権力闘争

アフガニスタンで、田舎侍たちが都を落としたものの、大将の座を巡って内輪もめだろうか。パキスタン陸軍が育て、各所に「同陸軍からの出向者たち」もあつたとされ、軍紀に厳しかったと思われるターリバーン1.0のころと異なり、ターリバーン2.0は、指導者も幾度か代わり、反カーブル政権の勢力も合流した部族の人たちの連合体。力と指揮の関係が縦軸で繋がるだけでなく、横軸で張り合い併存する関係もあるはず。

おそらく地域レベルでもこうした小競り合いがあって、勝ち残ったほうが上層部から暗黙の了解を得る、というような仕組み?のようなものがあるのではないか、と想像される。今後もいろいろなことが起きそうだ。ターリバーン勢力のいろんな層で「薩長連合」的な危なっかしい関係性があるのかもしれない。これはあくまで私の想像に過ぎないのだが。

タリバンで撃ち合い…ナンバー2のバルダル氏が負傷しパキスタンに移送 (中央日報)

パンジシール陥落、獅子は敗走

アフガニスタンのパンジシール渓谷の戦いは、破竹の勢いのターリバーンを前に、なすすべもなかったようだ。昨夜のインドのニュース番組「Aajtak」によると、故アフマド・シャー・マスード司令官の息子、アフマド・マスードは敗走中で、彼の父方のおじは戦闘中に死亡したとのこと。彼らが所有していたという軍用ヘリコプターもターリバーンに差し押さえられたとのことで映像に写っていた。

インドメディアによるものなので、バイアスがかかっているかもしれないが、さもありなん・・・という内容の報道もあった。今回のパンジシール攻撃の作戦には、パキスタン軍も関与していたとのことで、ドローンによる上空からの攻撃なども実施されており、マスード派など北部同盟+旧政府軍残党の動きは、空からの偵察によりターリバーン側に筒抜けであったらしい。戦闘開始期限までは、交渉による懐柔を試みたものの、不調に終わったため攻撃に踏み切ったわけだが、逃走している集団には、降伏すれば不利な扱いをしないと呼びかけるなど、対話志向の姿勢を見せているのは幸いだ。

パンジシール渓谷のマスード派のもとには、旧政権の副大統領も身を寄せているなど、インドとしても新政権の中で、一定のコネを持つ人物が残ることを期待したいところだろう。
インディア・トゥデイ最新号には、「インドはこれほどアフガニスタンに貢献したのに」と、費やした予算、ダムなどのハコものその他の経済協力の例が挙がっていたが、これまでの親印政権から親パ・親中政権へと180度の転換となる。
パキスタンにとっての「戦略的深み」の復活に繋がるものでもあり、インドは軍事的にも再考を迫られることになる。

この戦略的深みとは、簡単に言えば次のようなものだ。
南北に長いものの、東西には薄く、インド北西部に細長く貼りつく形のパキスタンの国土は、同国にとって地理的に降りなものがある。アフガニスタンの親パ政権のもとで、アフガンの国土を有事の際にインドから攻撃を受けない「安全地帯」として、軍事的拠点として活用できるようにすること。また首都圏を強襲されるなど存亡の危機に陥った場合に指揮系統、行政機能をも移転可能な後背地を国外=アフガニスタンに持つことが可能な関係を構築・維持すること。これがパキスタンにとっての「戦略的深み」となる。

Ahmad Massoud safe, says NRF; Taliban ask ex-Afghan forces to integrate with govt: 10 points (Hindustan Times)

ターリバーン特集

配信されたインディア・トゥデイ最新号。特集記事は「ターリバーンにインド政府はどう向き合うべきか」。

良好な関係にあった前政権とは反対に、パキスタンの軍事統合情報部(ISI)とは「親子関係」にあったターリバーン政権の復活。インドにとってアフガニスタンは「遠いどこかの国」ではなく、歴史的に繋がりが深く、パシュトゥーン起源の歴史上の人物やその血を引く自国民も少なくないだけでなく、安全保障上の大切な地域。インドメディアの注目度は高く、アフガニスタンに関する知識の蓄積、分析の深さもまったく日本の比ではない。

