プリペイドのモバイルインターネット接続

撮影した画像データのバックアップ、WiFi環境のあるところでのインターネット接続等々の目的で小型のラップトップパソコンを旅行先に持参する人は多い。  

私も同様で、いつも自宅からパソコンを持ち出している。自前の機器がありながらも、メール等のチェックはネットカフェで、というのも変な話なので、vodafone直営店でプリペイドのネット接続プランを購入してみた。   

現在までのところ、2Gによるサービスのみであるとのことで、通信速度は最大で256kbpsであるとのこと。まもなく3Gのサービスが導入されると、3mbpsの速度となるとのことだ。   

費用としては、インターネット接続に要するUSBスティックの購入代金(今後必要に応じて幾度でも再利用できる)として1558 Rs、SIMカード購入代金は62 Rs、プリペイドの通信費が98 Rsである。プリペイド代金は通信データ量2GBに達するか、利用開始日から30日間経過するまで有効だ。

USBスティックの中にSIMカードを挿入し、パソコンに接続して使用する。これは、3Gによるサービスが導入されてからも変わらず使用できる。しばらくモバイル通信が必要な時期のみ利用するといった具合でも、経済的な負担が少ないため、気楽にプリペイドプランを手に入れることができる。   

費用以外に、一時滞在の外国人の場合はパスポートの個人情報ページ、ヴィザと入国印のページのコピーの提出が求められる。

まずはUSBスティックをパソコンに差し込むと、自動的に通信用のソフトウェアのインストールが始まる。しばらくしてこれが完了してから、通信ソフト上に表示されている「connect」ボタンをクリックすると、インターネットに接続できる。 

ブロードバンド環境に慣れていると、やたらとスローに感じられる速度かもしれないが、従来のモバイルPCネット接続としてはこんなものだろう。 

都市部の同じ場所でも、時間帯によってはあまりに遅すぎてメールの送受信さえもできないことがあるいっぽう、深夜や早朝はほぼ最大限の速度が出ていると思われることもある。時間帯によるトラフィックの過多が如実に影響するところを見ると、通信インフラ自体の規模自体にまだまだ問題があるのだろう。 

最初に契約した州の外で使用するとローミング扱いになる。かといって契約したデータ通信容量上限や有効期間が変わったりするわけではないようだ。 

通信が非常に込み合う?夕方の一部の時間帯を除き、ほぼ普通に操作できた。スカイプも試してみて日本までかけてみたのだが、やはり通信速度が足りないため、通話不能というわけではないが、音質は実用レベルとはいえなかった。でも3Gサービスが開始されればスカイプをはじめとする通話ソフトも充分使えるだろう。 

旅行中くらいはネット環境から解放されてもいいのではないかとも思うのだが、普段当たり前にあるものが滞在先の部屋にないと非常に不便に感じてしまうのである。何か大事な連絡も来ているかもしれない。 

必要があればネットカフェに出向けばいいのだが、そのためだけに30分なり1時間なりを費やすのはもったいない気がするのだ。自室でテレビ見ながら、あるいは部屋に運ばせた料理を食べながら、片手間でチェックできるのがいい。 

あるいは深夜や早朝といった外の店が開いているはずもない時間帯に、ふと思い付いてチラッと調べものをしたりできるのもいい。そもそもいつも使っている自分のPCなので安心だし、人とやりとりするデータだってそこに入っている。 

だが今回手に入れたプリペイドのプランのおかげで、携帯電話の電波圏内ならば、どこからでもネットにアクセスすることができるようになった。いい時代になったものだ。 

私がこのプリペイド契約を購入した数日後から、vodafoneが提供するプランはもっと料金が高くて利用可能データ量も多いものに置き換わっている。これは近日導入される通信形式の3G化により、ユーザーたちがより通信量の大きな使い方をするであろうことを踏まえてのことだろう。 

他にも通信各社いろいろなプリペイドの通信プランを出してきているので、いろいろ比較してみて、自分の用途や使い方にあったものを見つけてみるといいだろう。

求人 ST限定

 Tribal Jobs Indiaというウェブサイトがある。留保対象となっているSTつまり指定部族対象の求人情報を集めたもので、金融、エンジニア、保険、IT、法曹、医療等、様々な分野での募集が掲載されている。 

年齢制限についての部分で、しばしば『5 years relaxation for SC/ST』などと書かれているものがほとんどだ。こうした人々に対して留保枠そのものだけではなく、年齢上限についても緩和されるのだろう。 

