ジャイサルメールに怪盗出現

昨日の午前零時過ぎ、ジャイサルメールのステート・バンク・オブ・インディアの支店にて、深夜過ぎに1.5千万ルピーが奪われたとのこと。

Robbers tunnel into Jaisalmer bank, steal
Rs 1.50 cr
(The Times of India)

Robbers tunnel their way into a bank in
Jaisalmer
(NDTV)

犯行グループは、地下に掘ったトンネルから同銀行の金庫に侵入して金品を奪ったとされるが、電動工具を用いて、事件に先立つ2週間から20日ほどかけてこれを完成させたと見られる。こうした大胆な動きについて、銀行関係者や周囲の住民がなぜ何も気が付かなかったのかは不明。

銀行内の監視カメラには、懐中電灯を持って侵入してくる犯人たちの姿を捕えているものの建物内が暗かったため、風貌等はまったく確認できないようだ。

まるで映画のような大胆な犯行、ロケーションもこれまたタール砂漠のロマンチックな城塞都市ということもあり、不謹慎ながら「おぉ、カッコいい!」などと思ってしまう。決して犯行を称えるわけではないのだが。

果たしてこの怪盗たちの正体や如何に?

Kasab: The Face of 26/11

Kasab : The face of 26/11

パーキスターンのパンジャーブ州出身のアジマル・カサーブといえば、同国の悪名高き過激派組織ラシュカレ・トイバにより、2008年11月28日にムンバイーで発生した大規模なテロ事件の実行犯の中で警察に拘束された唯一のメンバーとして知られている。

彼の生い立ち、過激派との接触と組織への加入、武闘訓練、ムンバイーへの潜入、彼が担ったムンバイーCST駅での銃乱射とそれに続く附近の病院での銃撃、市内での逃走と逮捕、警察による尋問と裁判の過程等々がつぶさに描写されたノンフィクション作品が、この『Kasab: The Face of 26/11』と題する一冊である。著者はムンバイーを拠点に活動するインド人ジャーナリスト、ロメル・ロドリゲス。

ファリドコートという村で生まれ、10代で家を出てからラーホールでケータリング・サービスの職場で働いて自活する、どこにでもいる普通の少年であったカサーブだが、単調な日々に飽き足らず、知り合った仲間たちと「もっと割のいい仕事を」と窃盗を繰り返すようになっていった。

反社会的な生活に浸かったカサーブは、やがて武器に興味を抱くようになり、銃器類の訓練を受けられるからという理由で過激派組織と接触するようになっていく。そうした反抗期の只中にあるような年代を巧みに扱うことに長けた組織の中で、各種のトレーニングを積んだテロリストとして養成されていく。カサーブ本人は、まさに自分の居場所を見つけたと認識していたのだろう。

訓練地から訓練地への移動の間、あるいは休暇で帰省する際などに逃亡して姿を消すメンバーも少なくなかったようだ。それでもカサーブは脱落することなく組織の命令に従っていった。

やがて組織は、他の選抜されたメンバーとともに、カサーブをスィンド州に送り、洋上での訓練とともに『ミッション』遂行のための最終訓練を施して、海路ムンバイーへと送り出し、中途でハイジャックしたインドの漁船、クベール号でムンバイーへの上陸を果たす。

犯行グループのリーダーであったイスマイルとともにタクシーでムンバイーCST駅に乗りつけるまでの間、彼は車内に時限爆弾を仕掛ける。「釣りは要らない」と手渡された大きな額面の紙幣に喜んだ運転手は、駅の駐車場から発車して市内を走行する間に車体が爆破して帰らぬ人となる。

タージマハル・ホテル、オベロイホテル、ユダヤ教関係施設のナリーマン・ハウスに乗りつけた他の犯行メンバーたちも、利用したタクシーに同様の手口で爆弾を仕掛けて、事件の「同時多発性」を高めることにより、警察の対応の攪乱を図っていたようだ。

カサーブとイスマイルの犯行目標となったムンバイーCST駅や近隣の病院にしても、この事件における他の実行犯の攻撃目標となった高級ホテル等にしても、現場で誰彼構わず銃弾の雨を降らせて多大な死傷者を出す残忍極まりないものであった。

この作品では、カサーブの家族や交友関係、パーキスターンの過激派組織内の人間模様、彼らの犯行の犠牲となった市民や彼らと果敢に対峙して殉職したインドの治安組織の職員等々の人々の生活背景にも踏み込み、誰もが忘れもしない『26 Nov.』とそこに至るまでの道のりの多角的な検証がなされている。

こうした大規模なテロ事件の実行犯が生け捕りにされること自体が異例であったが、まさにそれがゆえに明らかになった部分もまた多い。

あまりに大きな事件を引き起こした犯人たちのひとりであるカサーブに同情の余地はまったくないが、裁かれるべきは過激派組織のツールのひとつに過ぎないカサーブ自身だけではなく、その目的のために彼とその仲間たちを訓練し、犯行を逐一指導してきた黒幕の面々でもあるのだが、そこにはインドの司法は及ばない。

こうした集団の存在を許し、排除どころか規制すらできないパーキスターン政府の機能不全ぶりには、怒りとともに限りない恐怖感を抱かずにはいられない。隣国にそうした行政・統治がある限り、インド側の市民が隣国に信頼を置くことはあり得ず、インドの情報機関もまた、こうした集団の所在や訓練地などについて精度の高い確信を抱きつつも、自国の権限が及ばないところにあるだけに、手出しが出来ないことをもどかしく思うのも無理はない。

