ヒマラヤの禁煙国

 本日11月17日、インドのご近所ヒマラヤの王国ブータンは世界初の「禁煙国家」となった。20ある行政区のうち18ですでに禁じられていたとのことだが、この日をもって全国に禁令が施行されることになったのである。タバコの販売はもちろん、屋外で吸うのもダメである。外国人が個人消費用に持ち込んだものを自室でたしなむ分には構わないようだが。
 ちかごろどこに行っても喫煙者は肩身が狭い。周囲に迷惑をかけないようマナーを守るのは当然のことだし、間違いなく健康に悪いのはわかっているが、庶民のささやかな楽しみを奪わなくたって・・・とスモーカーたちに肩入れしたくなるのは自分自身が元喫煙者だったからだ。2年ほど前に頑張ってやめたのだが誘惑にとても弱いタチなので、飲みにいったりして周囲で喫煙していると、いつの間にか自分もタバコを手にしていることもしばしば。非喫煙者と言うにはまだまだ半人前なのである。
 そんな調子なので、そばに喫煙者がいると迷惑というのはよく理解できるし、喫煙者の気持ちもよくわかる気がする。
 あまり産業らしいものがなく、インドからの物資が日々大量に流入しているブータン。「さあ今日から禁止です」なんて言われたって、喫煙者たちが「はい、わかりました」なんて従うはずもない。そうした品物に紛れて密輸されたゴールドフレークやフォースクエアみたいなインド製の短い安タバコを手にして、「禁制品になってからずいぶん値上がりしてねぇ」なんてボヤいてたりするのだろうか。
 それにしてもこのブータン、世界に先駆けて「完全禁煙化」とは、ずいぶん思い切ったことをするものである。もともと喫煙率は低かったそうだし、国内のタバコ産業がそれほど育っておらず、ほとんど輸入に頼っていたのではないか、つまり貴重な外貨の節約のためなのかな?と想像してみたりもするが、実際のところ禁煙化の背景にはどんな理由があっただろうか?
ブータンでタバコ販売禁止( BBC NEWS)

メディカル・ツーリズム 日本人も視野に

 インドはいまや、格安料金で先端医療を受けることができる人気の国。特に近隣国、中東方面から臓器移植などの大がかりな手術を目的に訪れる人は少なくない。
 昨年パキスタンとの陸路往来が再開されたとき、ラホール―デリー間の最初のバスに乗って両親と一緒にインドへやってきた少女ヌール・ファティマーは、デリーから飛行機でバンガロールへ飛び同市内で入院した。彼女の心臓手術は、印パ関係改善の象徴であったが、同時に医療分野におけるインドの優位性を内外にアピールしたともいえるだろう。
 この国にそうした先端医療がちゃんと存在することは間違いないが、だからといってこの国が「医療先進国」であるとは言えない。あくまでもポイントは「低コスト」であり、対費用の効果が大きいがゆえに注目されるのである。
 インドではひところ臓器売買が社会問題になった。(規制は強まったようだが、多分今でも…)
 倫理的な問題はあるが、切羽詰った患者にとっては貴重なチャンスである。費用さえ準備できれば、ドナーが比較的見つかりやすい現状は否定できない。
 インド政府観光局の日本語パンフレット(2004年9月発行)では、メディカル・ツーリズムに焦点を当て、新しいインドを紹介している。「バンガロール〜ガーデン・オブ・ライフ〜」というタイトルの小冊子には、同市内のマニパル・ホスピタルや、サーガル・アポロ・ホスピタルといった有名大病院の簡単な紹介と連絡先などが記載されている。いよいよジャパン・マネーがターゲットとなりつつあるようだ。
 近年のヒーリング・ブームで、アーユルヴェーダ体験ツアーの広告をよく見かけるようになったが、本格的な近代医療ツアーはまだ耳にしたことがない。だが、この調子だと近い将来、通訳つき医療ツアーも始まるかもしれない。
 多くの日本人にとって、いくら格安で先端医療を受けられたとしても、外国の病院ともなれば、言葉の問題もあり、お国事情もわからない。しかも大きな手術を受けるようなことになれば、なおさら不安は募る。直接コンタクトすることをためらうのが普通だろう。
 すでに政府関係機関がこんな冊子を準備している裏には、利にさといインドのツアーオペレーターたちが、自国の先端医療機関と手をむすび、着々とツアーの準備を進めているのかもしれない。
 普通の旅行と違い、まさに生命にかかわることだし、費用も観光の比ではない。こうした手配でトラブルが起きることのないよう、窓口機関などの整備をインド政府に期待したいところだが、ちょっと(かなり?)危険な匂いを感じるのは私だけだろうか。