留保制度のありかたや意義についてはいろいろ議論のあるところだが、こうした留保による求人・就職について、今後機会をもうけて考えてみたい。

ダルバンガーのV君

昨年のことだが、デリーの国際線ターミナルビルで、そろそろ東京行きのチェックインカウンターに並ぼうとしていたときのこと、あるインド人青年が声をかけてきた。   

『チェックインはどうすればいいんですか?』との質問。ちょうど私と同じフライトなので、一緒に並ぶことにする。日本に来て何をするのかと問えば、『レストランでコックとして働く』とのこと。東京都内のあるインド料理屋での就業が決まっているのだそうだ。   

現在26歳のV君は、ビハール州北部ダルバンガーの出身。これまで州都パトナーの大手ホテルのレストランの調理の仕事をしていたのだそうだ。   

彼はこの日の朝早くにデリー到着の鉄道にて、生まれて初めてインドの首都に降り立ったとのこと。そしてもちろん、飛行機に乗るのも初めての体験で、いかにも緊張した表情である。   

セキュリティチェックの際にスタンプを押されるため、チェックインカウンターに置かれている紙の手荷物タグを付ける必要があること、また出国カードを一枚取って記入しなくてはならないことなどを教えてあげるが、V君は英語について会話はもちろん読み書きもできない。仕方なく全て書いてあげてサインだけさせる。   

V君には兄が3人、姉が2人で皆結婚している。まだ独身の彼は末っ子で両親から特に可愛がられて育ったらしい。『インドを出る前にオヤジに電話しなくちゃ』という彼は、あたりを見渡すがSTDブースらしきものは見当たらない。   

私の携帯電話(インドのvodafone)を使わせる。『同じフライトで行く日本の友人が出来た。その人から電話借りてかけているんだ。東京の空港ではレストランの主人が迎えに来ている。東京までは今隣にいる日本の友人と一緒だから安心だ。心配しないでいいよ、オヤジ・・・』   

しばらく携帯で会話していた彼が『父が話をしたいそうです』と私に携帯電話を差し出す。家族の中から初めて海外出稼ぎを送り出すのだという父親の心配そうな様子が伝わってきた。とりあえず『ええ、息子さんと同じフライトで東京まで行きます。直行便ですから乗り換えなしで東京に到着します。私が一緒ですから、どうかご心配なく』と言っておく。 

彼自身も電話の向こうの父親も、まだ見ぬ異国日本に行くという不安な中、コトバが通じる日本人が一緒ということが心強いようだ。待合ロビーの売店で雑誌類を物色していると、彼は菓子やジュースなどを買ってきてくれた。   

そんなわけで飛行機に搭乗するなり、V君は客室乗務員に頼んで私の横に座りたいと頼んでいる。初めての飛行機で離れているのが不安らしい。 

出発の準備が整い、飛行機は滑走路へと進む。客室乗務員すべてが着席してエンジンが唸りを上げてフル回転し始める。機体はどんどんスピードを上げていき、やがてフワリと宙に浮かんで一気に高度を上げていく。窓際に座ったV君はその間とても無口で強張った表情をしており、まばたきもせず眼も据わっている。相当緊張しているようだ。 

しばらくしてから出てきた機内食を食べてビールを飲むと眠くなってきた。故郷のこと、家族のこと、パトナーでの仕事のことなどいろいろ話をしてくれるV君には申し訳ないのだが、そのまま寝入ってしまう。目が覚めると成田到着まであと2時間くらい。ちょうど簡単な朝食が出てくるところであった。   

機内で出入国カード(外国人のみ)と税関申告書が配られる。V君はまたこれがわからないのでこちらが書いて、さきほどと同じようにサインだけさせる。 

税関申告書には所持金についての部分もあった。人のお金について尋ねるのは気が進まないが仕方ないので質問すると320だという。『320ドルか、外国に行くのには少ないね』と言うと『いや320ルピーです』と言うのでビックリ。昨夜、デリーの待合ロビーで買ってきてくれたジュースや菓子類だけでも所持金の三分の一くらい使ってしまったのではないだろうか。

成田空港に到着。到着が少し遅れているし、誰も空港に迎えに来ていないと心配なので、今度は日本の携帯を取り出して彼の雇用主の番号にかけてみた。呼び出し音が鳴るとすぐにインド人が出た。すでに出口で待っているとのことなので、電話をV君に代わる。 

『それじゃ、仕事がんばって』

「デリーから一緒に来るこができて良かったです。いつかぜひ私のレストランに来てください」

荷物が出てくるターンテーブルの前でV君と別れた。 

あれからしばらく経つが、彼は元気で働いているだろうか。

機内預け荷物が出てこない!

