エジプトはナイルの賜物。新首都はカイロとスエズの中間点。

かつてどこの国でも大きな交易都市=大都会は水際に造られ、「都心」はその水際、そこから弧を描くように郊外へ広がるものであった。水運・そして生活用水の確保こそが都市の生命線であったがゆえのこと。これはインドに限らず世界中で同じだ。

デリー、アーグラー、ラーホール、アーメダーバード、バトナー等々、いずれもこうした形で築かれた街であるし、かつては湖であった時代もあったとされる盆地内にあるカトマンズもこうした利に恵まれている。あるいは水運ではなく陸運のみで他の地域と繋がるジャイプルやボーパールにしても、大きな湖等による水資源あってこその市街地造営であった。

とりわけ大航海時代を経て欧州列強がアジア等に築いた植民地の都市は、まず例外なく河港あるいは海港に面しており、その港に近い部分に港湾関連施設とともに行政に係る大きな建物が集まる官庁街を形成した。ムンバイしかり、コールカーター、チェンナイ、ヤンゴン、コロンボ等々、どの街も同様だ。

そんな状況に変化を生んだのは鉄道、道路などの交通ネットワーク、遠隔地へも水資源を分配する水道の他、電気・ガス等のエネルギーの普及、通信網の整備等を含めた今に通じる基礎的なインフラの普及。これによって本来は水際にしか拡張しえなかった市街地がより周辺へと広がり、水が手に入らず利用できなかった土地でも人が住んで商工活動を行うことができるようになった。

そんなわけで、ミャンマーのネーピードー、エジプトの新首都(名前は未定か?)などのように、かつては街を築くことすら無理だった場所に、よりによって巨大な首都を造るということが可能になったわけだ。

そうは行っても平穏無事で成長が続く時代だけとは限らないので、立地・環境面からハードルの高い場所への首都移転というのはいかがなものなのだろうか。もちろんそういう場所が選択された背景には、解決しなくてはならない入り組んだ利権がなく、開発の青写真を描きやすいという前提があってのことなのだろう。今回はインドに係る話ではないのが恐縮ではあるのだが。

エジプトの新首都建設、莫大な費用をまかなう「砂漠の錬金術」(asahi.com)

インドメディアにおけるパキスタン関係者の討論番組

「AAJTAK」の討論番組から

インドのニュースプログラムAAJTAKにおける討論番組。普段はインド国内の政局や隣国等との国際関係などを巡る議論が国内各界や関係者等を招いて行われる。近年はコロナ禍もあり、出演者をスタジオに集めてではなく、オンラインでの開催となっている。

そうなってくると、ヒンディー語プログラムなので出演者はヒンディー語話者のみという縛りはあっても、もはや国境はあってないようなものなので、トピックによっては、ときにはインド国外からの参加者もあった。ウクライナ情勢を巡ってはアメリカの国務省のインド系職員の参加もあったりした。この日は混迷するパキスタン政局を巡っての議論で、パキスタンの現在の与党、パキスタン正義運動や野党のムスリムリーグなどの関係者を招聘しての開催だった。

同時に複数の者が大声で発言を続け、司会者が割って入ってもなかなか収まらないことかしばしばあるのはインドもパキスタンも同じだが、途中、パキスタンの退役軍人でもある軍事専門家が、あまりに横柄な態度で司会者や他のパキスタンからの出演者に悪態をつくため、しびれを切らした司会者が厳しい言葉で退席を命じられ、この人物が画面から姿が消えるという、普段はまず見られないシーンまであったが、そこまでヒートアップするほど盛況であったとも言える。

インドの討論番組で、インド人キャスターの司会のもと、パキスタンの人たち、つまり当局の関係者、軍事専門家、ジャーナリスト等々が議論を交わす。インド側のお膳立てで、パキスタン人関係者たちの喧々諤々の討論がインドのニュース番組上で進行し、それをインド人聴衆が観るというような企画をいつも簡単に実現できるようになった。ある意味、歴史的な出来事といっても良い。

こうしたものは初めての試みというわけではなく、昨年夏にはターリバーンの手中に陥落したアフガニスタンに関して、インド及びパキスタン双方の与党関係者、外交や軍事の識者等を交えての討論会がこのAAJTAKで実施されていた。

