NIZAMUDDIN URBAN RENEWAL INITIATIVE




久しぶりにフマユーン廟に足を踏み入れた。四半世紀ぶりくらいだと思う。デリーはしばしば訪れて、近くを通ることはしばしばあっても、中に入ってみようと思わなかった。この度はちょっと気が変わって、ごくごくそばまで来たついでに見学してみることにした。

ずいぶん見ない間に敷地内も建築物そのものも、非常にきれいに整備されるようになったのもさることながら、世界遺産(指定されたのは(1993年なので、もうふた昔以上も前のことになるが)となったことによる効果を有効に活用しているように見受けられた。

Nizamuddin Urban Renewal Initiativeというプロジェクトが実施されており、このフマユーン廟、その周辺地域のスンダル・ナーサリーニザームッディーン地域において、イスラームの歴史的モニュメントを保護・発展させていくため、地域の人々自身による史跡の建築の装飾を含めた伝統工芸の振興により、これを持続可能なものとしていき、雇用・就業機会の確保とともに、公衆衛生の普及等も図っていくという、いわば地域興し的な計画である。

このプロジェクトにおいて、フマユーン廟だけでなく、スンダル・ナーサリーニザームッディーン地域の史跡等も整備されることになっている。

これに参画する官民合わせて五つの組織は、それぞれArchaeological Survey of India(ASI)Municipal Corporation of Delhi (MCD)Central Public Works Department (CPWD)Aga Khan FoundationAga Khan Trust for Culture (AKTC)である。

同プロジェクトのホームページ上で写真やテキストで発信される情報以外にも、同サイトで公開される年報にて、様々な事業の進捗も報告されるなど、情報公開にも積極的に努めているようだ。

世界遺産を核として、地域社会の発展に貢献するとともに、その地域社会からも世界遺産の整備に働きかけていくというサイクルがすでに軌道に乗っているのか、今後そうなるように試行錯誤であるのだろうか。

いずれにしても、地域社会と遊離した、政府による一方的な史跡の整備事業ではなく、このエリアを歴史的・文化的に継続するコミュニティという位置づけで参画させていくという手法が新鮮だ。歴史的なモニュメントを含めた周辺のムスリムコミュニティにとって、これらの活動が地域の誇りとして意識されるようになれば大変喜ばしい。

世界遺産の有効な活用例として、今後長きに渡り注目していくべきプロジェクトではないかと私は思っている。

遺跡の修復に関するコミットメントの具体例を紹介する表示がいくつもあった。

こちらも同様に、装飾の復元に関わる情報を記載

グジャラーティー・ターリー

インドで一番豪華なヴェジタリアン・ターリー。不思議なのは、おかずやご飯と甘い菓子類をいっぺんにサービスすることだ。またバターミルクも付いてきて、これらすべてが食べ放題で飲み放題なので、とても嬉しい満足感がある。品数多いおかずの味付けは、このグジャラート州以外のインド北部地域とはずいぶん異なる。ダールもやけに甘いのだが、それはそれで美味しい。おかずも店によってずいぶん異なるものを出しているし、同じ店でも日によって出てくるものがかなり違うところもある。

おかずとチャパーティーやプーリーを食しながら、甘い菓子をかじり、ときどきバターミルクで口の中を洗い流すという作業を繰り返しているうちに、フラフラになるほど空腹だった自分がどんどん満たされていき、もうこれで充分と頭では思いつつも、ついついお菓子をもうひとつとか、いやあちらの菓子もいいなと次々にもらってしまうのである。

ただ欠点もある。ご飯党にとってはちょっと残念なのは、ライスを所望すると「さて、これで私はおしまいにします」という合図となってしまうことだ。もちろん頼めばもっと運んできてくれるのだが、ご飯を頼んだからには、この人は当然これで食事はシメである、という了解がある。

画像左上がプーラン・プーリー

先述のとおり、店によって中身がかなり異なるので、各アイテムの見た目が美しい店もあれば、ボリューム感抜群の店もある。ボリューム感とはおかずや主食のみで醸し出されるものではなく、やはり大きな役割を占めるのはお菓子類である。

こちらの写真の店では、人参のハルワーとともに糖蜜漬けになったローティーというか、プーリーというか、その名も「プーラン・プーリー (PURAN PURI)」というのだが、さらにこの中には黄色いダールで作られた餡子が入っている。この餡のような味は日本にもあったような気がするが、非常に甘くて脂分も大変多い。ダールでこのような餡を作るというのは初めて知った。

インド広しといえども、おかずや主食とともに甘い菓子をパカパカ食べるのは、グジャラートくらいだろうと思う。

私の隣のテーブルには、デリーから来たという中年カップルが座っていた。私と同じターリーを食べ始めているが、甘い菓子類はすべて断っている。
「甘いものは苦手で?」と尋ねると、小声でこんな返事が返ってきた。
「そんなことないけど、甘いものは食後に、当然別皿で食べたいもんだねぇ・・・」