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ポリオ・ワクチン

 日本では、ポリオ・ワクチンの集団接種が春と秋に行われている。ちょうど今月、全国各地の保健所には予防接種を受ける赤ん坊たちが集まっているはずである。私たちは、ただ「そういうことになっているから」と、子どもたちに接種を受けさせるが、いまだ地球上にはポリオを脅威とする国ぐにがある。
 一般的に恐ろしい病気として認識されているポリオだが、実はそれほど致死性は高くない。また不顕性感染(感染していても特に症状が出ない)で済んでしまうケースが全体のおよそ95%だという。自覚症状がなくても、便からウイルスが排泄されるので他の人へ感染する原因になる。
 残り5%のケースは、中枢神経系症状などの特徴的な病状もない不全型の発病が多く、1〜2%ほどの確率で、非麻痺型の無菌性髄膜炎になる場合がある。
 しかし怖いのは、発生率1%未満ながら、弛緩性の麻痺が生じるケースだ。生命の危険があるだけではなく、生涯にわたる後遺症を残すことが非常に多い。しかも幼いころに麻痺型ポリオにかかった場合、中年期にさしかかるとかなり高い確率で筋肉の能力が低下するポリオ後症候群の発生があるという。
 インドはポリオの最多発国だけあり、その後遺症をひきずっている(と思われる)人を目にすることは珍しくない。
 2002年の調べによると、世界1900人のポリオ患者中、なんと1600人はインドで発生したという。しかも驚くべきことに1350人はU.P.州の住民。その中、1161人はムスリムであったという。州内でもとりわけムザッファルナガル、ムラーダーバード、バダーユーン、バレーリーといつた西部で多発している。どういうわけか、広いインドの中でもずいぶん狭い地域、しかも特定のコミュニティに集中しているのは数字だけ見ると非常に不可解なことであろう。

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インドでの治療はいかが?

 近ごろ、インドでは新しいタイプの「旅行」が注目されているらしい。高度な専門的治療が低コストで受けれるインド主要都市の大病院が脚光を浴びつつある。中でも、亜大陸最大の商都ムンバイを擁するマハーラーシュトラ州では、「医療旅行(Medical tourism)」というコンセプトで、治療を目的とする人びとを海外から同州へ呼び込もうという動きが本格化。医療旅行評議会 (Medical Tourism Council of Maharashtra)なるものが組織されたという。今後、ほかの主要都市にもこの流れが広がっていくことが予想される。

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「長生き」って素晴らしい

 昨年5月に「世界一ながい老後」として紹介した125歳(本人によると132歳)の、ラージャースターン州在住ハビブ・ミヤーンさんがふたりの曾孫さんとともにメッカ巡礼に参加した。
 藩王国時代からジャイプルで暮らし、ガーンディーによる塩の行進(1930年)が行なわれたころ、すでに52才。インド独立(1947年)の時点で、69才になっていた人が、2004年、メッカに旅立つなんて信じられない。両目の視力はすでに失われているとはいえ、この年齢で長距離の移動をできるのだから恐れ入る。
 巡礼を実現させるため、寄付をよせてくれた人々に感謝し、彼はいま、神の祝福と加護を全身で感じているに違いない。長生きはなんと素晴らしいことか!
▼世界最高齢のメッカ巡礼
http://news.bbc.co.uk/2/hi/south_asia/3455781.stm