世界最大のヒンドゥー寺院

デリーのアクシャルダーム寺院
新年明けましておめでとうございます。
ウェブ上で初詣ということで、お寺の話題をひとつ。
グジャラーティー・コミュニティを中核に、国際的な広がりを持つヒンドゥー組織BAPS (Bochasanwasi Akshar Purushottam Swaminarayan Sanstha)による大寺院、2005年に完成したデリーのアクシャルダームがギネスブックの『世界最大のヒンドゥー寺院』と認定されたのは昨年12月半ばのこと。
アクシャルダームといえば、グジャラート州のガーンディーナガルにも同じ名前の寺院がある。こちらは1992年建立で、もちろんデリーのものと同じくBAPSのお寺だ。敷地のレイアウトや本堂の姿形もよく似ている。ただしこの寺院には非常に不幸な歴史もある。2002年に起きたテロリストによる襲撃により、境内で多数の人々が殺傷されるというショッキングな出来事のことを記憶している人も多いだろう。
さて、このデリーのアクシャルダーム、私はまだ訪れてみたことがないのだが、建設当時かなり話題になっていたようだが、特に気に留めることはなかった。だがこのほどギネスブックに載ったことで、どんなものかと同寺院のウェブサイトを覗いてみると、これがなかなか面白そうだ。
建物内外の壮麗さはもちろんのこと、広大できれいに整備されたガーデン、巨大スクリーンによる映像、夜間に美しくライトアップされる噴水、様々の工夫と趣向を凝らした宗教関係の展示など、夢か幻かと思うような設備満載で、いわば宗教テーマパークのような具合らしい。その一端は同ウェブサイト内のPhoto Galleryで垣間見ることができる。
建築的にどうなのかということはともかく、各地の様々な要素が一堂に集まっているようでなかなか興味深いものがありそうだ。非常にバブリーな雰囲気が感じられるのはもちろんのことだが、これもまたインドの今という時代を反映しているようでもある。建立時期がごく新しい巨大寺院は他にもあるが、今の時代の都会での信仰というもののありかたを示唆する貴重な一例であるように思う。
2008年が皆さんにとって良き一年でありますように!

私立探偵

私立探偵を主人公とする推理小説作家は数多い。アガサ・クリスティ、エラリー・クイーン、コナン・ドイルといったこの分野を代表する大家の作品を読んだことがないという人はまずいないだろう。また少年向けのマンガでも『名探偵コナン』『金田一少年の事件簿』などがある。老若男女を問わず、探偵とは人々の興味や関心を呼ぶ魅力あるテーマらしい。私自身、子供のころ『大人になったら探偵になりたい』と思っていた。

続きを読む 私立探偵

Daughter of the Eastを悼む

Benazir Bhutto
なんということだ。ついに起きてしまった。多くの人々が恐れていたことが。
過激派による警告を受け、10月18日の帰国前から身辺の危険に関する懸念を口にしていた。まさにそのとおりに帰国当日のカラーチーでのパレードで、この国でこれまでに起きた中でも最大規模のテロが発生し、ブットー自身は難を逃れたものの140人もが亡くなる大惨事となった。その際当局が供するセキュリティの不備等について、批判の声が上がっていた。このたび、まさに同様の事件が今度はラーワルピンディーでの遊説後に再発し、来年1月に予定される選挙の趨勢を握る重要人物が永遠に帰らぬ人となってしまった。

