ターリバーン特集

配信されたインディア・トゥデイ最新号。特集記事は「ターリバーンにインド政府はどう向き合うべきか」。

良好な関係にあった前政権とは反対に、パキスタンの軍事統合情報部(ISI)とは「親子関係」にあったターリバーン政権の復活。インドにとってアフガニスタンは「遠いどこかの国」ではなく、歴史的に繋がりが深く、パシュトゥーン起源の歴史上の人物やその血を引く自国民も少なくないだけでなく、安全保障上の大切な地域。インドメディアの注目度は高く、アフガニスタンに関する知識の蓄積、分析の深さもまったく日本の比ではない。

米軍が去ったカーブル空港

インドの放送局による「米軍撤退直後のカーブル空港」報道クリップがYoutubeでシェアされている。

きちんとした軍の戦闘服を着用しているのは、ターリバーンの313部隊というコマンドー集団とのこと。伝統的ないでたちでないところが、いかにもちゃんと訓練されたプロ兵士という感じがする。「孫にも衣装」といったところだが、外国メディアに撮影させてオンエアしてもらうことにより「意外と近代的だ」というイメージ構築の意図もあるかもしれない。空港に残された戦闘機やヘリの類は、米軍発表によると「無力化済みである」とのことだ。

ターリバーン側によると、可能な限り早い時期に近隣国、とりわけイラン、カタル(「カーブル」であって「カブール」ではないように、本来は「カタル」であって「カタール」ではない。こんなこと言っても切りがないが)とのフライトからでも再開したいとのこと。

アナウンサーは「ターリバーンが占拠した」と言っているが、見出しには「テロリストたちが占拠した(आतंकियों ने किया कब्ज़ा)」と出ていることから、少なくともこの局はターリバーンについて、そのように考えているのだろう。(一般的にインドメディアの大半もインド政府も同様の考えかと思う。)

米軍が去ったことを祝い、ターリバーンの兵士たちが空に立て続けに撃っている映像もあり、「いくつものマガジンを空にしている」そうだが、空に無数に撃てば、その数の弾丸がいつか落ちてくると思うのだが、それが当たって死んでしまうということはないのだろうか?アフガニスタンではないが、インドのビハールなどでも、結婚式の際に空に向けて祝砲を撃つというようなことはよく聞くが、こういうのは怖い。

काबुल एयरपोर्ट में घुस गया तालिबान, स्पेशल फोर्स यूनिट बदरी 313 के आतंकियों ने किया कब्जा (INDIA TV)

「インドにおけるタリバーン的思考」

一昨日、国営ドゥールダルシャンで放送されたBharat mein Talibani soch ? (インドにおけるタリバール的思考?」と題した討論番組。

出演はインドのある識者、BJP幹部、そしてふたりのイスラーム学者たち。学者たちは身なりからしてもムスリムのかなり保守層に属すると思われる。

こういう番組でしばしばあるのが、開始前から結論ありきの集団リンチ的な展開だ。まずは左のアナウンサーで司会を務めるアショーク・シュリーワスタヴが「カーブルで、タリバーンからの布告で15歳から35歳までの女性を登録するために兵士が家々を回り始めている」「インドの社会党議員のひとりがタリバーンによる首都制圧を『アメリカからの独立』と称え、タリバーンを『自由の戦士』と褒めたたえた」ということから話をひとりひとりにふっていく。

もちろん出演しているインドのイスラーム学者たちもタリバーンを肯定せず、前のタリバーン政権のときの二の舞いとなることを懸念する発言などをしているのだが、右寄りの識者とBJP幹部が意図的にイスラーム教そのものを挑発するような発言をして、これに対する学者たちの反論、言葉尻をとらえてのヒンドゥー右翼による再反論・・・という形に対話が流れていく。

こうした不毛な討論番組は民間放送にもよくあるのだが、国営放送でこうしたバイアスがかかるというのは、政権からのそうし誘導があるのではないかとか、世論誘導のためのツールとしているのだろうとか、いろいろ考えてしまう。「国内でのタリバーン的思考について」考察するという目的から、「国内のイスラーム教徒を不審視する」という流れで、大変不健全なものだ。

また、こういう番組にヒンドゥー保守派とイスラーム教徒保守派というふたつの両極端な人たちを出席されて討論というのもあからさまな意図が感じられるようだ。

大統領宮殿での記者会見

一昨日のタリバーンによる大統領宮殿への入場と記者会見の動画。アルジャズィーラが放映したもの。田舎侍みたいな男たちがきらびやかな宮殿内で、少しオドオドしながら記念写真を撮っていたり、物珍しそうに眺めていたりもするように見えるが、彼らを率いている立派な身なりをした3名(4名?)の偉そうな人物たちはタリバーン幹部なのだろう。彼に随行している兵士たちも組織内ではかなり上の存在のはず。市内ではこれまで警官がやっていた交通整理や検問の実施などもタリバーン兵がやっているという。そんな場ではなく、こんな「勝利宣言」の席の幹部の護衛で来ているのだから、「エリート」兵士たちのはずだ。

