木の歯磨きウケてます

 今でもインドの農村などで歯磨きに使われるニーム(नीम)やピールー(पीलू)などといった木の枝。これが日本でも静かなブームになっているそうだ。
 もちろん日本の人々がそのまま噛んだりするわけではないのだが、これらの木の成分を配合した石鹸練り歯磨き等々、なかなか好評らしい。
 かく言う私もピールー配合の歯磨き用品を試してみている。アメリカの会社だが、その名も「ピール社」の「ピールエクストラクト」と「ピールデンタルファイバー」である。前者は歯の天然漂白剤、後者は木の繊維からできた歯のホワイトニング用パウダーであるとのことで、歯ブラシにつけてみがくと確かにオガクズ(?)のような感触と匂いがある。研磨剤は含まれていないとのこと。
 数年前にタバコをやめたとき、「これで歯にこびりつくヤニとおさらば」と思ったのだが、日常よく飲んでいるコーヒーや紅茶の類による歯の染色もまたひどいことに気がついた。  
 特に前歯など、すぐにしつこい茶渋がついてしまう。そのため数ヶ月に一度は歯医者での掃除が欠かせないのだが、研磨剤をつけた器具でガリガリとこすることが果たして歯に良いのかどうか常々疑問に思っている。
 元来、この「木」にそうした漂白作用があるのかどうかよく知らないし、ホントに効くのかどうかも半信半疑なのだが、しばらく使ってみて効果のほどが明らかになればお伝えしたいと思う。

追放される喫煙シーン

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 近年、インドでタバコを吸う人がずいぶん減っているように思う。鉄道その他公共の場所での禁煙化がとみに進んでいるこの国、日本に比較して喫煙率はかなり低いようだが、それでもインドで喫煙が原因とされる病気で亡くなる人の数は年間80万人から100万人と言われる。
 そんなインドの保健省から、今年の8月から(あるメディアには7月とも)映画やテレビで喫煙シーンを流すことが禁止されるとの発表があり、波紋を呼んでいる。
 現在のところ未確認とのことだが、ひょっとするとインドは映像から喫煙シーンを排除する世界最初の国となる可能性もあるらしい。
 今後、スクリーンに登場する悪役たちをどう演出していくのかちょっと気になるところだ。安易に紫煙で斜に構えた役柄や退廃した雰囲気を出すのではなく、それなりの工夫が求められるようになる。禁止以前の古い映画については喫煙シーンが映る際に「タバコは健康を害する」と警告を字幕で流すのだという。
 表現の自由にかかわることとはいえ、映画の大衆性と影響力を考えればそういう判断もまあ是とも非とも言えない気がする。喫煙行為への風当たりがとみに強くなっている昨今である。
 だが下記のリンク先(BBC South Asia)記事中の「今度は暴力を助長するから銃器を見せることを禁止するんじゃないか?」俳優アヌパム・ケールのコメントにあるように、政府によるさらなる干渉を危惧する声もあるのはもっともなことだろう。
 個人的にはタバコよりもある意味同調できる部分がある。近年のボリウッド映画の中で、かなり行き過ぎた暴力シーンが少なくないように感じる。ある程度自粛ないしは規制がなされてもいいのではないかと思うのは私だけではないだろう。
 
फ़िल्मी पर्दे पर धूम्रपान पर रोक (BBC Hindi)
Anger at Indian film smoking ban (BBC South Asia)
Smoking scenes banned on screen as India steps up anti-tobacco war (YAHOO ! NEWS)

MENINGOCOCCAL MENINGITIS

 現在、デリーで髄膜炎菌性髄膜炎(Meningococcal meningitis)流行の拡大が懸念されている。字面だけを眺めるとなんとも奇怪な病気のように思われるが、早期に診断を受けて適切な処置を受ければほとんどの人が回復するとされる。
 しかし初期にはカゼと区別しにくく、病気の進行が早いことに注意しなくてはならないのだとか。重症化すると死亡する例も珍しくなく、治癒しても脳や聴力に障害を残すこともあるというから厄介な病気である。とりあえずこの病気について簡潔にまとめてあるサイトをいくつか見つけておいた。
  髄膜炎菌性髄膜炎 疫学(国際感染症臨床情報)
  髄膜炎菌性髄膜炎 診断(国際感染症臨床情報)
  流行性脳脊髄膜炎ってなんだ?(Sasayama’s Weblog)
 飛沫感染により広がる病気だが、今回の流行には予防ワクチンの不足と当局による配布の不手際が指摘されている。患者の発生した家庭内での新たな発病も心配されているとともに、院内感染することもよくあるらしくちょっと気にかかるところだ。
 最初の患者が発生したとされる4月22日から5月7日までに141人の発病が報告されており、このうち15名が死亡している。今までのところ、主な発生地は混雑したオールドデリー地域であるが、首都圏外でもUP州やラージャスターン州といった隣接地域でも発生が報告されている。
 だからといって今の時期のデリーが危険だなどというつもりはサラサラないが、一応こんなことが起きているということは頭に入れておいても良いかと思う。
 ともあれここしばらく暑季が続くインド。健康にはくれぐれもご注意を。
Meningitis cases in Delhi touch 141 (Hindustan Times)