続きを読む Daughter of the Eastを悼む

あったらいいな

タイ・カンボジア両国の間で、観光業振興を目的として『共通ヴィザ』が発行されるようになるのだという。ただし私たち日本人を含めた42ヶ国・地域の人々の場合、観光目的で入国するにあたり、タイの場合は本来査証の取得が必要であるものの、出国用の航空券を所持していれば、30日以内のヴィザ無しでの滞在が認められているし、カンボジアについても出入国地点(空港および国境)でヴィザが取得できるため、あまりメリットはないように思われる。
さらに今後はベトナム、ラオス、ミャンマーも『共通ヴィザ』のスキームに加わる可能性があるとのこと。前者二か国はともかくとして、最後のミャンマーについては今までのところ事前の査証取得が必要であることから注目する人もあるかもしれない。事前に現地旅行代理店を通じて仮申請する『アライヴァル・ヴィザ制度もあるが、観光目的には適用されなかったり、団体ツアーのみ対象となったりと、時期によって流動的である。
国情も政治体制も異なる国々が『共通ヴィザ』を発行することについて、そもそも『査証』は何のためにあるのか?と疑問を感じなくもないが、こうした国々を訪問する側にとっては事前の手間が省けることから決して悪い話ではない。
さてこうした制度が南アジアにあったらどうだろうか?共通ヴィザでインドからそのままバングラーデーシュへ、パーキスターンからそのままインドへと出入国ができれば、前もって複数の国の査証を取得することなしに、国境の両側に広がるひとつながりの歴史遺産や自然など、たとえば亜大陸北西部のムガル遺跡めぐり、ベンガルのテラコッタ建築群の見学や東西スンダルバン横断旅行といった楽しみかたができることは容易に脳裏に浮かぶ。もちろん他にもいろいろ楽しいアイデアを持つ人は多いだろう。
インドはもとより、その周辺国にとっても『せっかくここまで来たから』と事前の準備なしに気楽に国境を越えて見物にやってくる人々が増えればそれなりに役立つことがあるだろうし、これまで自国だけでは難しかった地域についてボーダーをはさんだ両国共同での観光振興の可能性も出てくるはず。
もちろんASEAN加盟の国々とSAARC諸国の間では、国家間の協力のレベルや対立の度合いも異なり、政治環境そのものが違うので現状では『共通ヴィザ』という構想が浮上することはないように思うが、将来そういう時代が訪れることはあるのだろうか。
そうでなくともスリランカがそうであるように、日本を含めて地域で特に問題のない国の人々に対するヴィザ無しでの滞在を認める措置、あるいはネパールのように国境での査証取得を可能とするといったことが、南アジアの他の地域にも及んでくることがあれば、とてもありがたく思う。
共通ビザ発行へ=タイとカンボジア(時事ドットコム)

王室廃すと・・・

このほど王室の廃止が確定したネパールだが、すでに今会計年度の王室予算配分がゼロとなっており、今年7月に宮殿で行われた国王の60歳の誕生日を祝う式典に同国閣僚や外交団の参加者はなく、集まった支持者も千人ほどでしかなかったとのことだ。
昨年半ばに政府から王室に財産の公開が求められ、これに従わない場合は当局による強制的な執行がなされるという旨の報道があった。同年10月には2001年に殺害されたビレンドラ前国王の私財が国有化されている。今年8月には七つの宮殿を含む王室財産の国有化の決定に加えて、ギャネンドラ国王夫妻とパーラス王子の銀行口座を凍結するなどの措置が取られた。
しかし王室が以前から海外に所有する資産、ギャネンドラ国王即位後に国外に逃避させた前国王の私財など、よくわかっていない部分が多いらしい。国内に所有するその他資産と合わせて、今後も『埋蔵金探し』が続くことだろう。
ギャネンドラ国王は意欲的なビジネスマンの側面を持つ。彼を含む王室のメンバーたちが自国内で、旅行業界に加えて、食品や、タバコ、紅茶、電力などで幅広く投資を行なっており、これらの分野の著名企業の大株主でもある。カトマンズ市内のアンナプルナ・ホテル、旅行代理店のゴルカ・トラベルズ、スーリヤ・タバコ会社などがこうした王室系資本ないしは強い影響下にあることは外国人にも広く知られているところだ。
国家に帰属すべき王室財産と、シャハ家としての私財をどう色分けするのだろうか。かねてより関係者の間で熾烈な駆け引き、取り引き、策略などが展開されてきたことだろう。近・現代史の中で、ロシアの二月革命でのニコライ二世、イランのモハンマド・レザ・シャーのように自国内で発生した革命により王権が剥奪された例、韓国の李朝のように外国(日本)からの侵略により消滅した例はいくつかある。
これらと時代も状況も違うので比較はできないものの、ネパールではこの王室廃止についてどのような処理が進められていくのか、王室無き後この国に住み続ける旧王族たちが実質的にどういう立場になっていくのかなど、かなり興味を引かれるところである。