ダム建設工事で危機的状況の文化遺産

パーキスターンのダム建設でこのような問題が生じているとのことだ。

ダム湖に沈む文化遺産を救うために(特定非営利活動法人 南アジア文化遺産センター)

太古の時代より、様々な民族や文化が興亡したこの地域についての概略やダム建設の背景等については、上記リンク先のスライドをご覧いただきたい。

この問題のあらましについては下記リンク先にも記されている。

Diamer-Bhasha threatens ancient heritage sites (DAWN.com)

Bhasha dam and heritage sites(DAWN.com)

南アジア文化遺産センターのウェブサイトによると、ダム建設で水没する地域で失われる岩絵その他の文化遺産は3万点にも及ぶという。長い歴史の中でこうした遺産を残した様々な民族の生活等に関する調査はまだほとんど手つかずだそうで、ダム竣工まで残された時間が10年という状況は非常に厳しい。

この件に関する講演は、11月8日(土)に日本大学文理学部3号館で開催されるシンポジウム・パーキスターン2014でも行われるとのことである。

シンポジウム・パーキスターン2014 (特定非営利活動法人 南アジア文化遺産センター)

Markha Valleyのガイドブック

もはやこの時期にラダックのトレッキングガイドブックなどと言っても、ほぼ来年のシーズンで使うような話になってしまうが、このような本がある。

書名:Exploring Ladakh Markha Valley Trekking and Homestay Guide

著者:Nicholas Eakins

出版社:Hanish & Co.

ISNB : 978-81-7927-004-2

ルートにもよるが、一週間ほどかけて回るマルカー渓谷のルートは欧米人を中心に人気がある。この本では、その渓谷の自然や気候、そこに暮らす人々、そして野生動物たちについての紹介はもちろんのこと、トレッキングの準備や装備について、行程中でのホームステイについて書かれている。

持参すべきものについても事細かく書かれており、初めてこうしたトレッキングをするような人にも参考になるのではないかと思う。

8日間という想定で、その日ごとの区間について、ルート上の様子を写真入りで紹介がなされており、ページをめくっているだけでもワクワクしてくる。

実は、この本の著者であるNocholas Eakins氏とは、レーの書店でたまたまお会いして、少し話をしたことがある。このトレッキングガイドブック以外にも、ラダックに関するいろいろな著作があるらしい。

インド国外ではまず手に入らないのではないかと思うが、レーの書店には沢山並べられているポピュラーなガイドブックである。来年のシーズンに、マルカー渓谷に向かう方はぜひご一読をお勧めしたい。

Google Earthで眺めるストック・カングリー

ストック・カングリー峰

レーの町の旅行代理店で「ストック・カングリー登頂ツアー」の貼り紙をよく見かける。標高6,153mで、インドの「highest trekable mountain」ということになっている。

町の旅行代理店でツアー募集しているくらいなので、技術的に難しくはない登山ということになっており、毎年シーズンには相当数の人たちが登頂している。一般的なのものは、レーからの行き帰りも含めて4日間ほどのものだ。2日目の晩に頂上アタックのためのベースキャンプに泊まり、3日目に日付が変わってから直ちに登頂に向けてスタートするということなので、レーの海抜が3,500m程度であること、短い日程を合わせると、高度順応はそう容易ではないように思われる。

もちろん実際に登るのと、Google Earthで眺めるのとでは大違いであるに違いないが、少なくとも地形だけは「このような感じなのかな」という把握はできるのではないだろうか。

高いところに弱い(酸素の薄いところは苦手)な私ではあるが、今度ぜひ挑戦してみたいと思っている。

秀峰ストック・カングリー
ストックの村の背後にそびえるストック・カングリー峰
ストックの村
ストックの村を縦断する川沿いに北上
右手背後の大きな山がストック・カングリー峰
村からのルート
勾配はかなり急なのだろう。
雪を被った部分が見えてくる。
背後にはこんな眺め
このあたりまで来るとかなり寒いことだろう。
背後はストック・カングリー峰
画面左手は雪渓のように見えるが、おそらく氷河だろう。
実物はどんなに美しいことか。
頂上はこんな具合らしい。
頂上からストックの村の方面(画面右下)を見下ろした感じ

