ジャヤラリター逝去

昨日12月5日の夜11時半、チェンナイのアポロ病院で、ジャヤラリターが亡くなった。

女優時代のジャヤラリター

本日12月6日のヒンディー語ニュースは、この女性、元タミル語映画のトップスターで、後に大物政治家となった、現職のタミルナードゥ州首相の葬儀のことばかり繰り返している。通常、ヒンディー語ニュースは、その言語圏内のトピックが大半となるが、一地方州のチーフミニスター、しかも非ヒンディー語州の首相が亡くなって、放送がそれ一色になってしまうのは異例だ。

葬儀が営まれるマリーナー・ビーチに移動する車列と人々

葬儀の会場

女優時代にヒンディー語映画にも一作だけ(ダルメーンドラと共演したIzzatという作品)出演しているが、これほど大きく取り上げられるのは、やはり政治家としての存在感の大きさゆえのことだ。

タミル民族主義、裏返せば反中央即ち北インド感情、これと共振するところに反バラモン感情もあるのだが、その強烈なタミル民族主義の中核を率いる存在として君臨したのが、このバラモン女性というパラドックス。

女優時代は非常に美しく可憐で、長く政治家として頂点にあったときも、メディアのインタビューに応じるときには、上品かつエレガントな語り口で、豪腕政治家のものとは思えない優美さがあった。

近年、汚職により獄中で過ごした期間もあり、メディアでさんざん叩かれたこともあったが、さすがに今日の葬儀を伝えるニュースでは、彼女が行った貧困層や女性の地位向上の政策などを手放しで称えている。

享年68歳。南インド政界を代表する女傑が逝ってしまった。

Tamil Nadu CM Jayalalithaa dies at 68, to be buried at MGR’s memorial site (Hindustan Times)

さくらフェスティバル2016のセキュリティチェック

例年、桜の満開日に近い週末に開催されているが、今年は大使館の見立てが少し外れたのか、まだ三分咲きといったところの本日。
今回ひとつ気が付いたことに、大使館敷地に入る際にセキュリティチェックが実施されるようになっていること。

セキュリティチェック

正門は退場専用となり、普段は閉じられている裏門からのみの入場となっていた。
このイベントがうまく満開時と重なった年には、物凄い人出になる。インドの都市の様々なところでセキュリティチェックが厳しいこととは裏腹に、日本にあるインド大使館のイベントはずいぶん緩いと感じていた。何かあったら危険かもしれないと思うこともあったので、やはりこれがあるべき姿だと思う。
治安が良い日本の首都とはいえ、同様にテロを起こすような輩にとっては、非常に実行しやすい環境でもある。どこにどんな人間が紛れているかもわからないものだ。
さて、そのさくらフェスティバルだが、やはり満開日までしばらくあるためもあってか、あるいは私が訪れた時間帯が早かったためなのか、かなり閑散とした印象であった。


アミターブ・バッチャンの告白

インドのヒンディー語映画界の重鎮、ビッグBことアミターブ・バッチャンが、彼自身の深刻な健康状態について発表した。
1982年に映画「Coolie」の撮影中に起きた事故(アクションシーン撮影中に受けたパンチにより体内で出血、ムンバイー市内の病院に入院)の治療で大量の輸血を受けたのだが、血液のドナーの中に感染者がいたらしい。2000年になってから、B型肝炎に罹っていることが判り、その後現在に至るまで治療中であるとのこと。すでに肝硬変に進行しており、肝臓が25%程度しか機能していないという。
罹患していることが判ってから15年経過した今になってから発表することについては、おそらく当時はまだ出演作も多くて忙しかったことなどもあったのではないだろうか。B型肝炎の危険や予防について社会の関心を高めるという目的もあるそうだが、アミターブ・バッチャン自身の健康状態も大変気になるところだ。

I have liver cirrhosis and am surviving on just 25 per cent of my liver: Amitabh Bachchan (INDIA TODAY)

BACHCHAN BOL (Amitabh Bachchan’s Official Blog)

