勝利の女神が降臨 W杯決勝戦

ワールドカップの決勝戦、試合そのものの話ではないのだが、あのシーンを目にして「誰だ?あの神々しいまでの美女は?」「美し過ぎる、この世のものとは思えん!」と思った方はさぞ多かったはず。

トロフィーを披露する役回りで、映画女優のディーピカー・パードゥコーンが出ていたのだ。美貌と見事な8頭身は言うまでもないが、背丈が175cmくらいあるので、このような場で大変見栄えがする。

どういう経緯でここに出ていたのか知らないのだが、本大会に出場していないインドが決勝戦でこのような存在感を示したことに、侮れないものを感じた。

昨夜の決勝戦の場に姿を現したディーピカーという名の「勝利の女神」は、120分に及ぶ両者の激しい戦いを目にして迷いつつも、最後の最後で青と水色のユニフォームの側に微笑んだ。

だからアルゼンチンはPK戦を制することができたのだ。そして私たちはいつもなんとなく口にしていた「勝利の女神」は、実はインドからやってくることを知るに及んだ次第。

開催地、開催時期、全日晴天、サウジアラビアの大金星、日本の躍進、モロッコの大躍進等々、異例なことが多かった今大会は、やはり歴史的な大会であったことが、最後の舞台で大きく印象付けられた。

FIFA World Cup: Deepika Padukone unveils trophy in final – WATCH (THE BRIDGE)

ドーハの歓喜

ワールドカップのグループリーグE組の日本vsドイツの一戦、誰もが予想していなかった日本による後半の電光石火の2得点による逆転勝ち。大会の優勝候補筆頭格を相手に、日本におけるサッカー史上最大の金字塔を打ち立てることとなった。

ワールドカップに出場していない国でもワールドカップへの注目度は高く、南アジアでもとりわけバングラデシュ、そしてインドの東北部、西ベンガル州、カルナータカ州、ゴア州、ケーララ州など、サッカー人気の高い地域では熱も上がるが、このたびの日本のドイツが相手の勝利については、その前日にサウジアラビアがやはり大変有力な優勝候補の一角であるアルゼンチンに対して逆転勝ちを演じたのと同様に、驚きを持って報道されている。

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World Cup: Japan bank on ‘insider’ knowledge (The Telegraph)

FIFA World Cup Germany vs Japan: फीफा वर्ल्ड कप का दूसरा उलटफेर, जापान ने 4 बार की‌ चैम्पियन जर्मनी को हराया (AAJTAK)

思えば今から29年前、1994年10月にこのドーハでアメリカワールドカップ・アジア地区最終予選の最終節、対イラク戦で2-1とリードして迎えた後半のロスタイム、コーナーキックからの得点で2-2に追いつかれて引き分けたことにより、勝点でイーブンであった韓国に得失点差で下回ったことからグループ3位となり、ワールドカップ本大会行きを逃すという惨劇が起きた。

まさにそのピッチ上で中盤選手としてプレーしていたのが現在日本代表を指揮する森保一監督。「悲劇」から30年近い年月を経て、このドーハの地で「歓喜」を演出したことに、因縁めいたものを感じる。

世界のトップクラスの代表を下すという歴史的な出来事となったが、目標へ到達するための通過点のひとつ。日本代表の次の試合は11月27日のコスタリカ戦、そして12月2日には、今大会の最強チームではないかと思われるスペイン代表とのゲームが控えている。グループリーグE組2位の位置を確保して、決勝トーナメントへ進出し、悲願のベスト8を達成できるよう期待したい。

ガチなアカーラー(道場)

マハーラーシュトラ州のコールハープルのアカーラー(道場)を見学したことがあるが、ここは強豪を輩出する名門らしく、極めてガチなところだった。

コロナ禍で寄附は減り、大会も開かれなくなるので賞金収入はなくなるわ、罹患者も増えるなどで、8ヶ月も休業していたそうだ。昔の安旅行者のドミよりもさらに狭苦しいところに詰め込まれての集団生活なので、クラスターでも起きれば全員道連れだろう。加えて2021年には洪水被害もあり、さんざんなコロナ禍だったらしい。

