ヘロイン禍

芸能人などの有名人が逮捕されたら、大騒ぎして報道するのは、いずこの国も同じ。

インドでも同様で、シャールク・カーンの息子、アーリャンの逮捕関係のメディア露出は相当なもので、中には「ムスリムを標的にしたBJPの陰謀説」のような荒唐無稽なヨタ話をもっともらしく吹聴するニュース番組もある。

そんな中でのインディア・トゥデイの「ヘロイン禍」の特集記事。「インディア・トゥデイ、お前もか?」と思いながらページをめくっていったが、さすが「ちゃんとしたニュース雑誌」は、ゴシップ誌や半ニュース半ゴシップ誌と大きく異なる。

世界中のケシ関係の麻薬供給元の85%はアフガニスタンが占めているそうだが、近年はインドへの供給量が大幅に増えていることが、水際での押収量の増加で明らかなのだそうだ。先日もアフガニスタン発でイラン経由のコンテナがチェンナイで差し押さえられ、空前押収量を記録したとのこと。

麻薬を大きな収入源とするターリバーンの「怪進撃」の要因のひとつには、この関係の売上増が果たした役割もあるかもしれない。

同様に近年はパンジャーブ州で、とりわけ若年層へのドラッグ使用の蔓延が大きな社会問題になってもいるのは、ずいぶん前から聞いており、それを題材にした「UDTA PUNJAB(2016年)」という凄惨な映画が物議を醸したこともあった。

パンジャーブ州への薬物流入は、国境地帯の農村部で移送がなされる様子が同作品でも描かれており、背後には当然、パキスタン側の組織があり、これには同国の工作筋も関与していると言われている。

アーリャン・カーンの逮捕というのは、現在の麻薬禍において発生した無数の現象面での「ひとつの例」であり、背後にある動きこそ重要かつ深刻なものだ。

現象面の末端に過ぎない個人を叩くのではなく、背後の巨悪にメスを入れたインディア・トゥデイ誌の姿勢は、まさに社会の木鐸としての矜持だろう。

インディア・トゥデイ10月20日号

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