ちょっとインド的な眺め

構造物の佇まいや形はまったくインド的ではないが、ホアヒンの公の歩道に堂々とスピリットハウスが往来を遮断する形で存在していた。

本来は家屋なり社屋なりの良い方角、良い場所にこれを建てて「入魂式」みたいなのを執り行うわけだけれども、これはいかがなものか。

インドでは樹木に祠が出来て神性を帯びてくると、そこにコンクリの基壇が出来て、基壇に隣接して小さなお寺が出来たりして、そこまで来ると車道に大きくはみ出たりするようになってくる。当然、そういう構造物は危険で、事情をよく知らないドライバーが見通しのよくない時間帯に突っ込んでしまうような事故も起きる。

そんなことがニュースで流れて批判されると、行政がブルドーザーを仕立てて壊しに来ることもあるが、すでに事実上のお寺化したその施設やプージャーリー(祭司)から大きな抵抗が起きるなど、いろいろ面倒くさいことになるので、見ぬふりして放置しておきたいというのが本音だろう。

たぶんタイのこういうのもそのような具合ではないかと想像する。こうした公共スペースでの違法建築について処分を下すようなお役所の担当部署で、縁起物だし、壊して何か祟るとか、精霊は祟らなかったみたいでも、なんか気持ちが良くないし、まあ先送りしましょうとか、ボスも私も来年くらいには異動となりそうだし、判断は後の人たちに任せましょうとか、そんなこんなもありそうだ。

コロナの影響で閑散としたホアヒン

ホアヒンのビーチ界隈は閑散としているというよりも空っぽな感じで、締めたきりになっていたり、中が何も無くなっている店もかなりあった。

良い立地の大きな商業施設が廃墟になっているのも哀しい眺め。いかにも「コロナ禍でやられた」という印象を受ける。

観光業はこんなとき一番影響を受けやすいが、それがまた大都市圏ではなく行楽地にあればなおさらのことだろう。

ここはカシミーリーの店だったらしい。インド・ネパールそして東南アジアにもよくあるあの手の店だ。

1980年代終わりに始まったカシミールの動乱時期、カシミールから手工芸製品等を商う人たちのエクソダスはインド全土、ネパール、そしてタイその他の東南アジアの国々にも広がった。

自身や親族、ひいては同門の人々や手工芸製品を生産する人たちまで、郷里の期待を背負って各地に手を広げていったのが彼ら。

比較的大きな店舗であったようで、割とうまくいっていたがゆえのことではないかと想像するが、コロナ禍でお客の行き来が絶えるとアウト、だったのだろう。

こうしたカシミーリーの中には90年代のネパールの内戦で商いがダメになり、インドの他の地域、タイなどに渡った人たちもあった。

観光業というのは、様々な時流に影響されやすく、そしてパンデミックのような災厄に対しては脆弱だ。

 

ホアヒンの宿

窓からの眺め

本日のお宿BAANPAK SAM ANONでは角部屋があてがわれた。二面に窓があり風の抜けがとても良く涼しいのでエアコンは必要なさそうなくらいだ。駅からごく近くて、ナイトマーケットがすぐそばであることもまた良い。

インド・パキスタンでもよくある濡れたサンダルだと滑りが良さそう(笑)なタイルの床。これが清潔感あって良い。日本の場末のホテルのダニの巣になっていそうな、それを無理に消毒していそうなカーペット床とはずいぶんな違いだ。

これがインド・パキスタンであれば少しアップマーケットな宿なると大理石になったりもする。裸足での滑らかかつ地目の感じられる肌触り、石なのに一種の温かみもある質感、これがたまらず自宅の床を大理石貼りにすることを夢想。せっかくタイにまで来ていて関係ないのだが、やはりインドは素晴らしいと改めて思う。

今のところベストな旅行用リュック

ノースフェイスのこのリュック「FUSEBOX」、よく中高生、大学生たちが持っているが、使い勝手といい頑丈さといい素晴らしい。旅行用にこれまで幾多のリュックを使ってきたが、もはやこれを超えるものが出てこない限り、壊れたら同じものを買い直すつもりだ。

20リッターのものを旅行に使ったこともあるが、サイズ的にパンパンになってしまうため、やはり30リッターのものがちょうど良い。そのサイズであれば旅行に要るものをすべて入れてもまだ余裕があり、食物、飲物、酒類なども必要に応じて放り込むことができる。20リッターのだと、この部分の余白がない。

旅行荷物で一番かさばるのはガジェット類。スマホはライフラインなので紛失、破損などに備えて予備を持参するし、パワーバンクも2個、ケーブルにコンセントアダプター、ChromebookとACアダプター。そしてガジェット類ではないが、メガネを無くしたり壊したりしてしまうと身動き取れなくなるのでスペアメガネも。これらを持たなければ、あとは着替えと傘のみなので、冬服の要らない時期の旅行であればコンビニ袋ひとつで足りるのだが、なかなかそこまで割り切れない。

同じ30リッターでも、他のリュックとは明らかに収納力が違う。たぶんどこから見ても四角い形であるがゆえのことだろう。隅から隅まで無駄なく収納できるのだ。この「FUSEBOX」の大ヒットのおかげで他社からも似たようなモデルがたくさん出てきて、「四角いリュック」が世の中のスタンダードのひとつになった。もっと以前から可能だったはずだが、この形で作るということ自体が「コロンブスの卵」だったのだろう。

リュックというものは大昔から人々に使われてきて、それら自体がすっかり完成された商品のように思われていたが、そんな中にも大きな改善の余地があるのだ、ということを世に知らしめたのがこの「FUSEBOX」であったと言える。そう、ちょっとしたアイデアがそれまでの「モノのありかた」を変えてしまうことがあるのは、デジタルの世界に限ったことではないようだ。

ホアヒンへ出発!

鉄道を楽しむには、空調のない窓を開け放った車両で音や匂いも感じながら移動するのが最良だが、ちょうど良い時間帯でネット予約できるのは「エアコン2等」の一択のみだった。連結している3車両すべてが同じクラスであるためだ。

まあ、それでも良い。車窓の風景を眺めつつ、通過したり停車したりする駅の佇まいや人々の様子を目にしながら進んで行くのは楽しい。バス移動では鉄道移動のような趣はない。やはり鉄道はそれ自体にエンターテイメントな要素がある。世の中に鉄ちゃんなる人たちがいる理由がちょっぴりわかる気がしないでもない。

ホアランポーン駅で買った弁当

ホアランポーン駅で買ったおばちゃんの店の弁当を食べて満足していたら、車内でこういうものを配られた。タイのエアコンクラスは食事付きとは知らなかった。加熱済みの真空パックのご飯、レトルトカレー2種、クリームサンドにバナナチップス・・・。

車内で配られた弁当!

定刻より30分遅れで着いたフアヒンの鉄道駅は見事であった。駅舎自体がそうだが、王室専用待合室も素敵だ。王室の御用車両だったものらしい。今は使われていないもののようだが、チットラーダー宮殿からホアヒンに直行していたという車両がピカピカに磨き上げた状態で駅前に展示されている。

遠からず駅舎が右向こうの建物に移転するとのこと。

王族のチトラダー宮殿からホアヒンへの移動に利用された車両