその驚異的な混雑ぶりだ。機関車の形や客車の色合いさえもよくわからないほどで仰天してしまう。

願わくば、トンギに集うすべての善男善女たちに幸多からんことを。

ジュガール

今年11月にこういう書籍が出版された。

書名:大富豪インド人のビリオネア思考

著者:サチン・チョードリー

出版社:フォレスト出版

ISBN: 9784894515390

大富豪インド人のビリオネア思考

サブタイトルに『富と幸福を約束する「ジュガール」』とあるように、この本では「ジュガール」による無限の可能性とイノベーション、個々に隠された能力の開発と幸運の呼び込み等を説いている。

だが、そもそも「ジュガール(जुगाड़)」という言葉に、そんな深淵なエッセンスが含まれているのかといえば、なんとも言えない。工面するとか、手立てする、準備する、用意するといった意味があるが、「手に入る限りでなんとか都合する」「利用可能な範囲でなんとかやりくりする」といった具合で、要は得られるリソースの範囲内で、機転と創意工夫によりなんとかするといったことだ。

そんなわけで、インドに限らず多くの途上国では、都市部・農村部を問わず、いろいろとジュガールを効かせた乗り物や作業機器を目にすることになる。バイクを改造したテンポーなどはその典型と言えるし、違法ではあるが送電線から盗電した電気を自宅に引き込んでいるのもまた同様だ。

日々を生き抜くため、そしてよりベターな暮らしをするために、多くの人々がジュガールを効かせた日々を送っているのだが、その即興性とは裏腹に、物事の根本まで突き詰めて考えず、とりあえず目的が達せられれば良しとする、その場限りのやっつけ的な要素もあるので、必ずしもこれが手放しで賞賛できるものではないようにも思うが、この本の中で説かれている「ジュガール」とは、より広義の解釈による発想の転換とポジティブな思考の提案ということになるのだろう。

この本で、「ジュガール」は「日本と日本人を蘇らせるソリューション」であると書かれているが、同書を読んだ私も確かにそうかもしれないと思っている。だが、それ以上にこの「ジュガール」をインド古来の問題解決ソリューションであるとして本を著し、セミナーを開いたりする機転と着想、行動力とバイタリティこそが見習うべきものではないかと思う。まさにそういうマインド、思考、行動こそが、著者が主張するところの「ジュガール」ということになるのであろう。

インドのヴィザ 取得所要期間ほぼ半月に

先日、インド入国の「2ヶ月ルール」廃止へ と題して、2010年から適用されてきたこのルールが廃止となることについて触れてみた。

それはさておき、かなり気になるのは、今年11月以降、日本でヴィザを取得しようとすると、たとえそれが観光ヴィザであっても、申請から取得まで最短で半月(12~16営業日)もかかってしまうらしいことだ。

ビザ取得にかかる所要日数 (インドビザセンター)

ヴィザ申請が大使館からビザセンターに移管された当初は、午前中に申請すれば夕方に受け取ることができたものが、翌日、翌々日と、発行までにかかる時間が伸びてきていたが、11月1日からは一足飛びに半月となっている。単に申請数が増えたというだけではなく、個々の申請者の過去のヴィザ取得状況やインドへの出入国状況などもチェックしているというような話を耳にする。

主にテロ対策ということになるのだろうが、出入国者が増えてくるに従い、ヴィザの名目と実際の渡航目的が合致していなかったりするケースが増えてきているのではないかとも考えられる。

業種や事業の規模にもよるかと思うが、仕事により渡印するにもかかわらず、滞在期間が数ヶ月程度であるため、取得が容易で必要なものも、パスポート、写真、料金以外は、所定の申請書しか要らない観光ヴィザで済ませてしまうというケースも少なくないであろうことは想像に難くない。

かといって、今のところ日本人が、インドの治安や雇用に甚大な影響を及ぼすなどということは考えられないので、インドにとっての「問題国」以外については、ぜひお手やわらかに・・・と願いたい。

とりあえず、インド渡航を予定されている方々については、ヴィザ申請はくれぐれもお早めに!

インド北東部専門ニュース雑誌 Northeast Today

インド国内にありながらも、周縁地域といった位置づけで、アッサム州以外は人口が少なく、経済面でも他地域に比して相対的に重要度が高くないこと、地域全体で政情不安が長く続いてきたこと、民族的にもこの国の主流とは異なるモンゴロイド系の人々が多く暮らす北東部がインドの主要メディアに取り上げられる機会はあまり多くない。

そんなわけで、インド国内にあっても往々にして何が起きているのか、何が問題なのかが広く知られることのあまりない北東地域。もちろん他地域の人々からの関心が高くないということもあるが、北東地域のメディアの情報発信力の貧弱さもまたひとつの要因ではないかと思う。

各州都にそれなりにポピュラーなメディアが存在しているとはいえ、往々にして影響力は州内に限られているようだ。また紙媒体の新聞・ニュース雑誌の流通範囲の関係もあり、地域外からコンスタントに北東部の時事ニュースをコンスタントに入手したくても、なかなか容易ではなかったりする。

そうした現況下、比較的役に立つと思われるのが、ニュース雑誌Northeast Todayのウェブサイトだ。

このNortheast Todayについては、嬉しいことにiPadやアンドロイド等のタブレットPCなどを通じてインドの雑誌を購入できるmagzterにて、紙媒体で流通しているものと同一の誌面の電子版を購入することができる。残念ながら週刊ではなく、月刊なので情報量や鮮度はいまひとつということになるが、インド北東部の動向に触れるためのひとつの有力なオプションといえる。

Northeast Today 12月号