『買う水』の価格が変わらない

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 初めてインドを訪れたのは1987年だった。歴史的な建物ではなくとも、街中は何もかもが古ぼけくすんで見えて『ずいぶんレトロな国だなあ』と感じた。当時のインドに較べて少なくとも都市部では海外から輸入された電化製品や日用品等が多く店頭に並んでいたパキスタンに足を踏み入れると『消費生活の豊かさ』を思ったりもしたものである。
 もちろんそのころのインドにだってひととおりのモノは揃っていた。だがあまり購買意欲をそそるものではなかった。見た目からして貧弱でひどく型遅れで、事実すぐ壊れるからそのたびに修理することを前提として売られているのだと思った。電化製品、時計、履物類といった様々な『壊れモノ』を修理する職人たちが街中にあふれていることが、これらの製造者と修理人たちがどこか私たちの目の届かないところで固く手を結び合っているのに違いないと疑ったものである。
 もちろん今でもいろんな修理屋さんたちは健在だが、外資や地場資本等が同じ土俵でより良い商品をとしのぎを削るようになってから、街中で見かける品物の質は向上してきたことは間違いない。人々も次第に豊かになり、これまで一台の自転車に妻子を乗せて走っていた人がバイクに乗るようになり、一家総出で一台のバイクに鈴なりになっていた人々がクルマに乗るようになった。そして昔旧式の国産車やスズキ自動車との合弁で生産を始めていたマルチに乗っていた人々はいまや大型のRV車を乗り回すようになったのだろうか。

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11月12日はポリオ予防の日

 11月12日、インド全国でポリオ予防のため5歳までの幼児たちを対象にワクチン投与が実施される。首都デリーではこの日2万2千人以上のスタッフを動員して、7500近くもあるブースでワクチンの投与を行なうとのことだ。またヘルス・ワーカーやボランティア、行政関係者やNGOスタッフなどによる『捜索』を通じて、この機会を逃す子供がいないよう努めるという。
 また人々の出入りが多い国際貿易フェア会場や観光地などでもこうした機会を設けるようだが、『移動中の列車内』でもワクチン投与を行なうというのはなんだかインドらしい気がする。市民の保健衛生に関する事柄がシステム化されていないため、何かこうしたことを行なうとなるとどうしてもランダムで大掛かりになってしまい、手間ヒマかかる割にはずいぶん効率が悪い。
 以前、『ポリオ・ワクチン』として書いたとおり、この病気を罹患、発病したとしてもおよそ95%は特に自覚症状が出ることなく生涯有効な免疫ができるし、残りの多くもまた中枢神経系に現れる症状もない不全型の発病となる。そして1〜2%ほどの率で非麻痺型の無菌性髄膜炎になる場合があると言うが、実はこのあたりまで特に治癒後に影響を残すことはない。
 だが1%未満の低い確率で弛緩性の麻痺が生じるケースがあるとされ、まさにこれが ポリオの恐ろしいところなのである。命の危険とともに生涯に渡る後遺症を残すことが多い。そして中年期以降にかなり高い確率で筋肉の能力が低下するポリオ後症候群の発生がある。
大多数の自覚症状さえないケースにおいても、免疫を持たない他人に感染させる危険がある。またそのワクチン自体が生ワクチンであることから、ごく稀ながらポリオの免疫を持たない親が、ワクチン投与された自分の子供から感染して罹患してしまうというケースも耳にする。そのためどのみちすべての人々がポリオの予防ワクチンにより免疫を得ることは必須なのである。

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買ってはいけない??

Coca Cola
 90年代初頭にペプシコーラがインド市場に進出、続いてコカコーラ両社が参入(同社は1977年に撤退するまでインドで操業していたため正確には再参入)したことにより、それ以前のインドに君臨していた二大コーラCampa ColaThumbs Up(こちらはコカコーラに吸収されて同社ブランドのひとつとなっている)による支配体制があっけなく崩壊した。
 いまでは外資系の両社がインドのソフトドリンク市場の8割のシェアを占めるようになっている。外来のソフトドリンクが売り上げを大幅に伸ばしたからだけではない。コカコーラはThumbs Upだけではなく人気商品MaazaLimcaさえも傘下に収めてしまったため、地場ブランドで外資系ソフトドリンクに対抗できる商品がほぼ消滅してしまったのも一因だ。
 3年前のちょうど今ごろ、これらアメリカ系企業の製品をはじめ、地元資本のメーカーによる清涼飲料水やミネラルウォーターの中にEU基準の30〜36倍も上回る殺虫剤(農薬)成分が含まれているらしいとのニュースがメディア等によって取り上げられて問題になっていた。
 今年もつい先日(8月2日)にデリーにある非政府組織Centre for Science and Environment (CSE) が発表したレポートを受けて、インド国内で販売されるソフトドリンクの安全性について波紋が広がっている。
 CSEによれば、やはり殺虫剤(農薬)成分が3〜5種類程度検出されたとのことで、その濃度はインド政府の定めるところの基準を24倍も上回っているといい、これらの製品を長期間にわたって消費することによりガンの発生、神経や免疫システムへの悪影響、奇形児の発生などが危惧されると警告している。
 これを受けてラージャスターン、グジャラート、マディヤ・プラデーシュ、チャッティースガルの四州では学校や役所での販売を禁止することになった。続いてアーンドラ・プラデーシュでは公立病院での販売を禁止、カルナータカでは学校や病院から半径100メートル以内の地域での販売を禁止といった措置を打ち出したが、ケララ州ではコカコーラ・ペプシコーラ製品の製造と販売を全面禁止という厳しい態度に出ることになる。
 もとより両社が製造過程で意図的に有害物質を混入させているわけではなく、清涼飲料水を製造するための主原料となる水の源泉が汚染されていることが原因であるとみられている。その意味では外資・地場資本を問わずソフトドリンク製造業(加えてミネラルウォーターは言うに及ばずビール醸造なども)そのものが成り立たなくなるという声も取りざたされていたのは3年前のことである。あのときは何となく政治的に幕引きがなされてしまったが、今回の『リターンマッチ』ではどういう決着がつくのか注目したい。
 一連の騒ぎは消費者問題であるとともにさらに大きな環境問題でもある。各メーカーが高いコストと引き換えに『安全である』とされる源泉から取水して製造した飲料類だ。これらに基準を大きく上回る農薬成分が含まれているとするならば、蛇口をひねれば出てくる水道水はどうなるのだろう?
 素人考えに過ぎないが、残留農薬の浸透によりこうした水源までが汚染されてしまう土壌で生産されたインド産の野菜、米、小麦などの農作物はことさら危険ということになるのではなかろうか?という疑問を抱くのは私だけではないだろう。なんだか『外資ソフトドリンク叩き』をしている場合ではないような気がする。
Pepsi
State bans Coke, Pepsi (Kaumudi Online)
Indian state bans Pepsi and Coke (BBC South Asia)
Soft Drinks are Completely Safe (Coca-Cola India)

