あっちでインド、こっちでもインド

11月15日(木)から20日(火)までの間、東京都杉並区で『日印交流年記念フェア』が開催される。区の所有する公共施設で開かれる小さなイベントのようだが、『日印交流年』事業の認定を受けて行なう行事らしい。
交流年・・・といっても何か具体的な背景があるわけでもなく、両国の友好と相互理解を旗印に政府が音頭を取っているだけのこと。それでも日印交流年の企画に関わっているミティラー博物館のサイトを覗いてみれば、古典音楽や舞踊など多彩な面々が来日して公演がなされていることがわかる。日本でインドの魅力を広めるため、おそらく一定の効果は上げているのであろうし、そうしたステージを見る機会が広く与えられることに意義があることは間違いない。
前述の東京都杉並区だけでなく、全国各地で交流年にちなんだイベントが開催されているようだ。検索サイトで『日印交流年』に加えて自治体名を入れてみると、宮城県愛知県大阪府鹿児島県など、各地で開かれた催しにアクセスできる。
よく知らなかったのだが、あちこちでインドにちなんだイベントがいろいろ開かれているようだ。これで年が明けたら何も無し・・・ではなく、これを機会にインドに対する関心が高まり、いつもどこかで何かしらこうした催しが開かれているのが当たり前といったムードになれば喜ばしい。

ディーワーリーとラクシュミー

すでに多くのメディアで取り上げられているが、ラクシュミーという名の少女の話である。ビハール州のアラーリヤー地区で父シャンブーと母プーナムの間に、4本ずつの手足、結合した2対の脊髄、二人分の神経系統、ふたつの胃などを持って生まれた2歳の少女、ラクシュミー・タートマー。可愛らしく利発そうな表情をしたこの幼児は、これまで立ち上がることも歩くこともできなかった。
このような姿で生まれてきたのは、彼女が結合双生児であったためだが、本来この世に生を受けていたはずのもう一人は未発達のまま、彼女に身体の一部だけを残すことになってしまった。
生まれたときにその姿からラクシュミーと名づけられた彼女のことを、村ではまさにそのラクシュミー女神の化身と言う者があるいっぽう、奇異の目で見られるのみならず、見世物小屋の一座から身売りを持ちかけられるなどといったトラブルもあり、人目を避けるようにして暮らしてきた。
それでもまだ幸運が残されていたのは、彼女の存在がバンガロールのスパルシュ病院関係者の知るところとなったことに加えて、彼女の身体の組織がほぼ左右対称であること、本来彼女の身体であるべき部分に、当人に必要な臓器等が揃っていたことなどがあるという。
手術にかかる費用は病院持ちとのことだ。おそらく同病院の先端医療技術を世間に知らしめるためという目的もあるにせよ、この手術の実現は関係者たちの温かい善意と熱意あってのことであると信じることにしよう。家族に伴われてバンガロールにやってきたラクシュミーに対し、11月6日に36名の医師たちからなるチームによって、今月6日の朝8時半から翌7日の朝10時まで、実に丸一日以上に及ぶ大手術が行われた。
手術は無事成功、現在ラクシュミーは集中治療室に収容されているが経過は良好とのこと。退院後は普通の生活を営むことができる見込みだという。
おりしも世間はディーワーリーのお祝いの時期。ラクシュミー女神に因んで名づけられたこの少女とその家族に対し、同女神からの手厚いご加護がありますように!
Lakshmi stable after marathon surgery (Deccan Herald)

良き祝祭を!楽しい休暇を!

ディーワーリー期間中のインドについて、日本の外務省による注意喚起が出ているのだとか。
思えば2年前、ディーワーリー前の買い物で賑わう商業地域で連続爆破事件が起きたのはまだ記憶に新しいところだ。人々の行き来が多く混雑に紛れて事件を起こしやすかったり、そういう時期だからこそ政府や社会に与えるインパクトが大きかったりするなど、騒ぎを起こす側にもこうした祝祭シーズンをわざわざ選ぶ理由にもなるだろう。
『テロで何も変えられない』とはいうものの、人々の心に憎悪と猜疑心を植え付ける効果があることは間違いない。これを利用して広い浸透を画策する政治屋たちが、実像のよく見えない『敵』との対立を訴える。そして反撃と排除の標的を手の届くところに暮らす罪なき声なき人々へと巧妙にすり替える。テロという暴力の行使の結果、それを実行する者たちにとってどれほど利するものがあるのかどうかはさておき、間違いなく大きな損害を被るのはその標的となる市民たちだ。
せっかくの祝祭の季節、惨事のニュースなどではなく、各地のさまざまな楽しい話を耳にしたいものである。
Happy Diwali !!