もちろん今は活動を再開しているそうだ。近所の人たちも暇つぶしによく来ているし、見るからに強豪といった感じのペヘルワーンたちの取り組みも間近に見ることができるためお勧めである。

あしたのジョーの丹下段平みたいな風情の親方がどっかり腰掛けて睨みを利かす中で、黙々と取り組みが進行していくストイックな空間だ。

Before and after the July 2021 flood: a wrestling akhada in Maharashtra’s Kolhapur district (Youtube)

アカーラー(道場)

インドにはいろいろ見どころがあるが、早起きしたらアカーラー(道場)を見学するのが好きだ。アカーラーというのはインド式レスリング「クシティー」の道場。ペヘルワーン(レスラー)たちも様々で、道場によっては田舎から住み込みでやってきて頑張っている若者たちでいっぱいのガチなところもあれば、通いの青年たちもいる道場もあり、「クシティー」だけでなく、国際式のレスリングも同時にやっているところもある。

また数は多くないが女性を受け入れている道場もある。デリーのチャンダギー・ラーム・アカーラーは、そんな中のひとつで、娘を連れて見学に行ったことがある。当時小学生だった娘は自分と同年代から始まって成人まで、様々な年代の女性たちが黙々と取り組みを行っている様子に目を丸くしていたことを思い出す。

映画「Dangal」ではないが、こういうところから国際式に転向して五輪に出場したり、女子レスリングでも世界を舞台に活躍する選手たちを輩出している「クシティー」の世界。

伝統的なのは、土というか砂地というかのリングで、文字通り泥だらけになって闘う男たち、それを厳しい眼差しで見ている威厳のある親方。リングに対して緩衝地帯やロープなどの安全装置もなく、コンクリートの柱や壁のある升の中での取り組みで、「頭打ったらどうするのか?」とハラハラしながら見学したりする。

日本で言えば「相撲部屋」みたいな風情だが、小学生くらいの子供たちも練習に励んでいるアカーラーもあれば、各種スポンサーを得て「ガチ中のガチ」で、精鋭を集めて切磋琢磨しているアカーラーもある。こういう世界は、日本で今だに根強い「スポ根主義」と親和性が高いと思われるのだが、なぜかここにフォーカスを当てたドキュメンタリーなどは目にしたことがない。「ド根性インディア」とかなんとか題して、こういうところでガチで精進する若者たちのことを取り上げたら、けっこう評判になるのではないかと思うのだが。

ガチのアカーラーの住み込みペヘルワーン(レスラー)たちになると、ゴリラみたいな体格をしているが、彼らの食生活はヴェジ。もちろん乳製品はふんだんに提供されるとともに、エネルギー源としてナッツ類はこれまた大量に与えられるそうだ。

Youth of Varanasi do not like GYM | Kushti | Akhara | Varanasi Kushti (Youtube)

No Football, No Life

第二次ターリバーン政権樹立後、2010年にスタートしたアフガニスタンのフットボールのトップリーグ「アフガン・プレミア・リーグ」はどうなったのかと思っていたが、やはり同政権誕生以降は実施されていないらしい。そこでプレーしていた選手たちはインドやキルギスなどのクラブに移って活動しているとのこと。

この「プレミア・リーグ」では、選手たちへの報酬は出来高の日払いという、ちょっとビックリなもので、観客席はちょうど競馬場のような感じだったらしい。大半は賭けが目的で来ていたらしい。そんな具合なので、おそらくだが、「マッチ・フィックシング」も横行していたものと想像される。

まぁ、それでもスポーツに人々が熱狂できるのは平和と安定あってこそのもの。ターリバーン政権下で経済的には大変でも、とりあえずの平和と安定はあるのかもしれないが、音楽などともにスポーツのような娯楽を認めないため、世界的なスポーツなのに、その国のトップリーグが消滅(ということはその下のリーグもだろう)という事態。「あれ?でも今でもアフガニスタン代表って活動しているよね?」と思われるかもしれないが、みんな国外在住選手たちとのこと。

No Football, No Life。ここには人生なんてものは、もうないのだなぁと感じる。

‘No domestic league, no women’s football, Afghanistan’s future is uncertain’, says men’s coach Anoush Dastgir (Firstpost)