私立探偵

私立探偵を主人公とする推理小説作家は数多い。アガサ・クリスティ、エラリー・クイーン、コナン・ドイルといったこの分野を代表する大家の作品を読んだことがないという人はまずいないだろう。また少年向けのマンガでも『名探偵コナン』『金田一少年の事件簿』などがある。老若男女を問わず、探偵とは人々の興味や関心を呼ぶ魅力あるテーマらしい。私自身、子供のころ『大人になったら探偵になりたい』と思っていた。


アメリカの一部の州では銃器の携帯も可能な場合もあるようだが、それ以外の国や地域では素手で臨むことになることに加えて、犯罪容疑者等を逮捕する権限もないため、殺人や強盗といった凶悪事件を扱うことはまずないようだ。そのため私立探偵たちの活躍の場といえば、浮気を含む素行調査、ストーカーへの対応、家出人探しといったところが、一般的なところとなる。
しかしこの探偵業にはいくつもの問題があるようだ。こうした業者たちに調査を依頼するクライアントに係わる情報は守秘されるものの、被調査対象の人物等のプライバシーは無残に剥ぎ取られていく。また誘拐や押し込み強盗の犯人たちがターゲットの行動を下調べするために私立探偵を使う可能性も否定できないし、実際そういう事例もあったと聞く。
仕事の結果が犯罪に悪用されるリスクが高いことに加えて、探偵業者自身の身元が怪しいことも少ないこと、アンダーグラウンドな世界とのつながりも珍しくないことなどが指摘されている。闇金融の債務を抱え込んだまま逃走した人の居所を探し出したり、相手を冤罪に陥れたりするための特殊工作を行なったりと、かなりヤバイ仕事を行なう業者もあることから、なかなかフツーの人がおいそれと参入できる業種ではないように思う。
インドでも私立探偵業は盛んらしい。国内のメジャーな観光地や保養地では、出張を口実に愛人とお忍びの道中のビジネスマン、親に内緒でボーイフレンドと旅行にやってきた令嬢などの行動を逐一、依頼者である妻や両親に報告するため、その道のプロたちが入れ替わり立ち代りやってきては張り込んでいる、という記事をシムラーで見たことがある。彼らの活動は国内に限らない。
GOOGLEなどでちょっと検索してみるだけで、ずいぶん沢山の探偵業者たちのウェブサイトが引っかかってくる。警察幹部出身、退役軍人、元CBIの専門官、この道十何年のベテランといった経験や知識を看板に、法人・個人双方の需要を掘り起こすべくアピールしている。それらのうちいくつかを見てみると、企業相手の主な仕事としては、個人の身元・経歴についての裏づけ、取引先や合弁相手に関するもの、商標権、偽商品などについての調査、裁判にかかる資料や証拠等の収集、企業スパイ対策、要人警護などがある。個人向けのものとしては、やはり配偶者や婚約者の素行調査、離婚訴訟対策、金銭トラブルや脅迫などへの対応、失踪者探しといった事柄が挙げられている。
数ある業者のうちのいくつかは、国外にも及ぶサービスを売りにしている。先述のようにいまや国境を越えた仕事の依頼も決して珍しくないようだ。留学中の息子や娘、単身赴任中の主人、自分の子供の花嫁・花婿候補者であるNRIの子弟の素行調査まで扱う業者もある。すると東京の西葛西を中心に増え続けるインド人在住者を対象にした調査依頼なんていう事例があってもおかしくない。コトバの壁があり、いかにも外国人然としていると動きにくそうなこともあり、インドの探偵たちは日本の同業者とタイアップして水面下で動いていたりするのだろうか。
実際には地味かつ手間ヒマのかかる大変な仕事だろうし、高い報酬と引き換えにリスクも大きかったりするのだろうが、何しろ私たちが知ることのない『秘密』を扱い、危険で怪しい匂いがする仕事。彼らは何をやっているのか、どうやって仕事をしているのか、なかなか気になるところだ。もとよりボリウッドの映画の題材にでもなりそうな世界である。カッコイイ探偵たちの華やかな活躍ぶりを描いた作品が話題になる日も近いのかもしれない。

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