分離独立以来続くカシミール問題はともかく、パーキスターンにテロの実行集団を抱える過激派組織があり、これらの活動を同国の政府が野放しにしている限り、印パ間での善隣外交などあり得るはずもない。

 

書名:Kasab: The Face of 26/11

著者:Rommel Rodrigues

出版社:Penguin Books

発行年:2010年

ISBN-10: 0143415476

ISBN-13: 978-0143415473

 

ブータン ウォンディ・ゾンの大火

非常に残念なニュースである。

ブータン中部に位置する374年の歴史を持ち、同国の重要な寺院のひとつに数えられるウォンディ・ゾンが、6月24日午後4時ごろ発生した火事により全焼してしまった。現在までのところ出火の原因は不明であるとのこと。

この火事に関する記事と動画は、BBS (Bhutan Broadcasting Service)がウェブサイトにて閲覧することができる。

Wangduephodrang Dzong completely gutted (BBS)

 

インドヴィザのオンライン申請

今年4月からインドヴィザのオンライン申請が開始されている。

オンラインビザ申請について(インドビザ申請センター東京)

これにより、申請手続きに出向く手間が省けるのかと思いきや、実はそうではない。

ウェブ上で必要事項を入力、申請日を確定してからプリントアウト、その申請日に窓口まで出かけてパスポートその他必要物とともに提出する必要がある。受け取りに出向く手間と合わせて、申請者側にとっては利するものは特にない。ウェブ上で確定した申請日は、基本的に変更できないようなので、かえって面倒になったといえる。

『オンライン化したといっても、ちっとも便利ではないじゃないか!』と思うかもしれないが、もともと申請者の便宜を図るためのものではないのだろう。従前の紙媒体による申請と異なり、申請者の情報を効率的にデータベース化して、出入国管理に役立てようという、当局の便宜を念頭に置いたものであることは明らかだ。

これによって、申請者個々のパスポート番号や発行日等が変更となっても、はてまた二重国籍を有する個人が複数のパスポートで出入国していたとしても、特定の個人の申請・出入国状況を把握することが容易になることから、テロ等の治安対策はもとより、不法入国等、当局側にとって好ましくない人物でないかどうかをスクリーニングすることが可能となる・・・のだと思う。

オンライン申請ページを開き、先に進んでみると、申請者名入力の部分のすぐ下の「性別」ところには、male,female以外に「transgender」という区分があるのにはちょっとびっくりさせられる。

それはともかく、この措置が開始されたばかりであるため、システムそのものに多少の問題があったり、申請センターのウェブサイトでの説明が足りない部分もあったりするのか、申請に出向いたもののオンラインでの入力内容に不備があるとされて、再度出向かなくてはならなくなったという話も耳にする。

常々感じていることだが、インドにとって通常は特に問題のない日本その他国籍の人々について、こうした手続きの簡素化を進めてもらえないものだろうか。短期の滞在の場合、アライバルヴィザという措置はあるのだが、空港での手続きはスムースとはいえず、どうにかならないものかと思う。

 

オリッサ州 マオイストとの交渉難航

3月14日、オリッサ州内陸部の部族地域を訪れるツアーの一行が、同州のカンダマル地区で拉致される事件が発生した。このツアーを催行していたのは、同州プリーにあるORISSA ADVENTUROUS TREKKINGという旅行代理店で、連れ去られたのはその経営者でガイドでもあるイタリア人のパオロ氏、ツアー参加者のイタリア人コランジェロ氏、そしてツアーに同行したインド人スタッフ2名を含む計4名。インド人スタッフは3月16日に、イタリア人旅行者のコランジェロ氏は3月25日に解放されたが、依然としてパオロ氏は監禁状態にある。

彼らを誘拐したマオイストたちの要求は、投獄されているマオイスト幹部や活動家たちの釈放。これに関して、先日マオイストによるオリッサ州議会議員ヒカーカー氏の誘拐事件も発生しており、治安対策と外交上の配慮等の板挟みもあり、今なお交渉は難航している。駐インドのイタリア外交官も現在オリッサ州に滞在中で、マオイストとの交渉と情報収集に当たっている。

これまで、インドのマオイストたちは活動地域で政府関係者の誘拐、治安当局関係者たちや交通網への攻撃、市民の殺害その他を繰り返してきているが、外国人がターゲットとなったのは初めてのケースだ。しかしイタリア人と地元州議会議員1名ずつを人質とすることにより、現在までのところオリッサ政府がマオイスト関係者31名の釈放の提示を引き出しつつも、まだ合意に至っていないところからみて、より高い影響力を行使する手段として、外国人を誘拐する事件が起きる可能性は決して低くない。

同様に、オリッサ州以外でもマオイストの活動が盛んなアーンドラ・プラデーシュ、ジャールカンド、チャッティースガル、西ベンガル、ビハール、マハーラーシュトラといった各州においても、こうした挙に出ないとも限らない。

マオイスト側は、州政府当局との交渉期限を4月10日までとしており、要求が満たされない場合は「extreme steps」を取ると表明している。先述のとおり、外国人がターゲットとなったのは初めてのケースだが、マオイストがこれまで同種の目的のために誘拐した相手を殺害したケースは多々あったことから、パオロ氏、ヒカーカー氏ともに今後の安否が大いに懸念されるところだ。

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