サルマーン・クルシード

国民会議派の重鎮のひとり、世俗派を代表するムスリムの国会議員で、著述家としても広く知られるサルマーン・クルシードのナイニタルにある屋敷が放火される事件が起き、ネットで拡散されたその様子がインドのニュース番組でも取り上げられていた。このようなことが起きた原因は先月リリースされた彼による著作が原因らしい。

Four arrested for vandalism at Salman Khurshid’s house in Nainital (INDIA TODAY)

1992年のバーブリー・マスジッド破壊事件に至るまでの道筋とその後の展開を回想したもので、この事件については立場によっていろいろな捉え方があるが、世俗国家インドからサフラン勢力台頭へと転換した分水嶺のような事件であった。これを境にインドの国是と常識が一転したと言える。それまでのインド中央政界は「中道左派vs左派」の対立軸であったものが、「ヒンドゥー右翼vs中道+左派」に移行してしまったからだ。

穏健かつ良識ある世俗派のベテラン政治家がこれをどのように総括しているか知りたいので、キンドル版を購入してみることにした。

書名:Sunrise over Ayodhya Hardcover – 25 October 2021

著者:Salman Khurshid

ISBN-10 ‏ : ‎ 0670096148

ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0670096145

インドのカレンダーアートから見る女性観

今から21年前に「インドのカレンダーアート 女神からピンナップへ」福岡アジア美術館でという企画展が開催されたときの展覧会図録。

80ページほどのコンテンツには、「妻として」「豊穣の花嫁として」「母の愛」「危険な母神、保護する母神」「恋人」「妖婦」等々、インドにおける女性像について、様々な側面からカレンダーアートの絵とともに考察がなされており興味深い。

内容は図柄も文章もかなり古くなっており、今の50代以上の世代のインド人たちの感覚で著されたものであるが、それは即ちインドの伝統的な女性観を象徴したものであると言える。

最近、福岡アジア美術館を見学した際に購入したのだが、同美術館を運営する福岡市文化芸術振興財団のウェブサイト上のオンラインショップでも販売されており、ご興味のある方にはお勧めしたい。

Kindle端末買い替え

日本のアマゾン用にKindle Paperwhite(左)、インドのアマゾン用に9年前に購入したKindleを使用していたが、あまりに動作が緩慢になったので注文したKindleの一番安いモデル(右)が届いた。

前者は画面部分と縁部分の段差がなく、一枚のフラットなガラススクリーンで仕上げてあるのに対して、後者は画面の部分のみガラスのため段差がある。そのため操作感、ページめくり感は前者のほうが勝るとともに、画面の見た質感が実際の紙のごとく自然な風になっているとともに、黒地に白文字で表示する「ダークモード」も選択できるようになっている。しかし反応速度もストレージサイズも変わらないため、安い左のほうで充分な気がする。

日本アマゾンとインドアマゾンでそれぞれ別の端末を使っているのは、日米のアマゾンはKindleアカウントを結合できるのに対して、日印のそれはできないからだ。そのため専用の端末を用意する必要がある。

インドアマゾンで発行されたKindle書籍のうち、日本アマゾンでも購入できるものはとても少なく、価格も高くなる。ときには数倍にもなる。しかし不思議なのは、ときにしてその逆のケースもあることだ。日本アマゾン用に使用している左の端末で表示しているヒンディー語書籍がそんな例外だった。たまにそういうことがある。

インド訪問時には、いつも帰国前に書籍漁りをするのが儀式みたいになっていたが、Kindleで購入できる書籍であれば、それで購入するに越したことはない。送料はかからないし、あるいは重たい思いをして運んでくる必要もない。もちろん紙の書籍ならではの良さを否定はしないが、これを日本まで移動させるための手間とコストを考えると、やはり電子書籍はありがたい。ただしどんな本でも電子で入手できるわけではなく、紙媒体でしか出ていない興味深い本が多いのもインド。

それでもやはりコロナ禍にあって、電子書籍はなおさらのことありがたい。ウェブのやインドの電子版の週刊誌などに出ている書評で見かけた作品を、インドアマゾンで即座に購入できるからだ。まさにKindleさまさまである。

BIHAR DIARIES

何年も前に購入して放置していた「ビハール・ダイアリー」。著者であるアミット・ローダーという名のIPS(州警察採用ではなく国家レベルで採用のエリート警官)がSP(日本の警察で言えば警視あたりか?)としてビハール州に勤務していた頃の大捕物劇。ヤクザものノンフィクションの第一人者、S. フセイン・ザイディーが関わる作品だけあり、スピード感とスリル溢れる作品だ。

実話から成るこのストーリーでは、田舎に配属されたやり手警官の主人公が、着任してみると、住む場所すら用意されていないことにで戸惑いながらも、歳上が多い部下たちを鼓舞しながら、大物ヤクザを追い詰めてついに逮捕に至るまでを活写。

通話の傍受で操作網を狭めていき、ホシの居所を特定して一気に襲撃をかける。そこに至るまでは、警察の身内に標的のヤクザとの内通者がいたり、近隣警察署のライバル関係にあるSPから横槍が入ったり、政治家から圧力がかかったり、犯罪一味から命を狙われたりと、日々なかなか大変。

しかし毎度のことながら、こうした犯罪ものを読むと、気分がドヨ〜ンと淀むのは致し方ない。

たまに読む程度におさめておくのが良い。

 

書 名:BIHAR DIARIES

著 者:AMIT LODHA

出版社:PENGUIN BOOKS

ISBN:978-0-143-44435-0

サンスクリット語による新聞

インドには、古語のサンスクリット語による新聞が1紙だけある。「スダルマー」というのがそれで、2年ほど前に経営難が伝えられていたが、その後どうなったのだろうか。

それにしても、「サンスクリットで新聞を読む」というのはどういう人かといえば、ちょっとよくわからない。サンスクリットに通じた「パンディット」であれば、聖典の類はそれですらすら読んだりするのだろうが、日々世俗のことについてサンスクリットで書かれたものを読む姿は想像しにくい。よほどの古典マニアか国粋主義者の中でも学者肌タイプか?とも想像するのだが、相当な変わり者だろう。そんなわけだから売上が伸びるはずもない。

それでも、こうした商業メディアが存在するという点からも、インドという国の底なしの深みと奥行きへの畏敬の念を禁じ得ない。

World’s only Sanskrit newspaper Sudharma struggles to survive in its golden jubilee year (TIMESNOWNEWS.COM)