雲の上の個室

Airbus A380
10月25日、世界に先駆けてシンガポール航空のシンガポール・シドニー間に就航した世界初総二階建てという超大型旅客機、エアバスA380。エコノミー・ビジネス・ファーストと3種類のクラスを用意する仕様の場合は定員555名である。ちなみにジャンボジェットの愛称で親しまれるボーイング747の場合、その最新型の747-8の3クラス仕様で定員467名。A380はその2割増といった具合になる。これが全席エコノミーのみの仕様ならば定員は840名とすることが可能という、これまでの常識を破る巨大機だ。
もちろんキャパシティを最大限利用して座席を詰め込むだけではなく、ゆとりあるスペースを生かしてデューティーフリーショップ、シャワー室の設置など、各航空会社のアイデア次第でいろんなサービスの提供が可能となる。じきに他の路線にも導入されるだろうし、今後続々納機されていくから他社の便でも利用されるようになってくるのだろう。国際線・国内線とも世界の注目を集めるホットな市場、インドの空にもやがて飛来することになるだろう。
そんなA380について、シンガポール航空から利用者に対して、こんなビックリなお達しが出たというニュースを目にした。
‘No sex, please,’ Singapore Airlines warns A380 passengers (CBC NEWS)
『え?禁止も何も、飛行機内でそんなことありえない!?』
通常のエコノミー席を思い描いてしまい訳がわからなかったのだが、同社が就航させたA380には、ビジネス、ファーストといった上級クラスよりも更に上のスイートクラスなる12の個室が用意されているのだということだ。シートを水平に倒せばフルサイズのベッドとなる。隣り合う個室をふたつ合併させることも可能。するとダブルベッドの部屋が出現するということだ。しかしながら壁が防音になっていないのもさることながら、部屋を仕切る壁は人の背丈くらいのところまでしかなく、天井部分がすっぽり開いている。だからそんなことがあると困る、ということらしい。同社のサイトでこのスイートクラスのキャビンの様子が動画でわかりやすく紹介されている。
飛行機は不特定多数の様々な乗客が利用するため、問題が発生する前に会社側が手を打ったということになるのだろうが、この下世話な話題づくりこそが最新鋭機の最上級クラスの広々とした贅沢な装備をアピールするにはもってこい、と同社の広報関係部署が打ち出した『広告』なのではないかと疑わずにはいられない。
そう遠くない将来、日印間の路線でこのA380を利用できる機会もあるかと思う。それでも腰を下ろすのはいつものエコノミー席で、目にするものは従来とほとんど変わらず、同じ機内にいながらも、快適なスイートクラスは『雲の上』なのかもしれない。

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