ズィンチェンからチリンへ 4

朝5時半くらいに目が覚めた。まだ外は明るくなりきっていないが、もうすでに家の人たちは、宿泊客たちの朝食や持たせる昼食の支度を始めている。さすがに村で唯一のホームステイ先であるため、彼らは実に手慣れたものである。手際よく次々にローティー、ゆで卵、ゆでジャガイモをアルミホイルに包んでいく。

午前7時前には朝食の準備も出来上がる。パンとジャム、バター、そして紅茶である。次々に宿泊客たちが居間に入ってきて、ガイドを含めて20数名の人々が一斉に食事をする様子は壮観でさえある。昨日の昼食、夕食の際もそうだが、食べることに夢中になってしまい、こうした場面の撮影をしておかなかったことは少々悔やまれる。

出発!

さて、8時にここを出発。半時間ほど歩いた先にはガンダ・ラ・ベースキャンプがあり、そこで小休止してるチャーイを啜る。

ガンダ・ラ・ベースキャンプ付近
雲の間から垣間見るストク・カングリー峰

しばらくすると傾斜が少しきつくなってくる。高度も上がってくるため、途中で3回ほど小休止を入れて、ガンダ・ラという峠を目指す。そこが今回の山歩きの最も高い地点である。ベースキャンプからは、昨夜のホームステイ先で一緒だったバルセロナから来たスペイン人カップルとそのガイドと同行する形になっている。

このあたりまで来ると地面に這いつくばって生える地味な植物ばかり。
ヤクの放牧地
子犬ほどの大きさのマーモット

上へ、上へと登るにつれて、下の景色もさらによく見えるようになってきた。途中ではヤクの放牧を目にしたし、ぬいぐるみのような可愛らしいマーモットも目にした。齧歯類の動物だが、子犬ほどの大きさがあり、動きはあまり敏捷ではなく、危険を察知すると穴の中に逃げ込むようである。このあたりで生えている草木も、いかにも高山植物といった風情で、背が低く、横に広がる形で生育するものが多い。このあたりはヤクの放牧も行なわれている。

ガンダ・ラの峠手前の勾配。山肌の色合いも様々で、地質学的にも興味深いところなのではないかと思う。
あと一息でガンダ・ラの峠
海抜4,900mのガンダ・ラの峠。もっと上に登って写真でも撮ろうという元気な人たちの姿も。
マルカー渓谷のトレッキング需要の物資を運ぶ馬の隊列

今日も朝から曇りがちだが、ときおり晴れ間が見えると歩いている間は半袖姿になりたくなるが、陽が陰るとやはり上着が必要となり、今のように雨が降り出すとその上にレインコートを着ていても寒いくらいだ。

ここから先はゆるやかな下りとなるため、惰性でそのまま歩き続けるような感じで楽だ。しばらく歩いてから遠くに見えてきたのはシンゴという村。そこに到着してから、テント食堂で小休止する。チャーイを注文して、今朝出発したホームステイ先で持たされた昼食を食べる。雨は長く降り続くことはなく、食事を始めるころにはすっかり止んでいた。日干し煉瓦で造った家屋に暮らす人々の乾燥した大地だけに、強い雨が長く降り続けることはまずないのだろう。

シンゴの村の家屋

シンゴの村の後は、しばらく歩くと比較的開けた景色から、深い谷間となる。同じ川沿いでひと続きの土地であるが、人が生活していくために水は不可欠なので、こうした地域で集落が存在するのはやはり川沿いということになる。

ブルーシープの群れ

ブルーシープの群れがいた。ガイドのS君は実に目が良くて、こういう動物や鳥などをいとも簡単に見つけてくれる。ブルーシープはほとんど断崖のようなところを平気で降りたり登ったりする。実に身軽であるが、たぶん滑落するケースも中にはあるのではないだろうか。

紫色や青色の山肌はどうやって出来るのか?
木々がほとんどないので地層の褶曲がよく見えるラダックだが、捻じれがこのように弾けたものも時々目にする。

さらに岩ゴツゴツのところを下ってから、スキューを経て、カヤーの村に着いた。スキューでは食堂でしばらく小休止してゴンパを見学。なんでも、スキューの村に宿泊できるのはそこからマルカー渓谷に行く人たちだけで、チリンに抜ける人たちはカヤーの村に宿泊しなければならないことになっているそうだ。こうして村人たちが宿泊客たちを分け合う構造になっている。

スキューの村

スキューの村からカヤーの村は近いのだが、そのカヤーで宿泊できるところは輪番制になっていて、こちらが自由に選択することはできないことになっているとのこと。そんなわけで、「当番の家」を探し当ててそこに宿泊することになるのだが、最初間違えて訪れた先の家はいい感じであったが、残念ながらその日に私たちが宿泊することはできず、来た道を少し引き返したり、戻ったりしながらやっと探し当てることができた。

家屋や生活に関わる状況がそれぞれ異なる村人たちが、平等に宿泊客たちを泊める機会を分け合うというとはいいのだが、逆に利用する側としては、自由に選択することができないのは困るのである。その家で受け入れる宿泊客は初めてであるとのことで歓迎してくれたのだが、正直なところ先に間違えて訪れた家のほうが居心地の良さそうな広間があったりして良かったな、と思ったりする。

夕飯には野菜のスープとラダック式のマントウのようなものを出してもらい、とてもおいしく頂いた。

カヤーの村のホームステイ先での夕飯

<続く>

 

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