登場 GR-DIGITAL II

GD-DIGITAL II
リコーのGR-DIGITALは発売以来2年間以上販売されるという、コンパクトデジタルカメラとしては異例の長寿モデルとなった。発売以来、デジタルカメラで唯一無二の28mm単焦点のこのモデルの人気はご存知のとおり。そのGR-DIGITAL今年10月には生産中止となり、どうやら次期モデルが投入されるだろうと聞いていたが、ついに10月30日に後継機GR DIGITAL IIがアナウンスされた。発売日予定日は11月22日だ。今まで同類のカメラは市場に出ておらず、ライバル不在のままで代を継ぐことになった。
前モデルと比較してびっくりするほど大きく変わったというわけではないようだ。むしろ『マイナーチェンジ』といってもいいかもしれない。昨年10月発売のPowershot G7の後継機として、今年9月から売り出されたG9のときもそうだったが、先代の外観、機能、操作性をほぼそのまま継承し、基本性能を若干向上させたうえでユーティリティー面での充実を図るといった手法は今や珍しくないようだ。おそらくデジタルカメラという商品自体がある程度の成熟期を迎えており、ごく短期間で飛躍的な発展を見ることは今後あまりないのかもしれない。しかし市場に投入される製品のサイクルは相変わらず短いので、現存機種が鮮度を失わないうちに何かしらの改良を施して改めてリリースする必要があるのだろう。

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雲の上の個室

Airbus A380
10月25日、世界に先駆けてシンガポール航空のシンガポール・シドニー間に就航した世界初総二階建てという超大型旅客機、エアバスA380。エコノミー・ビジネス・ファーストと3種類のクラスを用意する仕様の場合は定員555名である。ちなみにジャンボジェットの愛称で親しまれるボーイング747の場合、その最新型の747-8の3クラス仕様で定員467名。A380はその2割増といった具合になる。これが全席エコノミーのみの仕様ならば定員は840名とすることが可能という、これまでの常識を破る巨大機だ。
もちろんキャパシティを最大限利用して座席を詰め込むだけではなく、ゆとりあるスペースを生かしてデューティーフリーショップ、シャワー室の設置など、各航空会社のアイデア次第でいろんなサービスの提供が可能となる。じきに他の路線にも導入されるだろうし、今後続々納機されていくから他社の便でも利用されるようになってくるのだろう。国際線・国内線とも世界の注目を集めるホットな市場、インドの空にもやがて飛来することになるだろう。
そんなA380について、シンガポール航空から利用者に対して、こんなビックリなお達しが出たというニュースを目にした。
‘No sex, please,’ Singapore Airlines warns A380 passengers (CBC NEWS)
『え?禁止も何も、飛行機内でそんなことありえない!?』
通常のエコノミー席を思い描いてしまい訳がわからなかったのだが、同社が就航させたA380には、ビジネス、ファーストといった上級クラスよりも更に上のスイートクラスなる12の個室が用意されているのだということだ。シートを水平に倒せばフルサイズのベッドとなる。隣り合う個室をふたつ合併させることも可能。するとダブルベッドの部屋が出現するということだ。しかしながら壁が防音になっていないのもさることながら、部屋を仕切る壁は人の背丈くらいのところまでしかなく、天井部分がすっぽり開いている。だからそんなことがあると困る、ということらしい。同社のサイトでこのスイートクラスのキャビンの様子が動画でわかりやすく紹介されている。
飛行機は不特定多数の様々な乗客が利用するため、問題が発生する前に会社側が手を打ったということになるのだろうが、この下世話な話題づくりこそが最新鋭機の最上級クラスの広々とした贅沢な装備をアピールするにはもってこい、と同社の広報関係部署が打ち出した『広告』なのではないかと疑わずにはいられない。
そう遠くない将来、日印間の路線でこのA380を利用できる機会もあるかと思う。それでも腰を下ろすのはいつものエコノミー席で、目にするものは従来とほとんど変わらず、同じ機内にいながらも、快適なスイートクラスは『雲の上』なのかもしれない。