それはともかく、従前は隣国からのニュースをそのまま流用するか、あるいはインド側のジャーナリストや識者が論評する内容を伝えるのがパキスタンに関する報道のありかたてあったが、このような形での取り上げ方はとても新鮮だ。まさにコロナ禍のポジティブな面がこれで、たぶん数年程度ではなし得なかったことが、一気に進んだ感じだ。それを私のような第三国の野次馬が見物できるのだから、これまたありがたい。

蛇足ながら、デーヴァナーガリー文字で書かれるヒンディー語とペルシャ文字で書かれるウルドゥー語は、まったく別の言葉だと思っている人もいるようだが、このようにヒンディー語のプログラムにウルドゥー語話者が母語で出演して、ヒンディー語による司会のもとで、ごく当たり前に討論を展開し、それをヒンディー語話者である視聴者がこれまた当たり前に聴くことが出来るというのが、ヒンディー語とウルドゥー語の関係性でもある。

PARVAT MALA PLAN (山のネックレス計画)

2月1日、国会の予算審議中のインドで、モーディー首相が大胆な取り組みを打ち出した。これまで「SWATH BHARAT (CLEAN INDIA)」や「MAKE IN INDIA」等々、人々にわかりやすいキャンペーンを次々に繰り出してきたBJP政権。この「PARVAT MALA(山のネックレス)」については、人口流出が続くヒマラヤ山岳地域で、人々がよその土地に活路を求める必要なく、地元で安心して稼いで暮らしていけるように、地域間のコネクティヴィティーを向上させて経済発展に繋げるというもの。同時に国境地帯のセキュリティ強化も視野に入れている。具体的などのような施策がなされるのかについては、今後のお手並み拝見ということになるが、2022-2023年度予算のひとつの柱となるものだけに、大きな国家プロジェクトとして発進していくことは間違いない。

Budget 2022 | PM Modi Announces ‘Parvat Mala’ Plan For Hilly Regions On India’s Border To Boost Security PM Modi said that the ‘Parvat Mala’ scheme (REPUBLICWORLD.COM)

そのプランの中で実施される事業のひとつには、以下リンク先のようロープウェイで地域間を結ぶということも含まれているようだ。

たしかに山間をバスで走っていても、直線では20KMくらいでも道路は山岳地で迂回を重ねながら続いているため、ずいぶん時間がかかるもの。あるいは山でトレッキングしていても渓谷の反対側斜面に張り付いている「目の前に見える村」は、川を渡る手段がなければ別世界みたいなものだ。

平地と違って、そうした障害物で幾重にも遮られている地域であるがゆえに、山のこちらと向こうでは違う文化が育まれていたり、極端な場合暮らしている人種まで異なったりする。まさに尾根が世界を遮断しているのだ。

そんなヒマラヤの複雑な地形は、インドの多様性を支える要素のひとつでもあったわけだが、国民の統合であったり、教育や就労等の機会の公平性であったりという観点からは、やはり障害であって、こうした山岳地域でもコネクティヴィティーの改善については、英国時代も独立後も政府が不断の努力で道路を開通させたり、トンネルを掘ったりと試みてきたわけだが、敢えてモーディー政権がこのように目玉として取り上げるからには、大胆かつ具体的な青写真が、かなり確度の高い勝算のもとで描かれているのだろう。

BJP政権は「やる」といったら大胆にやる。そしてしつこいほどに推し進めていく。国民から人気が高いのはモーディー自身への高い評価もあるが、BJP政権そのものが国民会議派その他よりもよほど実行力があるからだろう。個人的にはモーディー首相、そしてヒンドゥー至上主義のBJPについては、いろいろ思うところはあるのだが、肝心のガバナンスという面では他党がこれに取って替わることができるとは思えない。もし私がインド国民だったら、あるいはどこかの州民だったら、そんなことからBJPに投票するのだろう。

インドのニュース雑誌のサーベイで見たが、今月から来月にかけて州議会選挙が実施されるUP州で、前回2017年の選挙のときにはムスリム票の大半は社会党、そして国民会議派にも行ったのだが、それでも約10%のムスリムはBJPに投票していたのだ。今回同様にムスリムの候補を立てないどころか、明らかにムスリムを敵視しているBJPなのに。

