ガチなアカーラー(道場)

マハーラーシュトラ州のコールハープルのアカーラー(道場)を見学したことがあるが、ここは強豪を輩出する名門らしく、極めてガチなところだった。

コロナ禍で寄附は減り、大会も開かれなくなるので賞金収入はなくなるわ、罹患者も増えるなどで、8ヶ月も休業していたそうだ。昔の安旅行者のドミよりもさらに狭苦しいところに詰め込まれての集団生活なので、クラスターでも起きれば全員道連れだろう。加えて2021年には洪水被害もあり、さんざんなコロナ禍だったらしい。

もちろん今は活動を再開しているそうだ。近所の人たちも暇つぶしによく来ているし、見るからに強豪といった感じのペヘルワーンたちの取り組みも間近に見ることができるためお勧めである。

あしたのジョーの丹下段平みたいな風情の親方がどっかり腰掛けて睨みを利かす中で、黙々と取り組みが進行していくストイックな空間だ。

Before and after the July 2021 flood: a wrestling akhada in Maharashtra’s Kolhapur district (Youtube)

アカーラー(道場)

インドにはいろいろ見どころがあるが、早起きしたらアカーラー(道場)を見学するのが好きだ。アカーラーというのはインド式レスリング「クシティー」の道場。ペヘルワーン(レスラー)たちも様々で、道場によっては田舎から住み込みでやってきて頑張っている若者たちでいっぱいのガチなところもあれば、通いの青年たちもいる道場もあり、「クシティー」だけでなく、国際式のレスリングも同時にやっているところもある。

また数は多くないが女性を受け入れている道場もある。デリーのチャンダギー・ラーム・アカーラーは、そんな中のひとつで、娘を連れて見学に行ったことがある。当時小学生だった娘は自分と同年代から始まって成人まで、様々な年代の女性たちが黙々と取り組みを行っている様子に目を丸くしていたことを思い出す。

映画「Dangal」ではないが、こういうところから国際式に転向して五輪に出場したり、女子レスリングでも世界を舞台に活躍する選手たちを輩出している「クシティー」の世界。

伝統的なのは、土というか砂地というかのリングで、文字通り泥だらけになって闘う男たち、それを厳しい眼差しで見ている威厳のある親方。リングに対して緩衝地帯やロープなどの安全装置もなく、コンクリートの柱や壁のある升の中での取り組みで、「頭打ったらどうするのか?」とハラハラしながら見学したりする。

日本で言えば「相撲部屋」みたいな風情だが、小学生くらいの子供たちも練習に励んでいるアカーラーもあれば、各種スポンサーを得て「ガチ中のガチ」で、精鋭を集めて切磋琢磨しているアカーラーもある。こういう世界は、日本で今だに根強い「スポ根主義」と親和性が高いと思われるのだが、なぜかここにフォーカスを当てたドキュメンタリーなどは目にしたことがない。「ド根性インディア」とかなんとか題して、こういうところでガチで精進する若者たちのことを取り上げたら、けっこう評判になるのではないかと思うのだが。

ガチのアカーラーの住み込みペヘルワーン(レスラー)たちになると、ゴリラみたいな体格をしているが、彼らの食生活はヴェジ。もちろん乳製品はふんだんに提供されるとともに、エネルギー源としてナッツ類はこれまた大量に与えられるそうだ。

Youth of Varanasi do not like GYM | Kushti | Akhara | Varanasi Kushti (Youtube)

No Football, No Life

第二次ターリバーン政権樹立後、2010年にスタートしたアフガニスタンのフットボールのトップリーグ「アフガン・プレミア・リーグ」はどうなったのかと思っていたが、やはり同政権誕生以降は実施されていないらしい。そこでプレーしていた選手たちはインドやキルギスなどのクラブに移って活動しているとのこと。

この「プレミア・リーグ」では、選手たちへの報酬は出来高の日払いという、ちょっとビックリなもので、観客席はちょうど競馬場のような感じだったらしい。大半は賭けが目的で来ていたらしい。そんな具合なので、おそらくだが、「マッチ・フィックシング」も横行していたものと想像される。

まぁ、それでもスポーツに人々が熱狂できるのは平和と安定あってこそのもの。ターリバーン政権下で経済的には大変でも、とりあえずの平和と安定はあるのかもしれないが、音楽などともにスポーツのような娯楽を認めないため、世界的なスポーツなのに、その国のトップリーグが消滅(ということはその下のリーグもだろう)という事態。「あれ?でも今でもアフガニスタン代表って活動しているよね?」と思われるかもしれないが、みんな国外在住選手たちとのこと。