 

Google Earthで眺めるトレッキングルート

ラダックに限ったことではないが、ガイドブックにトレッキングのルートが掲載されていても、地図だけでは具体的なイメージが沸かないことは少なくない。とりわけ山の地図を見慣れた人でもなければ、具体的な景色をイメージすることは、あまり簡単ではない。だからこそ、実際に歩いてみると発見や感動があるとも言えるかもしれない。

それでも、事前にどのような場所であるのかが判ると、限られた時間を最大限有効に楽しむ手助けになることだろうし、実際に歩いてみる際の参考になることは間違いない。

概ね、山岳部のgoogle earth画像は、都市部と異なり、地表の詳細な様子や建物の具合まではよくわからない。それでもおおまかな地形以上のさまざまな情報が参照できるのは便利だ。周囲の緑の分布、高低差、集落の有無などその他の環境についてガイドブック内の地図に比べて相当な具体性があるため、非常に判りやすい。

地域全体を俯瞰することができるため、地域間の位置関係や、ルート上から見える山の背後の様子などを把握することができるなど、実際に歩くよりも判りやすい部分さえある。携帯の電波が届かないので無理だが、これが歩きながら確認できるとなおさらのこと楽しいのではなかろうか。

たとえ電波が届かず歩いている最中に参照できなくても、ルートの要所要所を画像にてスマホに保存しておいたり、プリントアウトしておいたりすると、役に立つこともあるだろうし、いろいろ楽しめるはず。同じルート上で、夏の時期と冬の時期など、異なる季節の画像を対照させてみるのもまた興味深いだろう。

以下、このたび歩いてみたズィンチェンからチリンへのルートの画像を掲載してみることにする。

出発地点のズィンチェン
今回のルートは画面左上から右下へと抜けるルート
ズィンチェンからしばらく登ってルムバクに至る
ズィンチェンからルムバクに到着するとこんな風な眺め。川の合流点に白いテント(夏の時期のトレッカー用の食堂)が見える。
ズィンチェンからさらに進むとユルツェに到着
ユルツェの村。ラダックの画像は粗く、地表が平面化されてしまうので家屋は消失する。
ガンダ・ラ・ベースキャンプ付近
ユルツェ側から見たガンダ・ラ
北側のアングルから眺めるガンダ・ラ
ガンダ・ラの峠の向こうの景色
ここを下るとシンゴの村
画面中央のやや下はシンゴの村
シンゴの村から先の風景
突き当りの川の手前はスキュウの村
スキュウの村から左折(画面上部へのルート)はマルカー渓谷
マルカー渓谷トレッキングルートの反対方向はカヤーの村
縁豊かなカヤーの村
今回のトレッキング終点のチリンはザンスカール河に面している。現在は画面上部中央に橋が架かっている。

 

ズィンチェンからチリンへ 4

朝5時半くらいに目が覚めた。まだ外は明るくなりきっていないが、もうすでに家の人たちは、宿泊客たちの朝食や持たせる昼食の支度を始めている。さすがに村で唯一のホームステイ先であるため、彼らは実に手慣れたものである。手際よく次々にローティー、ゆで卵、ゆでジャガイモをアルミホイルに包んでいく。

午前7時前には朝食の準備も出来上がる。パンとジャム、バター、そして紅茶である。次々に宿泊客たちが居間に入ってきて、ガイドを含めて20数名の人々が一斉に食事をする様子は壮観でさえある。昨日の昼食、夕食の際もそうだが、食べることに夢中になってしまい、こうした場面の撮影をしておかなかったことは少々悔やまれる。

出発!