まさにそのとおり。私もまったくもって同感なり。

SWACHCH BHARAT (Clean India)

モーディー首相率いる現在の政府が打ち出しているスワッチ・バーラト(Clean India)
キャンペーンにあやかって、各地でもスワッチ・ブジだのスワッチ・ラージコートだのという呼びかけがなされているようだ。

政党の活動家やらその手の人たちか、それとも地元の住民たちが自発的に行なっているのか知らないが、明らかに本来の掃除人ではない人たちが大勢で道路を清掃している姿もあったりするが、なかなかいいものだと思う。

これが一過性のものではなく、今後も続くといい。写真はムンバイの繁華街のコーラーバーにて、「スワッチ・コーラーバー」。せめてポイ捨てはやめて欲しいものだが、大都会の商業地では、土地に根っこを持たない人が多いので、ちょっとムズカシイかもしれない。

だが日常的にこうしたものを目にするだけで、人々の意識は変わってくることだろう。たとえ時間はかかるとしても。こうしたものが公衆衛生やトイレの普及(こちらについても今回の政府は力を入れている)等々、民生の向上に繋がってくれると大変嬉しく思う。

政府の掛け声でこうしたキャンペーンが展開されたのは、実はこれが初めてではない。だが今回はモーディー首相の人気ぶりと指導力に大いに期待したいものだ。

ボーパールの悲劇から30年

1985年12月2日から3日にかけて発生したユニオンカーバイド社の工場からの殺虫剤の原料となる成分からなるガス漏れ事故から今年でちょうど30年経過したことになる。

マディヤ・プラデーシュ州のボーパール市の住民のうち55万名を超える市民がこの毒ガス被害を受けたとされ、死者の数は2,500名とも3,800名とも言われるが、この毒ガス被害により半月の間に亡くなった方は8,000を超えるという説もあり、今なお史上最大級の産業事故である。

この事故に関するあらましは以下のリンク先をご覧いただきたい。
The Bhopal disaster and its aftermath: a review (ENVIRONMENTAL HEALTH)

この事故はノンフィクションで取り上げられたり、映画やドキュメンタリーとして制作されたりするなど、世間の関心は高い。

書籍ではドミニク・ラピエールおよびジャヴィエール・モローによるIt Was Five Past Midnight in Bhopal、映画ではBhopal Expressといった作品が入手しやすい。

また、BBC制作のONE NIGHT IN BHOPALはYoutubeで閲覧することができるので、ぜひご覧いただきたい。

ONE NIGHT IN BHOPAL (BBC)

今年12月5日からはインドでラヴィ・クマール監督によるBhopal: A Prayer for Rainが公開されるが、すでにニューヨークの映画館では11月7日から、ロサンゼルスその他の都市では11月14日から封切りとなっている。

この未曾有の大災害とそれから得た教訓を決して風化させてしまってはならない。そのためには事故に関する真実を今後ともみんなで共有していく必要がある。

スリランカ・フェスティバル2014

9月27日(土)と28日(日)に予定されていたスリランカ・フェスティバルが、当初予定されていた東京の渋谷区の代々木公園から江東区の有明に場所を変更して開催される。昨今のデング騒ぎゆえの措置であることは言うまでもない。

直前になって他の会場が確保されて幸いであったということになるだろう。私自身は代々木公園での開催について、健康のリスクがあるとは思わない。すでに園内の他の生き物の生態まで心配されるほどなので、当然蚊は駆除されているはずであること、蚊がいたところで気温が低くなるとあまり活動しないこと、参加者は虫除けを塗るなどしておけば、デングウイルスに感染した蚊に刺されることによってのみ罹患するこの病気の心配はないからだ。

ただし、開催者にとっても、出展する方々にとっても、今回の風評によるリスクは非常に現実的なものである。前週に予定されていたベトナム・フェスティバル、前々週に予定されていた日本インドネシア市民友好フェスティバルが中止される中、先週末にナマステ・インディアが開催されたものの、出展者や出演者のキャンセルが相次ぐとともに、来場者も例年と比較のしようがないほど少なかった。

健康被害がないゆえに中止とする理由はない、という判断は正しかったものの、あまりに規模が縮小するとともに、来場者も前年に比べて「ごくわずか」という水準では、イベント開催としては明らかに失敗である。

ただし、開催が近くなってから急遽会場を移すというのも、これまたどういう結果となるのかは、当日にならないと判らない。代々木公園で開催であるがゆえに、何かのついでに立ち寄る、代々木公園で開かれているがゆえに、近くを通りかかった際に足を向けてみた、という人も多いことだろう。

すると、こちらもまた例年よりもかなり寂しい開催となるような気がしてしまう。これが杞憂だと良いのだが。