ナマステ・インディア2007

 
 
曇りときどき雨という予報どおりの天候のもと、東京渋谷区の代々木公園で『ナマステ・インディア2007』が開催された。
午前中、ときおり雨がやや強く降りベッタリと湿った天気のもと、人出もまばらで閑散としていたものの、昼すぎからほぼ雨が止むと会場が急に込み合うようになり、昨年同様の賑わいとなってきた。
日本人のインド舞踊家たちによるバラタナティヤム、UPとハリヤナーおよびラージャスターンの舞踊団、古典音楽などのステージの人々の目が釘付けとなり、カラフルな衣装で踊るバングラー、ボリウッドのダンスともなれば、舞台の前で派手に踊りまくる人たちも大勢あり、素晴らしい盛り上がりを見せていた。

 
人気のプログラムは多かったが、会場で配布される案内のチラシに『ヨーガ・レクチャー』とあり、誰が来るのかな?と思っていたら、なんとスワーミー・ラームデーヴであったのには非常に驚いた。ついに日本でも大きなブームを呼ぶのだろうか。ビリーズ・ブートキャンプの後に続くのは、スワーミー・ラームデーヴのヨーガビデオなのかもしれない?何かにつけて『インド』がブームのこのご時世、ありえないことではない。
Swami Ramdev
Swami Ramdev
このイベントは1997年にすみだリバーサイドホールで開催されたのがはじまりであったと記憶している。規模といい来場者数といい当時とは比較にならない。また会場で目にするインドの人々の数も飛躍的に増えている。それだけ日印間の距離が近くなり、日本におけるインドという国、インドの人々のプレゼンスが向上したことの証でもあろう。
9月30日も引き続きこのイベントが同会場で催される。明日の空模様も同様らしいが、きっと本日以上の大盛況となるに違いない。

子どもたちの楽園 2

National Rail Museum
National Railway Museumは、古い車両を屋外展示するエリアとミニチュアや資料などをもとに歴史を解説する屋内展示のエリアから成る。
植民地時代の三等車両、巨大な蒸気機関車、家畜運搬車両、脱線車などを取り除くためのクレーン車両など、異なるゲージ幅のさまざまな車両が置かれている。
サルーン車両
山岳地のトイトレインで使われた小さな可愛らしい機関車に客車、旧藩王国内の路線で使用された王族用のサルーン車などもなかなか興味深い。これらの多くが当時のイングランドのグラスゴウをはじめとする英国および欧州の先進工業地域で製造されたものであることが、車両にはめ込まれたプレートの文字から見てとれる。
グラスゴウで製造されたことを示すプレート
ちょっと変わった風体の乗り物もある。20世紀初頭には、パンジャーブの一部地域で『モノレール』が走っていた時期があったらしい。もちろん高架を走る現代的なものではなく、地上に敷かれた一本のレールを頼りに走る蒸気機関車だ。車両が転倒しないように補助輪が付いているのが何ともユーモラスである。訪れたときに、ちょうどこの古い車両を走らせているのを目にすることができた。
20世紀初頭の『モノレール』
『モノレール機関車』はドイツのベルリンの会社が製造したものであった。
時代ものではないが、敷地内を一周するミニチュア・トレインも人気だ。ウチもそうだが、周囲でもまた子供たちは敷地内でいくら時間を過ごしても遊び足りず、「そろそろ帰るよ」という親に「まだ帰りたくないよう!」とせがんでいる姿を多く目にした。
ここはどうやら子供たちの楽園のようだ。
 

National Rail Museum

子どもたちの楽園 1

子ども、とりわけ男の子が大好きな乗り物の横綱格といえばスポーツカーと鉄道だろう。前者は父親が乗りまわしているのが普通のセダンだったりするとつまらないだろうし、そもそも家にクルマがなかったりすることも少なくないが、後者については誰もがよく利用することから機会は平等かもしれない。(もちろん鉄道が走っていない地域も少なくないが)
インドでいろいろな乗り物に利用しても、子供が一番喜ぶのはやはり鉄道である。親にしてみればトイレや洗面台がついているので、他の陸上交通機関に比べて長距離移動しても安心、少し上のクラスであれば座席まわりのスペースにゆとりがあり、あまり疲労を感じずに済むので楽だ。
はるかに短い時間で目的地に着くことができる飛行機も子供たちの人気者だが、なぜか彼らの興味は搭乗し離陸したところで終わってしまうのが常のようである。おそらく外の景色が変わらなくて飽きてしまう、狭いシートでじっと我慢していないといけないので退屈・・・といったところが理由か。
鉄道だって、しばらくずっと沿線風景が変わらない地域だってあるし、チェアー・カーだったら飛行機内に座っているのと環境はそう変わらない。でも駅に停車するたびにドヤドヤと人々の出入りがあったり、プラットフォームの景色を眺めたり、物売りがスナックなどを見せびらかしに来たりといったところが、ちょうど良い具合に「ブレーク」となるのだろう。
ウチの子供によると、インドの列車は「大きな生き物みたい」で面白いのだそうだ。言われてみれば、無機的でメカニカルな雰囲気より、むしろ体温や体臭といったものを感じさせるムードがあるような気がする。
長い連結車両をけん引するディーゼル機関車が、プラットフォームにゆっくりと入ってくるときの「ドッドッドッ」という地響きに似た音、派手に軋む車輪の悲鳴、車内の消毒液の匂いとともにどこからか漂ってくる食べ物の香り、大声で会話する人々、駅構内をやや遠慮気味に行きかう動物たち・・・。
加えて、機関車や車両のクラシカルなスタイルはもちろん、あの重厚長大さも魅力らしい。「だってす〜っごくデッカイもんね」と6歳になったばかりの息子が言う。小さな子供にとって「大きい」こと自体もまた憧れなのだ。
そんな息子がとても気に入っている「博物館」がデリーにある。普通の博物館ならば、幼い子供は皆そうであるように、すぐに「帰ろうよ〜」となってしまうのだが、ここだけは日中一杯過ごしてもまだ物足りないようだ。場所はチャナキャプリのブータン大使館横、National Rail Museumである。
〈続く〉