さて、8時にここを出発。半時間ほど歩いた先にはガンダ・ラ・ベースキャンプがあり、そこで小休止してるチャーイを啜る。

ガンダ・ラ・ベースキャンプ付近
雲の間から垣間見るストク・カングリー峰

しばらくすると傾斜が少しきつくなってくる。高度も上がってくるため、途中で3回ほど小休止を入れて、ガンダ・ラという峠を目指す。そこが今回の山歩きの最も高い地点である。ベースキャンプからは、昨夜のホームステイ先で一緒だったバルセロナから来たスペイン人カップルとそのガイドと同行する形になっている。

このあたりまで来ると地面に這いつくばって生える地味な植物ばかり。
ヤクの放牧地
子犬ほどの大きさのマーモット

上へ、上へと登るにつれて、下の景色もさらによく見えるようになってきた。途中ではヤクの放牧を目にしたし、ぬいぐるみのような可愛らしいマーモットも目にした。齧歯類の動物だが、子犬ほどの大きさがあり、動きはあまり敏捷ではなく、危険を察知すると穴の中に逃げ込むようである。このあたりで生えている草木も、いかにも高山植物といった風情で、背が低く、横に広がる形で生育するものが多い。このあたりはヤクの放牧も行なわれている。

ガンダ・ラの峠手前の勾配。山肌の色合いも様々で、地質学的にも興味深いところなのではないかと思う。
あと一息でガンダ・ラの峠
海抜4,900mのガンダ・ラの峠。もっと上に登って写真でも撮ろうという元気な人たちの姿も。
マルカー渓谷のトレッキング需要の物資を運ぶ馬の隊列

今日も朝から曇りがちだが、ときおり晴れ間が見えると歩いている間は半袖姿になりたくなるが、陽が陰るとやはり上着が必要となり、今のように雨が降り出すとその上にレインコートを着ていても寒いくらいだ。

ここから先はゆるやかな下りとなるため、惰性でそのまま歩き続けるような感じで楽だ。しばらく歩いてから遠くに見えてきたのはシンゴという村。そこに到着してから、テント食堂で小休止する。チャーイを注文して、今朝出発したホームステイ先で持たされた昼食を食べる。雨は長く降り続くことはなく、食事を始めるころにはすっかり止んでいた。日干し煉瓦で造った家屋に暮らす人々の乾燥した大地だけに、強い雨が長く降り続けることはまずないのだろう。

シンゴの村の家屋

シンゴの村の後は、しばらく歩くと比較的開けた景色から、深い谷間となる。同じ川沿いでひと続きの土地であるが、人が生活していくために水は不可欠なので、こうした地域で集落が存在するのはやはり川沿いということになる。

ブルーシープの群れ

ブルーシープの群れがいた。ガイドのS君は実に目が良くて、こういう動物や鳥などをいとも簡単に見つけてくれる。ブルーシープはほとんど断崖のようなところを平気で降りたり登ったりする。実に身軽であるが、たぶん滑落するケースも中にはあるのではないだろうか。

紫色や青色の山肌はどうやって出来るのか?
木々がほとんどないので地層の褶曲がよく見えるラダックだが、捻じれがこのように弾けたものも時々目にする。

さらに岩ゴツゴツのところを下ってから、スキューを経て、カヤーの村に着いた。スキューでは食堂でしばらく小休止してゴンパを見学。なんでも、スキューの村に宿泊できるのはそこからマルカー渓谷に行く人たちだけで、チリンに抜ける人たちはカヤーの村に宿泊しなければならないことになっているそうだ。こうして村人たちが宿泊客たちを分け合う構造になっている。

スキューの村

スキューの村からカヤーの村は近いのだが、そのカヤーで宿泊できるところは輪番制になっていて、こちらが自由に選択することはできないことになっているとのこと。そんなわけで、「当番の家」を探し当ててそこに宿泊することになるのだが、最初間違えて訪れた先の家はいい感じであったが、残念ながらその日に私たちが宿泊することはできず、来た道を少し引き返したり、戻ったりしながらやっと探し当てることができた。

家屋や生活に関わる状況がそれぞれ異なる村人たちが、平等に宿泊客たちを泊める機会を分け合うというとはいいのだが、逆に利用する側としては、自由に選択することができないのは困るのである。その家で受け入れる宿泊客は初めてであるとのことで歓迎してくれたのだが、正直なところ先に間違えて訪れた家のほうが居心地の良さそうな広間があったりして良かったな、と思ったりする。

夕飯には野菜のスープとラダック式のマントウのようなものを出してもらい、とてもおいしく頂いた。

カヤーの村のホームステイ先での夕飯

<続く>