米軍が去ったカーブル空港

インドの放送局による「米軍撤退直後のカーブル空港」報道クリップがYoutubeでシェアされている。

きちんとした軍の戦闘服を着用しているのは、ターリバーンの313部隊というコマンドー集団とのこと。伝統的ないでたちでないところが、いかにもちゃんと訓練されたプロ兵士という感じがする。「孫にも衣装」といったところだが、外国メディアに撮影させてオンエアしてもらうことにより「意外と近代的だ」というイメージ構築の意図もあるかもしれない。空港に残された戦闘機やヘリの類は、米軍発表によると「無力化済みである」とのことだ。

ターリバーン側によると、可能な限り早い時期に近隣国、とりわけイラン、カタル(「カーブル」であって「カブール」ではないように、本来は「カタル」であって「カタール」ではない。こんなこと言っても切りがないが)とのフライトからでも再開したいとのこと。

アナウンサーは「ターリバーンが占拠した」と言っているが、見出しには「テロリストたちが占拠した(आतंकियों ने किया कब्ज़ा)」と出ていることから、少なくともこの局はターリバーンについて、そのように考えているのだろう。(一般的にインドメディアの大半もインド政府も同様の考えかと思う。)

米軍が去ったことを祝い、ターリバーンの兵士たちが空に立て続けに撃っている映像もあり、「いくつものマガジンを空にしている」そうだが、空に無数に撃てば、その数の弾丸がいつか落ちてくると思うのだが、それが当たって死んでしまうということはないのだろうか?アフガニスタンではないが、インドのビハールなどでも、結婚式の際に空に向けて祝砲を撃つというようなことはよく聞くが、こういうのは怖い。

काबुल एयरपोर्ट में घुस गया तालिबान, स्पेशल फोर्स यूनिट बदरी 313 के आतंकियों ने किया कब्जा (INDIA TV)

「インドにおけるタリバーン的思考」

一昨日、国営ドゥールダルシャンで放送されたBharat mein Talibani soch ? (インドにおけるタリバール的思考?」と題した討論番組。

出演はインドのある識者、BJP幹部、そしてふたりのイスラーム学者たち。学者たちは身なりからしてもムスリムのかなり保守層に属すると思われる。

こういう番組でしばしばあるのが、開始前から結論ありきの集団リンチ的な展開だ。まずは左のアナウンサーで司会を務めるアショーク・シュリーワスタヴが「カーブルで、タリバーンからの布告で15歳から35歳までの女性を登録するために兵士が家々を回り始めている」「インドの社会党議員のひとりがタリバーンによる首都制圧を『アメリカからの独立』と称え、タリバーンを『自由の戦士』と褒めたたえた」ということから話をひとりひとりにふっていく。

もちろん出演しているインドのイスラーム学者たちもタリバーンを肯定せず、前のタリバーン政権のときの二の舞いとなることを懸念する発言などをしているのだが、右寄りの識者とBJP幹部が意図的にイスラーム教そのものを挑発するような発言をして、これに対する学者たちの反論、言葉尻をとらえてのヒンドゥー右翼による再反論・・・という形に対話が流れていく。

こうした不毛な討論番組は民間放送にもよくあるのだが、国営放送でこうしたバイアスがかかるというのは、政権からのそうし誘導があるのではないかとか、世論誘導のためのツールとしているのだろうとか、いろいろ考えてしまう。「国内でのタリバーン的思考について」考察するという目的から、「国内のイスラーム教徒を不審視する」という流れで、大変不健全なものだ。

また、こういう番組にヒンドゥー保守派とイスラーム教徒保守派というふたつの両極端な人たちを出席されて討論というのもあからさまな意図が感じられるようだ。