※ビカネール3は後日掲載します。

シェーカーワティー地方へ 3  〈映画をこよなく愛する人々〉

せっかくマンダ‐ワーに来たので、昨年公開されて今年の初めにかけて大ヒットした映画「PK」で、この町でのロケ地であった「チョウカーニー・ハヴェーリー・チョウク」という横丁であることはすぐにわかった。小さな町なのでどこに行くのもすぐだ。

田舎町で、人気スターがやって来ることに大興奮したであろうことは、特にちょっと若い人たちに声かけると、期待を大きく上回る反応がかえってくることから見て取れる。
「この路地の出口で、アーミルがサルマーンのクルマに(確かトラクターであったはず)にひかれた」
「あの歌のダンスシーンで挿入された場面が撮影されたのはここ!」
「映画の中でアーミルにサーモーサーを勧めたのはこの人!」と、わざわざその人物の仕事場まで連れていってくれる人までいた。

映画の中でアーミル・カーンが轢かれたスポット

ダンスシーンが撮影された場所はここなのだとか。



映画「PK」の中でアーミルにサーモーサーを勧める役を務めた人

「おーい、兄貴ィ、日本から記者があんたのことを取材に来たでぇ・・・。オレ、お茶注文してくる。よーく話聞いとってな!頼むでぇ!」なんて具合に早足でどこかに行ってしまった。私は記者ではないし、取材しに来たわけでもないのだが・・・。

ちょっと尋ねると、芋づる式に次から次へとこの映画ゆかりのナントカカントカが出てくるレスポンスの速さ!
「PK」の後は、「バジラン・バーイージャーン」というサルマーン・カーン主演の映画の撮影もなされたとのことで、今後もマンダーワーが他の映画作品のロケ地として使われることが幾度かあることだろう。

やはりどこに行っても映画をこよなく愛する気持ちは誰もが同じであることは、ボリウッド映画ファンの私としても嬉しい。

〈続く〉

映画「ルンタ」

池谷薫監督による映画作品「ルンタ」が東京都中野区東中野のポレポレ東中野にて、11月13日まで公開されている。

朝鮮戦争とほぼ同じ時期に始まる中国によるチベット侵攻以降、現在に至るまで続く占領下にあるチベットでは抵抗の歴史が続き、2000年代に入ってから市民や僧侶による焼身抗議がメディアで報じられることが多いが、そうした行為の背景にあるものを探っているのがこの作品。

インドのダラムサラで、チベットにおける苛烈な弾圧から逃れてきた人々を支援する活動をしている中原一博氏に密着する形でストーリーが進んでいく。

チベットにおける焼身抗議とは、中国による圧政に対して中国人を殺める暴力に訴えるものではなく、自らの身体を灯明として国や民族に捧げて覚醒を促す自己犠牲の行為であるとのこと。

かつて、イギリスが植民地支配していたインドにおいて、ガーンディーが率いた活動もまた、大変な自己犠牲を要する実に「過激な」行動であったが、チベットにおいても展開される非暴力不服従の活動もまた、なんと激しいものだろうか。

作品中でカメラが追っていく中原一博氏がチベットにおける人々の抵抗運動を伝えるブログ「チベットNOW@ルンタ」では、チベットの情勢、中国当局による様々な弾圧、焼身抗議を実行するに至った人々の背景、占領下チベットから逃れてきた人たちへのインタビュー記事などが刻々と綴られている。

同ブログでは僧侶が町中で「一人デモ」を実行して公安に取り押さえられる現場の動画なども取り上げられており、その後本人が受けたであろう苛酷な拷問、長期に渡る獄中生活などを思うと、非暴力不服従運動という活動は大変大きな自己犠牲を必要とするものであることがひしひしと伝わってくる。

私たちがごく当たり前のこととして享受しており、その大切ささえもすっかり忘れ去られているが如き自由と民主主義だが、これがいかに尊いものであるかを思い知らされるようだ。

チベットは決して中国の一部ではない。焼身抗議を実行する人々が、自らを灯明として差し出して覚醒を促している相手は、中国当局やチベットの同胞だけではなく、中国による占領の継続を黙認している国際社会に向けられたものであることについて、私たちは自覚しなくてはならない。