この大統領宮殿。これまでは権力の中枢であった場所で、タリバーンにとって平和裏に実権が移行したことを内外にアピールするにはもってこいの場所だ。そこに「PRESS」と背中に書かれたクルーとインタビュアーを伴ってやってきているわけだ。

こうした形でメディアとその先にいる世界中の視聴者たちを明らかに意識した姿勢は、かつて政権にあったときのタリバーンとはちょっと違うような気がする。「怒れる若者たち」だった幹部上層部も中高年になって成熟したのか、世の中の変化とともに彼らも多くを学んできたのか。

これからタリバーンが何をしようとしているのか、どんな統治をしようとしているのかは、まだしばらくわからないかもしれないが、まずはメディアに対してどのように振舞おうとしているのかについても注目していきたいと思う。タリバーンが目指しているのは首長国なので「情報公開」のような意識のかけらすらないかもしれないが、少なくとも国外とどのように付き合っていこうとしているのか、そういうつもりはあるのかについては見えてくるかもしれない。

Taliban enters presidential palace in Kabul (Al Jazeera)

アフガニスタンの8月16日

文末に埋め込んだ動画は、アフガニスタンに関するアルジャズィーラによる首都カーブル陥落当日のリポートだ。

やはりタリバーンによる旧政権側市民等への報復などの人道被害、女性への差別行為、外部のテログループへの庇護や支援、難民流出などが危惧されるとともに、前のタリバーン政権時代の記憶から、これらが再現されることが最も懸念されている。市内からの映像ととともに国連の会合の様子も伝えられており、ここでも同様の懸念が示されている。

先進国等によるタリバーン政権の承認はおろか、積極的な支援や関与というのも期待できないだろう。ここでやはりキーになってくるのは自国を中心とするCIS加盟国中の中央アジア諸国と隣接するロシア、そしてかねてよりタリバーンとの接触が伝えられていた中国、とりわけ迅速に動くのは後者だろうか。

「内政不干渉」を旗印に、悪魔とでも平気で手を結ぶ中国の目的は通商と軍事的なロジスティックの構築。支援対象国からすると、自国内のイデオロギーや宗教に対してニュートラルな立場で関与してくれる北京政府、通商と軍事ロジ以外の関係では一切口出しをしないので、たいへんありがたい存在だろう。ただし貸し付けたカネはあらゆる形でキッチリ回収にくるので、本当はとても恐ろしい相手なのだが。予想よりもずいぶん早く崩壊した旧アフガニスタン政権にうろたえる国際社会を前に、中国共産党は「先見の明があった」ということになるかもしれない。

国連の会合では、崩壊したばかりの政権から派遣されていた「アフガニスタン国連大使」のグラーム・イサクザイが発言をしていたが、この人を含めて旧政権から国際機関や在外公館などに派遣されていた人たち、当然そこには在日アフガニスタン大使館の人たちも含まれるが、大変不安なことだろう。不安といえば、そうした大使館に勤務する現地職員も同様。

米国の国連大使は、首都を制圧した勢力に向けた自重と人権擁護を訴え、テロ組織への関与のないようにという注意喚起、国際社会に向けてはアフガニスタンへの人道的関与、新型コロナ対策に係る支援、国外に流出するであろう難民への理解と支援を促すなど、自制の聞いた内容の発言をしていた。てっきり声を上げて強く非難するのかと思っていただけに、少々意外でもあった。米軍撤退完了の前に首都陥落で、大いに面目をつぶされた形になるが、やはりそれでもアフガニスタンへの関与は順次薄めるという方針には変わりがないのだろう。ただし、彼女のスピーチの中で、アフガニスタンとの関わりについて「Time to step up」と発言しており、この部分について現地リポーターとスタジオの間で「これは何を意味しているのか?」「さあ、私にはわかりません」と話題になっていた部分は気になった。時間がない中でも推敲を重ねた発言内容であるはずなので、何か示唆するものがあるのかもしれない。

それはそうと、今後のタリバーンにより市民生活がどう変わっていくのか、案外変わらず様々な観測は杞憂に過ぎないのか、国際社会はこの政権を承認するのか、タリバーンは国際社会に参加する意思はあるのかないのか。自国の強い影響圏CIS内の中央アジア諸国がアフガニスタンと隣接するロシアはどう動くのか、中国はどのような関与をこれから始めようとしているのか、パキスタンはどう動くのか等々、注目していきたい。

Taliban fighters patrol streets of Kabul (Al Jazeera English)