フライトの機内預け荷物が出てこないのは大変困る。どうしても必要なものもあれば、欲しくて購入したものもある。そうした意味ではモノの値段では代えられない場合だってある。以前も同じ便で同様のことがあり、そのときには結局出てこなかった。再びそうなるのでは?と嫌な予感がした。 

フライトの到着地で荷物が出てこないということはたまにある。私自身、荷物が見つからず諦めなければならなかったときを加えて、これで4回目。他の2回は翌日か翌々日には空港に届いたのだが。 

まさか同じ航空会社の同じフライトで数年置いて2回も紛失することはなかろうとタカをくくっていたのだが、数日過ぎても10日経っても見つからないとのこと。半月過ぎるあたりでは、もはや諦めの心境であった。成田空港の当該航空会社の担当者から『デリーの空港にあなたの荷物はありません』との正式な回答を得たという話があった。 

それでも他国の空港に間違って運ばれてしまった場合、フライトのチェックインの際に付けられた航空会社のラベルの番号等で追跡するシステムがあるとのことなので、再度そちらのほうで捜索してくれるように頼んだ。しかしその後さらに1週間が過ぎても荷物が見つかったという連絡はなかった。 

荷物の行方がわからないなってから、そろそろ20日経とうかというあたりで、たまたまアクセスしたインドのCISF(Central Industrial Security Force)のウェブサイトに、インド各地の空港における『Lost & Found』の検索システムがあることに気が付いた。CISFとは、内務省の管轄の組織で、政府施設や空港など国の重要施設の警備に当たる治安部隊であるが、国際線・国内線を問わずインド全国の空港にて、彼らが確保した身元不明の荷物について調べることができる。 

フライトに搭乗した日から向こう5日間ほどのデータを閲覧してみた。荷物が『迷子』になってから、当局に遺失物として登録されるまでのタイムラグがあるかもしれないからだ。すると私が飛行機に乗った翌々日の記録に『ひょっとしたら私のものかも?』と思われる記載があった。

私が航空会社にCISFの件でコンタクトした時間帯と、その日に成田空港入りしたそのフライトのデリー出発時間と考え合わせると、航空会社に連絡してから24時間以内に荷物が発見飛行機に積み込まれたようだ。航空会社の担当の方によると、直接CISFにコンタクトするとデリーのオフィスから問い合わせるようにと言われ、その後現地のスタッフの方々が奔走してくれたようだ。 

それにしてもチェックイン後に行方がわからなくなり、デリーの空港当局から『こちらには散在しません』と伝えられた荷物が、CISF経由で見つかるとは不可解だが、まあそういうこともあるのだろう。そのウェブサイトで遺失物を検索できることに気が付いた幸運に感謝したい。 

機内預けの荷物が行方不明で諦めなくてはならなかった・・・ということはそう滅多にあるものではないが、インドの空港発のフライトで運悪くそうした事態に遭遇してしまった場合、念のためCISFの検索システムに当たってみるのもいいかもしれない。

スパイスジャーナル

スパイスジャーナルというスパイス専門のバイリンガル季刊誌がある。A5判で30ページほどの冊子だが、現在出ているのは第3号で、次号は2011年1月下旬に発行予定であるとのことだ。価格は300円。 

ページをめくってみると、インドでよく使われているスパイス類についての解説、料理レシピ、インドからのレポート等々が並んでいる。 

『あれ?』と目に留まったのは、豚の角煮の写真である。Kakuni Masala (Okinawa Style)と書かれている。沖縄スタイルと書かれているとおり、ラフテーのことであるようだ。だが材料の項目では調味料として、醤油や泡盛に加えてクミン、カルダモン等々のスパイス類が挙げられている。 いつもマメに手料理を作っている私は、早速ブタのバラ肉を手に入れて調理にとりかかってみることにした。 

レシピ通りに作ってみたKakuni Masalaは、家族にもなかなか評判。醤油が入っていること、かなり長く煮込むことなどから、スパイスの新鮮な香りはかなり失われてしまうものの、そのいっぽうで味とコクが格段に深まることがわかった。 

ふと思い出したのが、数年前にメガーラヤ州都のシローンで食べた大きなブツ切りの豚の角煮カレー(のようなもの)だ。地元のカーシー族は豚肉をよく食するようだ。その店は、華人が経営する中華料理屋であった。モンゴロイド系のカーシー族が多い中で目立たないが、華人はけっこう在住している。その店のオリジナル料理なのかどうかはよく知らないが、なかなか美味で、豚肉を使っての中華・インドのハイブリッド料理もなかなかイケルことを知ったのはそのときだ。

単にスパイスとインド料理の紹介に留まらず、日本の食環境の中での新たな味の提案というのはあまり見かけない気がする。次号で紹介される料理は何かな?と期待しているところである。

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