ブータンとインド

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 ブータンでテレビ放送が始まって5年目。おそらくそれ以前は、ごく一部の道楽人が隣国インドの地上波や衛星放送を受信して楽しむ他なかったのだろう。考えてみてほしい。二十世紀末まで存在しなかったテレビ文化が突然ドカッと流入したのだ。人びとへのインパクトは強烈である。地元コンテンツはまだ未熟で、放送されるのは外国番組が主体ということもカルチャーショックに拍車をかけていることだろう。 
 「テレビ放送」と一口に言っても、技術や経験の蓄積なしに、暗中模索してなんとかなるシロモノではない。業界のコアを占めるのは地元っ子ではなく外国人かもしれない。
 今なお鎖国状態のヒマラヤの小王国で、欧米からやってきたプロフェッショナルたちが大手を振って闊歩する…という光景は想像しにくいが、相互に人の行き来が盛んなインドからということならば納得がいく。 
 非熟練労働者から高度な専門職まで、ブータンで活躍するインド人は多く、学校で教えるインド人教員も少なくないようだ。国策として英語教育に力を注いできたブータンでは、国語以外の授業は英語を通じて行われているというが、この外来の言葉を定着させることができたのは、現場でのインド人教師の活躍あってのことらしい。 

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浄土へ渡った僧侶たち

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 JR紀勢本線那智駅近くにある補陀洛山寺を訪れた。このお寺は「補陀洛渡海」で知られる。行者たちは、南海の果てにあるとされる観音菩薩の住む山「補陀洛山」を目指し航海していた。この行法は穂平安時代からおよそ千年もの間つづいていたそうだ。
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 当時使われていた船の復元が、境内で見ることができる。四方に鳥居がついているのは、神仏混交の地・熊野らしいところだ。
 船にはひと月分の食料や水を積まれたが、外に出れないように小さな船室の扉は釘付けされた。船旅に出た僧侶は、生きてこの世に戻ることはなかった。間違いなく浄土へと至る旅ではあるが、まさに捨て身の荒行である。
 井上靖の小説『補陀洛渡海記』で描かれているように、誰もが信仰のもとに死をも恐れずに浄土へと旅たったというわけでもないのかもしれない。
 「補陀洛」とは観音浄土を意味するサンスクリット語「ポタラカ」の音訳。かつてダライラマ法王が起居していたチベットのラサにある宮殿の名前「ポタラ」とも同意であるとか。 
 伝説では、補陀洛山は南インドにあるとされる。昔の人びととって地理的には遠く離れていても、観音信仰によって馴染み深い憧れの聖地となっていたのだろう。
 補陀洛山寺近くの海岸から船出した僧侶たちが、心の中に描いていた浄土=インドのイメージとはどんなものだったのだろうか。

「バジャージ」に強力なライバル出現!?

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 以前、日本上陸したバジャージ社のオート三輪について書いたが、非常に強力なライバルが存在した。メタリックでカラフルなボディ、耳に心地よいくらいシャープに吹け上がるエンジンを持つ、タイの「トゥクトゥク」だ。
 バジャージのオート三輪は、発売元のタケオカ自動車工芸で、「ジュータ」と名づけられた。この会社では、後部が荷台となっている三輪ピックアップしか販売していないが、トゥクトゥクを扱う株式会社ニューズでは、通常の後部客席付きモデルに加え、トラックタイプ、アルミバン、保冷車にダンプ(ちゃんと荷台が持ち上がる)等々、実にバリエーションが豊か。しかも車両の前後左右につけるクロームメッキのロールバーや特別塗装などのオプションもある。
 バジャージの174ccという非力なエンジンに対して、トゥクトゥクは659ccのダイハツ製エンジンを搭載。圧倒的なパワーの差がある。足回りだって後者のほうがはるかに近代的だし、洒落ていてカッコいい。
 さらには「4ドア・エアコン付き」なんていう豪華版まであるのには驚かされ、購買意欲をいやがうえにも刺激されてしまう。これは欲しい!
 業者いわく「車両法上は二輪車扱いなので車庫証明不要」とのこと。しかし「高速道路でもヘルメット不要で、シートベルトを着用する義務もありません」とメリットだかリスクだかわからないことも自慢していた。
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 価格を比較すると、バジャージが62万5千円であるのに対して、トゥクトゥクはスタンダードモデルで120万円、フルオプションモデルだと140万円もする。加えてこちらは車検も必要になり、異なる価格帯であることから直接競合することはないのかも。
 外国製のこんな車両を専門に扱う業者がいるところを見ると、いまの日本でオート三輪の需要は、ニッチながらも意外とあるように思える。

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お手回り品にご注意

 カフェでのこと。斜向かいに一人で座っていた女性が立ち上がり、奥の化粧室のほうへと向かった。「ここにいます」という意思表示のためだろうか、財布と携帯電話をテーブルの上に置いたまま。幸運にもいままで盗られた経験がないのだろう。
 傍目には「ちょっと危ないな」と思えても、当人が被害をこうむることがなければよいのかもしれない。「安全」に対する意識は、なんといっても経験に基づき作られるからだ。
 用心しなくて済むのなら、それに越したことはない。家の窓に鉄格子がはめられていることはないし、閉店後も店のショーウィンドウには高価な品々が飾られている。カギをかけてみたところで、ガラスという一枚の脆い薄板に過ぎないということは誰もがよくわかっている。それでも周到な防備を必要としないのは、日本社会の良いところでもある。
 以前、カルカッタの繁華街で、お金を盗られてしまったという女性に会った。
「ちゃんとポーチに入れておいたのに」
と彼女は言う。首からかけた貴重品袋をショルダーバッグのように服の外に出していたらしい。人ごみの中をかきわけて歩き、ふと気がつくとそれが消えていた。彼女はあまり海外を訪れたことがなくインドに来たのも初めてだという。日本国内ではこんな風にポーチを盗られた経験がなかったのだろう。
 「日本にある我々の取引先にもって行けば、高値で買い取ってくれる」と価値のないクズ宝石を大量に購入させる手口は有名。様ざまな詐欺があるが、そうした怪しい話に簡単にひっかかってしまうのも、これまでの経験と照らし合わせ「大丈夫」と判断したからだ。

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自殺率世界ワースト1

「10万人あたり14.5人、男性は女性の約3倍」。気が重くなる話題だが、これは世界の「自殺の平均値」だそうだ。男性は10.9人、女性は3.6人。男女平等とはいうものの、平たくならしてみると総じて男性のほうにかかるストレスが大きいのか、あるいは女性のほうが逆境に強いということなのか。
この統計、南インドでは10万人あたり女性148人、男性58人という非常に高い数字になっている。男性は世界平均の5.3倍、女性はなんと41.1倍というのはにわかに信じられない。記事には詳しく触れられていないが、背景にはどんな原因が潜んでいるのだろうか?

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