パキスタンの病院へ

 先端医療が格安の費用で受けられるということで、「メディカル・ツーリズム」がひとつの産業になりつつあるインドだが、隣国パキスタンもまた同様の流れがあるようだ。
 日本国内での腎臓移植費用は350万から400万円、アメリカに出向いて手術を行った場合には1600万円もかかるといわれる。
 日本を含めた先進国では臓器移植のドナーが少ない。また移植を受ける側との体質がマッチすることが必須であるため、問題はコストよりもむしろ機会が非常に限られていることであろう。じっと順番を待っているだけではチャンスが回ってくる前に手遅れになってはどうにもならない。
 そんな中、費用が安く経験も豊富、そして肝心な臓器提供者が見つかりやすい病院がよその国にあれば、藁にもすがる思いで患者たちが大勢押しかけたとしても不思議はないだろう。
 ラーホールやカラーチーといった大都会の私立病院で、かかる費用は140万〜200万円という。海外からは主にヨーロッパや中東から患者がやってくるのだそうだ。マスード・ホスピタルキドニー・センターといったところが有名らしい。これらは地元パキスタンはもちろん、海外メディアでも幾度か取り上げられているので、世界的にも広く知られているはずだ。
 NHK衛星放送で、デンマーク公共放送製作の「パキスタンの臓器売買」が3月1日にオンエアされた。番組によると、現時点でパキスタンにおける臓器の売買が禁止されておらず、あるところでは病院自体が、あるいは出入りのブローカーが提供者たちから臓器の購入を公然と扱うことが常態になっているという。
 インドでは少なくとも「公には」この取引が禁止されていることから、隣国のパキスタンに移植希望者が流れているのだとも語られていた。
 臓器売買は倫理的に非常に問題があることは言うまでもない。しかし私たち健常者たちが一方的に非難できるものではないとも思う。患者自身の生への希求、身体の一部をお金によってやりとりすることの是非、売買を容認する社会と提供者たちのバックグラウンド等々さまざまな要素があり、とてもデリケートな問題なので、ここでその是非を云々するつもりはない。
 しかしこうした取引を可能にしているのは、やはり先進国と第三世界の経済格差であろう。「リッチな国」からやってくる受益者の多くは、大富豪でも大実業家でもなく、それらの国のごく一般的な市民であるからだ。
 現地医療への信頼度や言葉の問題もあり、日本から出向く人はあまりいないのかもしれないが、物理的にも心理的にも距離の近い国で手術を行う人は案外多いのではないかと思う。
 中国国際臓器移植支援センター安信メディカルネットワークなど、中国での臓器移植にかかわる機関の日本語によるサイトがいくつもある。
 一件あたりの治療単価が高いため、こうした先端医療が国境を越えたビジネスに発展するのだろうが、その背後には臓器移植を必要とするほどの不調に悩む人々がいかに多いか想像できよう。だからといって何かできるわけではないが、ふだん意識することのない「健康」のありがたさに感謝しなくてはならないと思う。
臓器移植希望者パキスタンを目指す(Buzzle.com)
パキスタンでの手術後の死者5人目(Trinidad & Tobago Express)
※トリニダード&トバゴから出向く患者もいる。
海外からの需要をアテこんだ「毛髪移植」を行う機関も(INTERNATIONAL HAIR CENTRE)

ヒマラヤの禁煙国

 本日11月17日、インドのご近所ヒマラヤの王国ブータンは世界初の「禁煙国家」となった。20ある行政区のうち18ですでに禁じられていたとのことだが、この日をもって全国に禁令が施行されることになったのである。タバコの販売はもちろん、屋外で吸うのもダメである。外国人が個人消費用に持ち込んだものを自室でたしなむ分には構わないようだが。
 ちかごろどこに行っても喫煙者は肩身が狭い。周囲に迷惑をかけないようマナーを守るのは当然のことだし、間違いなく健康に悪いのはわかっているが、庶民のささやかな楽しみを奪わなくたって・・・とスモーカーたちに肩入れしたくなるのは自分自身が元喫煙者だったからだ。2年ほど前に頑張ってやめたのだが誘惑にとても弱いタチなので、飲みにいったりして周囲で喫煙していると、いつの間にか自分もタバコを手にしていることもしばしば。非喫煙者と言うにはまだまだ半人前なのである。
 そんな調子なので、そばに喫煙者がいると迷惑というのはよく理解できるし、喫煙者の気持ちもよくわかる気がする。
 あまり産業らしいものがなく、インドからの物資が日々大量に流入しているブータン。「さあ今日から禁止です」なんて言われたって、喫煙者たちが「はい、わかりました」なんて従うはずもない。そうした品物に紛れて密輸されたゴールドフレークやフォースクエアみたいなインド製の短い安タバコを手にして、「禁制品になってからずいぶん値上がりしてねぇ」なんてボヤいてたりするのだろうか。
 それにしてもこのブータン、世界に先駆けて「完全禁煙化」とは、ずいぶん思い切ったことをするものである。もともと喫煙率は低かったそうだし、国内のタバコ産業がそれほど育っておらず、ほとんど輸入に頼っていたのではないか、つまり貴重な外貨の節約のためなのかな?と想像してみたりもするが、実際のところ禁煙化の背景にはどんな理由があっただろうか?
ブータンでタバコ販売禁止( BBC NEWS)