No Football, No Life。ここには人生なんてものは、もうないのだなぁと感じる。

‘No domestic league, no women’s football, Afghanistan’s future is uncertain’, says men’s coach Anoush Dastgir (Firstpost)

ミャンマーの元サッカー代表GKがFリーグのY.S.C.C.横浜に入団

ミャンマーのサッカー代表GKで、試合後に帰国を拒んで日本で難民申請している選手がフットサルのYSCC横浜にプロ契約で入団したとのこと。まだ選手登録はされておらず、サッカーからフットサルへの転向のため格闘中らしい。

フットサルのゴレイロは、サッカーのGKとかなり違う部分が多く(むしろハンドボールのGKの守備に近い)、サッカーから派生した競技とはいえ、ルール、戦術、ゲーム運びなどかなり異なる。

また、ゴレイロからのスローから味方のダイレクトボレーでのシュート、相手のパワープレーを阻止してそのまま相手ゴールに蹴り込む「パワープレー返し」のように、攻撃そのものに絡むシーンも多いなど、サッカーのGKにはない役割もある。

国の代表GKにまでなるほどの人なので、サッカーからフットサルへうまくコンバートして、ピッチで活躍を見せてくれる日が来ることだろう。

今後の活躍に期待をしたい。

サッカー元ミャンマー代表が、松井大輔と共にフットサルチームに加入した理由 (YAHOO!ニュース)

インドに通算29個目にメダルをもたらした女子重量挙げ選手

東京五輪開幕まもない7月24日、女子重量挙げで銀メダルを獲得したミーラーバーイー・チャーヌーはマニプル州インパール出身。私たちと似たような顔立ちのモンゴロイドの人たちが暮らす州。男女ともに総じて小柄で、私ものような中肉中背、171cmの者が訪問しても「大柄」ということになってしまう。やや大袈裟に言えば、ガリバーになったような気がするのがマニプル州だ。

ひとつの大会で60個くらい獲得してしまう中国と雲泥の差ということになるが、インドの五輪出場史において通算29個目のメダルという輝かしい名誉である。

以前訪問した際にカルカッタから空路でインパールに入ったのだが、機内に揃いのジャージで小柄ながらもガッチリした女性たちの一団があったが、翌日の新聞で写真入りで「遠征していた重量挙げ選手たちが凱旋」とあった。前日機内の人たちであった。

マニプル州の民族の国技と言ってよいほど普及しているというわけではないようだが、インドの女性重量挙げ選手たちの出身はこの州に集中しているため競技への認知度は高いようだ。

また、これまで各種国際大会でメダルを多数獲得してきて、もう40歳にも近いのに今回も五輪に出場している女子ボクシング界のレジェンド、メアリー・コムの影響もあり、インドの女子ボクシング軽量級はマニプル州の独壇場だ。中量級以上を支配するパンジャーブ州、ハリヤーナー州と双璧を成している。

インドのスポーツ界は地域性が強い傾向があるが、もともとクリケット、テニス、ホッケー以外の競技については、とくに女性たちの間で普及度が低いこと、そしてその背景には社会的、文化的要因もあったようだが、経済発展がもたらしている社会のゆとりが広がることにより、今後はさらにもっと多くの才能が各地から出てくることもあるだろう。スタート地点が低いだけに今後の伸びしろは、膨大な人口とその多くを占めるのが若年層ということもあり、たいへん期待できそうだ。

Tokyo Olympics 2020 Day 1 Highlights: Mirabai Chanu wins silver, opens India’s medal account (The Indian EXPRESS)

蛇足ながら、一昨日、インドの五輪の歴史で29個目のメダルを獲得したマニプル州のミーラーパーイー・チャーヌーに、ドミノピザが「ピザを生涯無料」のプレゼントを提供とのこと。

本人は昨日午後にデリー空港に帰着。ほんの3日前に開会式があったばかり。しばらく東京に滞在して楽しんだら良かったのに、と思うけど、トップアスリートはそんなヒマではないのかもしれないし、派遣している協会も参加種目が終了した以上、そんなお金は使えないのかもしれない。

Domino’s to offer free pizza for life to Olympic medallist Mirabai Chanu (Business Standard)