スリランカのドリアン

東南アジアでの人気ぶりとは裏腹に、南アジアでは一般的に食物として認識されていないドリアン。自生している固有種がないわけではなく、多雨多湿の南インド沿岸部やスリランカでは、自生している木は存在している。
私にとって、久しく訪れていないスリランカだが、かつて訪れた際に、山間部の道路脇ではごくわずかにドリアンを販売する露店を見かけたことがあったが、町中に入ると皆無。
なんともったいない・・・と思っていたが、ついにスリランカでも商業作物として扱われるようになってきているとのこと。主に輸出用の目的と思われるが、今後は国内でも人気が高まってきても不思議ではないだろう。
また、東南アジアでスリランカ産のドリアンへの需要が高まるというようなことがあれば、南インドでも同様の動きが出てくるかもしれない。

A Durian Village In Sri Lanka (Global Voices)

Old & New

伝統的な水甕

バーザールの歩道に素焼きの甕がしつらえてあり、そこで働く人はもちろんのこと、道行く人々もそこから水を汲んでは飲んでいる。素焼きの表面に染み出た水分が蒸発する際の気化熱で冷却されるため、夏季で高温の屋外ではなおさらのことひんやりと感じられる。

こうした甕は日々水を交換したり、中をゴシゴシと洗浄したりなど、きちんと管理されているようだ。炎天下にあっては、まさに命の水。一服の涼感、そして脱水症予防。ちょっとした社会貢献でもあり、徳を積む行為でもある。

モダンな水甕

いっぽう、ちょっとモダンな「水甕」もある。テーランガーナー州で、街外れの一角に設置された冷水機。通行人はもちろんのこと、ここを通りかかるタクシーやオートの運転手なども冷水を汲んで飲んでいる。かなり知られたスポットのようで、反対車線を走っていたオートが、わざわざUターンして訪れたりなどもしている。

しばらく眺めていると、利用者のほとんどは運転手、行商人、ガードマンなど、暑い最中に額に汗して働く人々。冷水機の提供者は宝石店。お店の客層とは関係なさそうな相手に貢献していることに心意気を感じる。

食の南北の混淆

昨夕、南インド式ターリー、「ミールス」を食べた店があまりにおいしかったので再訪。やはり、ちょっとアップマーケットなレストランで、行列まで出来るようなハイデラーバードで評判のお店。

ひとつグレードが上のターリーを注文してみた。バナナの葉っぱの上で、手前の小鉢の南インドでよくあるシャキシャキの野菜。背後になぜかナーンがあり、その下に隠れて見えないけれども、ムグライ風の小鉢がふたつ。これらに加えて撮影した直後に2種類のサンバルが出てくるという、実に奇妙な取り合わせでたまげた。昨夕食べたスタンダードで価格が安いほうは地元アーンドラ式なのに対して、高いほう南北ミックスのスタイルらしい。

南と北がプレート上で入り混じる。

「こりゃあダメだな・・・」と、かなり嫌な気分で食べ始めたのだが、意外なまでにしっくりくる食べ心地に再びびっくり。
例えばナーンにギーを敢えて塗らずあっさりと仕上げ、サンバルのタマリンドもごく少しに抑えてあり、北と南のそれぞれの風味が、異なる相手に干渉しないようにするなど、南北それぞれの品々にちょっと工夫がしてあるようだ。そう、「食べ心地」がいい。

北の食文化と南のそれが混交する、テルグ語社会の中にウルドゥー文化が花開いた、旧イスラーム藩王国ハイデラーバードならでは・・・なんて言うと大げさ過ぎるが、実にうまいことやっているなぁ!と感心した次第だ。

でも、これを繰り返し食べたいかというと、決してそんなことはない。異なるものを接ぎ木するよりも、それぞれ別々に食べたほうがいいなぁ、と私は思う。南インド料理は南インド料理として、北インド料理は北インド料理として。南の中でも、北の中でも、それぞれ違いはあるのだが、あまりに異なるふたつのタイプをいっぺんに出すというのはちょっと・・・。

ラマダーン月がやってきた

イスラーム世界は今月18日からラマダーン月に入り、7月16日までの間、信者たちの間では基本的に日の出から日没までの断食が行われることとなる。飲食はもちろんタバコもダメなので、愛煙家に対してはニコチン切れという、もうひとつの苦難が加わることになる。

このラマダーン月が夏季に当たる(太陽暦ではないので、毎年少しずつ前倒しになってくる)場合、気候の上でかなりキツイことになるのは当然のこととしても、日々の断食の時間については、緯度によって日照時間が大きく異なってくるというジレンマを伴う。

南アジアやアラビア半島では日中のおよそ15時間に及ぶ。それでも充分長いものであるが、
これがロンドンやベルリンではなんと19時間となり、アイスランドのレイキャビクでは22時間にも及ぶ。

यहां होगा 22 घंटे का रोज़ा (BBC Hindi ※ヒンディー語記事)

似たような記事がBBCの英語記事にも取り上げられていたが、それによると断食時間が18時間を超える場合は、メッカにおける断食時間に合わせるか、最寄りのムスリム国のそれに従えばよいということになっているとのこと。

Ramadan fasting dilemma when sun never sets (BBC)

この断食だが、信者がこれを実行するにあたって、ムスリムがごく少数派の国々ではなかなか困難を伴うものであろうことは想像に難くない。周囲の理解の程度ということもあるが、とりわけ勤労者にとっては、ムスリムが大半を占める国であれば「そういう時期であるから」ということで、実質の勤務時間が短くなったり、生産性についての許容が甘くなったりという幅が皆無となるからだ。

とりわけ中国においては、政府による断食に対する規制がなされるようだ。これに従わない場合は、具体的にどのような罰則があるのかは解らないが、人権に関わる問題である。

China bans Ramadan fasting in mainly Muslim region (ALJAZEERA)

ハイデラーバーディー・ビリヤーニー(続き)

前回のビリヤーニーは、あまりに量が多すぎて懲りた。利用しているホテルのレセプションで「ノンヴェジのビリヤーニーの店で、量が多いからではなく、味で勝負しているところはないか?」と質問してみた。

宿泊先と同じアビッズ地域のGPOサークルと呼ばれるところにあるグランド・ホテル(ご存知のとおり、インドでは往々にして単体のレストランに「ホテル」という名前がついている)がお勧めとのこと。

すぐ目と鼻の先にあるので、歩いて出かけてみる。道路反対側からでも混雑している様子が窺える。美味しいものにありつけそうな予感。

店の入口をくぐるなり、ビリヤーニーを注文して目の前の席に着く。周囲の客席に目をやると、ここもまたひとつの巨大な盛りの皿から二人、三人でシェアしているのに気が付いて、嫌な予感がする。ややオーバーな言い方をすると、洗面器一杯分くらいの量がある。

今回もまた困ったことになった・・・。