Ropeway connectivity under Centre’s ‘Parvat Mala’ plan brings hope in poll-bound Uttarakhand, may be a game changer in the hills (Firstpost)

また、「PARVAT MALA PLAN」の中で推し進めていくことになるのだろうが、「VIBRANT VILLAGE PROGRAM」というのも表明している。モーディーがグジャラート州首相だった時代の「VIBRANT GUJARAT」で内外からの投資を積極的に誘致して州の経済成長に大きく貢献したことを彷彿させるが、北部国境地域の村々を振興させようというもの。

Budget 2022: Transformation Roadmap for Rural India (INVEST INDIA)

そのいっぽうで、現在選挙戦が進行中のUP州の田舎では、与野党の間で何十年も変わらず「BIJLI, PANI (電気と水)」(の供給、安定的な供給)の約束が繰り返されるという、昔ながらの有様が続いているのが不思議といえば不思議である。

野犬さえいなければ

野犬集団さえいなければ、インド・パキスタンの小路の散歩は楽しいのだが。

この動画にはたまたま映り込んでいないが、かしこに「犬相のわるい」奴らがたむろしてるんはず。日中はまだいいのだが、日没後はかなり厄介。

最近はカメラを持たずに「Huaweiライカ(笑)」で済ませているため、本当は要らないにもかかわらず、万一の犬対策としてコンパクトな一脚は持ち歩いている。

こちらが棒状のものを手にしていると、「ソーシャルディスタンス」を取ったり、「見て見ぬフリ」をするのだから、野犬は実に卑劣な生き物だ。それでもたまに吠えかかってくるのはいるけど。私が犬嫌いなのも察知しいてるわけで。どうにも苦手なのは野犬である。

Gali Surjan Singh in walled city of Lahore, January 2022 (facebook)

Coronavirus LIVE

現在「第3波」に見舞われているインド。以下のURLには同国におけるコロナ関係の記事が順次アップデートされているが、1月22日18:19(IST)時点では、直近の24時間で20万人近くの人々が感染したことが伝えられている。インドにおけるデルタ株による「第2波」では、1日で40万人を超える感染者数を記録していたインドだが、今回はこれを軽く超えることになるかもしれない勢いだ。

昨年末までは、国内でオミクロン株による感染は伝えられていたものの、同国のメディアは遠からず第3波が来るであろうことを警告しつつも、「現在までのところ大きな感染の波が起きる予兆はない」としていたのだが、年が明けると一気に拡大している。このあたりは日本のそれと似ているとも言える。デルタ株の3倍とも言われる強力な感染力と、感染してから概ね3日半くらいで発症するという潜伏期間の短さ、加えて感染者のうち3割程度の人たちは無症状のままで気付かないまま通常通りに仕事をしたり、生活したりしているため、知らずに感染を広めてしまうということも背景にあるようだ。

デルタの頃に較べて救いと言えるのは、重症化する割合が低いとされることで、まさにこれがゆえに、インドでもそうだが、日本でもこれほどの速度で爆発的に広がっている割には、社会にあまり緊張が感じられないのかもしれない。

欧州では、今後6~8週間ほどで、域内の人口の半数程度が感染する見込みとも伝えられている。ブースター接種の効果と併せて、膨大な人口が免疫を獲得することとなり、同時進行で治療薬も普及していくことから、まず米国やEUなどが新型コロナへの感染症指定をインフルエンザ同様のレベルに落とし、その周辺地域や日本その他の国々も追従することにより、それぞれの国・地域における新型コロナ対応策の緩和、国境を越えた活発な往来の再開へと繋がり、コロナ禍の収束へと向かうことだろう。

もちろん新型コロナウイルスが雲霧散消することはないので、「終息」ではなく「収束」で、ときおり地域的に流行が拡大したり、落ち着いたりを繰り返しながら、ちょうど季節性のインフルエンザがそうであるように、「いつものこと」として、今後の私たちは対峙していくことになるのだろうか。

Coronavirus LIVE: Data suggests reduced risk of hospitalisation for Omicron compared to Delta, says health ministry (INDIA TODAY)