紫煙に想う

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 葉巻といえばキューバ。往年のカストロ首相のトレードマーク(とっくの昔に禁煙しているそうだが)みたいでもある。
 だが60年ほど前まで、これに匹敵するほどの葉巻王国がアジアにも存在していた。インドである。主要な産地として世界的に知られていたのは、岩山の上にそびえる寺院で知られるインドのタミルナードゥ州のティルチラッパリであった。当時の綴りでTiruchinopoly。かのウィンストン・チャーチル(1874〜1965年)もここの製品を愛用していたとか。
 今ではすっかり衰退してしまったインドの葉巻産業。あえて「インドの葉巻」の話を持ち出せば、「あぁ、ビディーのことね」なんて言われてしまいそうだが、実は今でもティルチラッパリを中心に、地場の葉巻を製造・輸出する会社がいくつかあるようだ。
 その中にはフルーツやスパイスなどのフレイバー付きの小ぶりな葉巻を扱うSopariwala ExportsAfzal Molassesといった業者もある。
 従来より葉巻を愛用していた人がこんな軽薄な(?)ものに手を出すとは思えないので、おそらく若年層や女性たちの間に新たな顧客層を開拓しようと模索しているところなのだろう。
 好調な経済成長とともに、一時期「若い人たちの間でキューバ葉巻をたしなむ人が出てきている」と書かれた記事を見かけた記憶がある。また喫煙率の減少とは裏腹に、都会の女性たちの間にタバコを吸う人が増えてきているのはインドもまた同じだ。そうは言っても手軽な紙巻とくらべて重厚長大で悠長なモノが定着するとは思えない。
 かのタバコ大国キューバでもついに公共の建物等での喫煙が禁止されるなど、紫煙に対する風当たりが日増しに強まっているご時勢なのだから。

パキスタンの病院へ

 先端医療が格安の費用で受けられるということで、「メディカル・ツーリズム」がひとつの産業になりつつあるインドだが、隣国パキスタンもまた同様の流れがあるようだ。
 日本国内での腎臓移植費用は350万から400万円、アメリカに出向いて手術を行った場合には1600万円もかかるといわれる。
 日本を含めた先進国では臓器移植のドナーが少ない。また移植を受ける側との体質がマッチすることが必須であるため、問題はコストよりもむしろ機会が非常に限られていることであろう。じっと順番を待っているだけではチャンスが回ってくる前に手遅れになってはどうにもならない。
 そんな中、費用が安く経験も豊富、そして肝心な臓器提供者が見つかりやすい病院がよその国にあれば、藁にもすがる思いで患者たちが大勢押しかけたとしても不思議はないだろう。
 ラーホールやカラーチーといった大都会の私立病院で、かかる費用は140万〜200万円という。海外からは主にヨーロッパや中東から患者がやってくるのだそうだ。マスード・ホスピタルキドニー・センターといったところが有名らしい。これらは地元パキスタンはもちろん、海外メディアでも幾度か取り上げられているので、世界的にも広く知られているはずだ。
 NHK衛星放送で、デンマーク公共放送製作の「パキスタンの臓器売買」が3月1日にオンエアされた。番組によると、現時点でパキスタンにおける臓器の売買が禁止されておらず、あるところでは病院自体が、あるいは出入りのブローカーが提供者たちから臓器の購入を公然と扱うことが常態になっているという。
 インドでは少なくとも「公には」この取引が禁止されていることから、隣国のパキスタンに移植希望者が流れているのだとも語られていた。
 臓器売買は倫理的に非常に問題があることは言うまでもない。しかし私たち健常者たちが一方的に非難できるものではないとも思う。患者自身の生への希求、身体の一部をお金によってやりとりすることの是非、売買を容認する社会と提供者たちのバックグラウンド等々さまざまな要素があり、とてもデリケートな問題なので、ここでその是非を云々するつもりはない。
 しかしこうした取引を可能にしているのは、やはり先進国と第三世界の経済格差であろう。「リッチな国」からやってくる受益者の多くは、大富豪でも大実業家でもなく、それらの国のごく一般的な市民であるからだ。
 現地医療への信頼度や言葉の問題もあり、日本から出向く人はあまりいないのかもしれないが、物理的にも心理的にも距離の近い国で手術を行う人は案外多いのではないかと思う。
 中国国際臓器移植支援センター安信メディカルネットワークなど、中国での臓器移植にかかわる機関の日本語によるサイトがいくつもある。
 一件あたりの治療単価が高いため、こうした先端医療が国境を越えたビジネスに発展するのだろうが、その背後には臓器移植を必要とするほどの不調に悩む人々がいかに多いか想像できよう。だからといって何かできるわけではないが、ふだん意識することのない「健康」のありがたさに感謝しなくてはならないと思う。
臓器移植希望者パキスタンを目指す(Buzzle.com)
パキスタンでの手術後の死者5人目(Trinidad & Tobago Express)
※トリニダード&トバゴから出向く患者もいる。
海外からの需要をアテこんだ「毛髪移植」を行う機関も(INTERNATIONAL HAIR CENTRE)