舌がキレイすっきり

舌こき
 日本人の間で舌こき、つまり舌を掃除する習慣は一般的ではない(・・・と思う)が、ここ数年の間にドラッグストアその他で『タング・スクレーパー』なる商品名でプラスチック製のものが目に付くようになってきた。欧米メーカーの製品が多く数百円程度で購入できるのだが、どれも使い勝手はあまり良くない。このタング・スクレーパー、由来をネットで検索するとインドのアーユルヴェーダに結びつけた記事がよく目に付くのだが、実際のところどうなのだろうか?
 中世ヨーロッパで使われていたベッコウ製の舌こき、中国の清朝時代の銀製のものなどが現在もどこかに保管されているようなので、インドの専売特許というわけではないのかもしれない。
 近ごろは口臭予防や虫歯を防ぐといったことだけではなく、舌の上に蓄積される『舌苔』は有害な細菌類やウィルスが繁殖する温床となりやすいため、まめに除去することが勧められている。これを実践するだけでインフルエンザにかかりにくくなる、なんていう話さえあるくらいだ。
 私も4、5年前から毎日朝夕に実行するようになっている。気をつけていても虫歯ができやすく、どうにかならないものかと思い試してみたのだ。・・・といっても歯磨きをしてデンタルフロスで歯の間をきれいにしてからササッと舌を擦って掃除するだけなのだが。 
 ところが不思議なことにその後新たな虫歯は発生していない。おまけにカゼもほとんどひかなくなった。この間、身体を鍛えたわけではないし、病気に対する抵抗力が付く理由もないのだが。だからといってこれを舌掃除の効果と結び付けてしまうのは早計ではあるものの、一度習慣になってしまうと外泊の際に舌掃除の道具をうっかり持参していないとなんだか落ち着かなくなるものだ。
 目下愛用しているのはインド製のステンレスのタング・スクレーパー。舌掃除の本場(?)インドで、多くの人々が日々これを実践しているのかどうかは知らない。でもバザールで簡単に入手できて、価格も数ルピー程度と安価であるにもかかわらず使用感はすこぶる良い。先述の中世ヨーロッパや中国で使われていたものと形状はほとんど同じだ。人々の生活の中ですっかり完成されたカタチなのかもしれない。インドの生活用品の中で、これはスグレモノのひとつである。

木の歯磨きウケてます

 今でもインドの農村などで歯磨きに使われるニーム(नीम)やピールー(पीलू)などといった木の枝。これが日本でも静かなブームになっているそうだ。
 もちろん日本の人々がそのまま噛んだりするわけではないのだが、これらの木の成分を配合した石鹸練り歯磨き等々、なかなか好評らしい。
 かく言う私もピールー配合の歯磨き用品を試してみている。アメリカの会社だが、その名も「ピール社」の「ピールエクストラクト」と「ピールデンタルファイバー」である。前者は歯の天然漂白剤、後者は木の繊維からできた歯のホワイトニング用パウダーであるとのことで、歯ブラシにつけてみがくと確かにオガクズ(?)のような感触と匂いがある。研磨剤は含まれていないとのこと。
 数年前にタバコをやめたとき、「これで歯にこびりつくヤニとおさらば」と思ったのだが、日常よく飲んでいるコーヒーや紅茶の類による歯の染色もまたひどいことに気がついた。  
 特に前歯など、すぐにしつこい茶渋がついてしまう。そのため数ヶ月に一度は歯医者での掃除が欠かせないのだが、研磨剤をつけた器具でガリガリとこすることが果たして歯に良いのかどうか常々疑問に思っている。
 元来、この「木」にそうした漂白作用があるのかどうかよく知らないし、ホントに効くのかどうかも半信半疑なのだが、しばらく使ってみて効果のほどが明らかになればお伝えしたいと思う。