メディカル・ツーリズム 日本人も視野に

 インドはいまや、格安料金で先端医療を受けることができる人気の国。特に近隣国、中東方面から臓器移植などの大がかりな手術を目的に訪れる人は少なくない。
 昨年パキスタンとの陸路往来が再開されたとき、ラホール―デリー間の最初のバスに乗って両親と一緒にインドへやってきた少女ヌール・ファティマーは、デリーから飛行機でバンガロールへ飛び同市内で入院した。彼女の心臓手術は、印パ関係改善の象徴であったが、同時に医療分野におけるインドの優位性を内外にアピールしたともいえるだろう。
 この国にそうした先端医療がちゃんと存在することは間違いないが、だからといってこの国が「医療先進国」であるとは言えない。あくまでもポイントは「低コスト」であり、対費用の効果が大きいがゆえに注目されるのである。
 インドではひところ臓器売買が社会問題になった。(規制は強まったようだが、多分今でも…)
 倫理的な問題はあるが、切羽詰った患者にとっては貴重なチャンスである。費用さえ準備できれば、ドナーが比較的見つかりやすい現状は否定できない。
 インド政府観光局の日本語パンフレット(2004年9月発行)では、メディカル・ツーリズムに焦点を当て、新しいインドを紹介している。「バンガロール〜ガーデン・オブ・ライフ〜」というタイトルの小冊子には、同市内のマニパル・ホスピタルや、サーガル・アポロ・ホスピタルといった有名大病院の簡単な紹介と連絡先などが記載されている。いよいよジャパン・マネーがターゲットとなりつつあるようだ。
 近年のヒーリング・ブームで、アーユルヴェーダ体験ツアーの広告をよく見かけるようになったが、本格的な近代医療ツアーはまだ耳にしたことがない。だが、この調子だと近い将来、通訳つき医療ツアーも始まるかもしれない。
 多くの日本人にとって、いくら格安で先端医療を受けられたとしても、外国の病院ともなれば、言葉の問題もあり、お国事情もわからない。しかも大きな手術を受けるようなことになれば、なおさら不安は募る。直接コンタクトすることをためらうのが普通だろう。
 すでに政府関係機関がこんな冊子を準備している裏には、利にさといインドのツアーオペレーターたちが、自国の先端医療機関と手をむすび、着々とツアーの準備を進めているのかもしれない。
 普通の旅行と違い、まさに生命にかかわることだし、費用も観光の比ではない。こうした手配でトラブルが起きることのないよう、窓口機関などの整備をインド政府に期待したいところだが、ちょっと(かなり?)危険な匂いを感じるのは私だけだろうか。

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ポリオ・ワクチン

 日本では、ポリオ・ワクチンの集団接種が春と秋に行われている。ちょうど今月、全国各地の保健所には予防接種を受ける赤ん坊たちが集まっているはずである。私たちは、ただ「そういうことになっているから」と、子どもたちに接種を受けさせるが、いまだ地球上にはポリオを脅威とする国ぐにがある。
 一般的に恐ろしい病気として認識されているポリオだが、実はそれほど致死性は高くない。また不顕性感染(感染していても特に症状が出ない)で済んでしまうケースが全体のおよそ95%だという。自覚症状がなくても、便からウイルスが排泄されるので他の人へ感染する原因になる。
 残り5%のケースは、中枢神経系症状などの特徴的な病状もない不全型の発病が多く、1〜2%ほどの確率で、非麻痺型の無菌性髄膜炎になる場合がある。
 しかし怖いのは、発生率1%未満ながら、弛緩性の麻痺が生じるケースだ。生命の危険があるだけではなく、生涯にわたる後遺症を残すことが非常に多い。しかも幼いころに麻痺型ポリオにかかった場合、中年期にさしかかるとかなり高い確率で筋肉の能力が低下するポリオ後症候群の発生があるという。
 インドはポリオの最多発国だけあり、その後遺症をひきずっている(と思われる)人を目にすることは珍しくない。
 2002年の調べによると、世界1900人のポリオ患者中、なんと1600人はインドで発生したという。しかも驚くべきことに1350人はU.P.州の住民。その中、1161人はムスリムであったという。州内でもとりわけムザッファルナガル、ムラーダーバード、バダーユーン、バレーリーといつた西部で多発している。どういうわけか、広いインドの中でもずいぶん狭い地域、しかも特定のコミュニティに集中しているのは数字だけ見ると非常に不可解なことであろう。

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インドでの治療はいかが?

 近ごろ、インドでは新しいタイプの「旅行」が注目されているらしい。高度な専門的治療が低コストで受けれるインド主要都市の大病院が脚光を浴びつつある。中でも、亜大陸最大の商都ムンバイを擁するマハーラーシュトラ州では、「医療旅行(Medical tourism)」というコンセプトで、治療を目的とする人びとを海外から同州へ呼び込もうという動きが本格化。医療旅行評議会 (Medical Tourism Council of Maharashtra)なるものが組織されたという。今後、ほかの主要都市にもこの流れが広がっていくことが予想される。

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