Kindle書籍

amazon.co.inに日本からアクセスすると、Kindle版でさえも買うことができないのは残念なのだが、4月25日に発売予定のものが、日本のアマゾンでも取り扱いしているのに気がついた。しかもインドより安い価格で。とりあえず予約注文しておいた。

インドアマゾンでの取り扱い
日本アマゾンでの取り扱い

ただし、これは幸運な例外。インドのamazonで販売されているKindle書籍の大半について、日本のamazonでの扱いはない。せっかく印刷・製本や輸送のコストのかからない電子書籍なので、どこの国のamazonからでも、全世界で発行されているKindle書籍にアクセスできるようになっているといいのだが、そうはなっていないのが残念である。

「OUR MOON HAS BLOOD CLOTS」という本

Hello Bastarの著者、Rahul Panditaによるカシミールを題材にした一冊。彼自身が、カシミーリー・パンディットの出自で、少年時代に家族とともにシュリーナガルからジャンムーへの脱出を余儀なくされている。

「民主主義インドによって蹂躙されたカシミール」にて、「踏みにじられたムスリム市民が蹂躙したパンディット」というパラドックスが展開していく。

「学者、識者」を意味する「パンディット」という言葉で通称される「カシミーリー・ブラーフマン」は、イスラーム勢力進出後のカシミールの長い歴史の中で、イスラーム教への改宗者が増えていく中、「マイノリティのヒンドゥー教徒」ながらも、高い知性と学識により、独立以前の歴代のカシミールの王朝時代に主に官職で重用されることにより繁栄」したコミュニティ。

時代的にも「抑圧」により流出したわけではないが、インド国民会議派を率いて、インドを独立に導き、初代首相となったジャワーハルラール・ネルーを生んだのは、まさにこの「カシミーリー・ブラーフマン」コミュニティであった。

独立インドのカシミール地方においては、とりわけ1980年代中盤以降は、イスラーム民兵、テロリスト等による襲撃が急増したことから、パンディット・コミュニティの中の大半が自国内で難民化した。

国民会議派率いるUPA政権時代の2008年から、カシミールから流出したパンディットたちの再定住化が試みられているが、あまり芳しい効果出ていないようだ。

Our Moon Has Blood Clots: The Exodus of the Kashmiri Pandits
By Rahul Pandita
ISBN-10: 8184000871
ISBN-13: 978-8184000870

「Vintage Tales」という本

Vintage Tales by Warren Brown

Kindleでこの本を読んだ。

英領末期から1990年代までにかけてのアングロインディアンをはじめとする欧印混血の人々の日常が描かれている。クリスマスの祝祭であったり、ご婦人たちのピクルス作りのことであったり、雨季の洪水とそれにまつわるエピソードであったり。著者のWarren Brown自身がアングロインディアンである。

アングロインディアンたちは軍、鉄道に加えて、役所や政府系起業に勤めるサラリーマンが多かったが、ここに登場する人たちは税関役人、市内電車を運営する公社、郵便局などで働く男性たち(女性は主に主婦)やその家族たちが大半を占める。自営業としては、写真館経営者、装身具販売、ウェディングドレス仕立屋、ボクサーといった人々が登場する。

Free School Street、Marquis Street, Elliot Road、Ripon Street、Royd Street、Collin Lane その他、今のカルカッタの旅行者ゾーンとなっているサダルストリート界隈にある通りが主な舞台だ。

カルカッタ市内で、アングロインディアンが集住していた地域は他にもあるのだが、このあたりの話が中心となっているのは、もしかすると著者自身がこの地域の出身なのかもしれない。

元々、この界隈はアングロインディアン、アルメニア人、ユダヤ人、華人といった白人社会を取り巻く層の人たちが多く住んでいたが、独立後のインドでは立場が悪くなったため、生まれ育ったこの国を離れた者は多い。

今でもこのエリアに残るアングロインディアンの人口はそれなりにあるのだろうか?次にカルカッタを訪れる際には、このあたりのことについて調べてみたいと考えている。界隈の両替商のオーナーにはアングロインディアンがけっこういるというような話は耳にしたことがあるのだが。

書名 : Vintage Tales
著者 : Warren Brown
ISBN 1537852892, 9781537852898

Hello Bastarという本

途中、他にも読みたい本がいくつかあったので中断していたが、本日読み終えた。インドの様々な地域に跋扈しているマオイストの活動を彼らの勢力圏のひとつであるチャッテースガル州のバスタルを中心に伝える一冊。

僻地の貧困層や先住民を武力で服従させて解放区の拡大を図る暴力集団と思っていた(基本的にそういう理解で間違いないはず)のだが、文字を持たなかった先住民の言語に書き文字を導入して識字教育を進めたり、そうした地域で保健衛生指導のための手引きを作成したところ、あまりに評判が良くて、政府の学校でも配布されるようになったりと、案外社会とちゃんと共存している部分もあったりすることなども描写されており、目からウロコであった。

ともあれ、政府は警察やときには軍まで出動させて、警戒にあたっており、マオイストたちも移動中の警察の車列を襲撃したり、詰所を不意打ちしたりして数十名規模の死傷者を出すなど、激しく対立する状態にあること、暴力による革命を是とする反社会勢力であることはもちろんだ。

彼らの「解放区」からは、少年や若者たちが「徴兵」されているし、マオイスト支配地域と政府支配地域の境目にあたる地域の人々は、双方から協力を要請されるとともに、どちら側からも疑いの眼差しを向けられることから逃れることは出来ず、前者からは裏切り者として報復されたり、後者に逮捕拘束されて、拷問を受けたりするケースは少なくない。

マオイスト指導層の中には、子供たちをイングリッシュ・ミディアムの学校に通わせるだけではなく、海外に留学までさせるほど「裕福」な層もあり、革命を強烈に志向する組織にありながらも、自身の子供たちには「学歴とキャリアを積んでいい職に・・・」と望む者もあることについても垣間見ることができる。

そのいっぽうで、ムンバイの都会で生まれ育った中産階級の女性、アヌラダーが社会正義や労働運動などと関わりを持つにつれて、やがてマオイストの指導者のひとりとして頭角を現していく様子なども描かれている。

著者のラーフル・パンディターは、マオイスト活動家たちと親しく、彼らのジャングルでの移動に同行しながら見聞した様々な出来事と合わせて、ニュースなどには出てこないマオイストたちの人間模様が取り上げられているのも興味深い。

巻末の「あとがき」にもびっくりした。先述のアヌラダー女史の夫で、同じくマオイスト指導者のコーバド・ガーンディーがデリーのティハール刑務所服役中に寄せた文章である。
ところで著者のラーフルは、カシミーリー・パンディットの出。カシミールの騒乱により、1990年に故郷スリナガルを追われた過去があるのだが、この人自身が書いたOur Moon Has Blood Clotsという本も読んでみたくなる。

FRONTLINEはボリシェヴィキ革命特集

現在発売中の隔週刊ニュース雑誌FRONTLINEは、今年で100周年となるボリシェヴィキ革命特集。なんと110ページ以上も占めての非常に力の入ったものだ。さすがはインドを代表する左派ニュース雑誌だけのことはある。
私自身は電子版を定期購読しているのだが、国内外の出来事や社会現象について、インドの他のメディアとは明らかに違う切り口からの報道、異なる角度から偏執狂的なまでにしつこい分析がなされており、いつもながら非常に参考になる。
一般的に「ニュース雑誌の内容が退屈なときにはインドは平和」なのだが、そんなときでもFRONTLINEでは、インパクトの強い記事が掲載されている。

FRONTLINE 12月22日号