ミススペリングだって立派なもの?

看板やTシャツのプリント等々、日本の街中に蔓延している奇妙な英語を棚に上げていえば、インドの街中で『あれれ?』と思う綴りを見かけることは少なくない。特に安食堂の英語メニューなんかかなりスゴイものもあったりするが、ヒンディーの看板や標識の類、メディアでも小規模なローカル紙などでもしばしば『?』なスペルを見かけるものだが、このたびBBC Hindiのサイトで『間違いスペリング特集』を見かけた。
鼻音を示す印がついていないのは、何となく書いていて知らずのうちそれを付けるのを失念したといった具合だろうか。短母音と長母音が逆になっていたり、シャがサにとなるように子音が取り違えられているのは書いた人本来の母語の影響があるのかもしれないし、語の区切りが妙だったり、スペルそのものが間違っているがそのまま読めば似た響きとなる綴りの場合、意味を考えずに耳で聞く音だけで覚えていたものによるものかもしれない。もちろんちゃんとした教育を受ける機会がなかったということも少なくないにしても、ひょっとするとこうした間違いの裏には『誤り』では割り切れない背景がいくつもあるのかもしれない。
どんな言葉でもそうだが、それを学んだ人々の中である特定の言葉を母語とする人に典型的な傾向、しゃべりかた、語の用法というのはよくあるものだ。日本語にしてみても、それを身に付けた中国語圏の人々、インド人やパーキスターン人たち、マレー系の人々等々、どの言語集団の人々にあっても、各グループ内に共通する特徴と他グループとは明らかに一線を画する強い個性を備えているものだ。やや大げさに言えば、その言葉の中にこれまでなかった新たな文化が表出するのである。
言葉の使い手の中に、これを母語としない人が多く加わってくることにより、従来にはなかった語彙はもちろん、新たな言い回しが加わってくるかもしれない。異なる母語、違った文化を背景に育ってきた人々が自らの視点でその言葉を話すことにより、本来それをしゃべっていた人たちとは違う価値観を訴える、表現するといったことだってあるだろう。人と人が言葉で物事を伝え合い影響し合うのと同じように、異なる言葉が人々を介して交わり合う、ぶつかり合うことの中から生まれてくるものも少なくない。言葉とは本来そういうものだ。
一見間違いにしか見えないものの中にも、よく目を凝らして観察してみると、どこからか興味深い事実、学ぶべきものが見えてくることもあるかもしれない。

I Leagueに注目!

サッカーの母国イングランドのプレミア・リーグに在籍するインド人移民の子、マイケル・チョープラー選手(母親はイギリス人)の活躍が伝えられるこのごろだが、チョープラー選手の父親の祖国インドのサッカー界も今、大きな変革の時期を迎えている。インド代表チームのワールドカップ予選の試合が10月8日と同28日に予定されていることを考慮し、今年9月末に開幕する予定であったものを11月23日に延期されることになったI League、インドで本格的なサッカーリーグがスタートする。
敢えて無礼を承知で言えば、もともとのスタート点が低いため、リーグの興行成績、代表チームの戦績、ファン層および草の根サッカー人口の拡大、どれをとってもここ数年のうちに順調な成長ぶりをアピールするのはそう難しいことではないだろう。主に都市部で人々の所得が上がるにつれて、個々の興味関心や趣味の領域も広がることだろうから、もともとサッカー人気の高い西ベンガル、カルナータカ、ゴア、ケララなどを中心とする地域で盛り上がりを見せるだろうし、その効果はやがて他の大都市圏や各州へと波及していくのではないだろうか。
もとより『サッカー不毛の地』北米を除く多くの国々で常に最も注目を集めている競技がサッカーだ。テレビ視聴者数からいえばサッカーのワールドカップこそが世界最大のスポーツの祭典。国威発揚の具としての位置づけからかつてのソ連、東欧や今の中国のような国が華々しい成績を修めるのを除けば、おおかた競技人口が先進国に偏ったスノッブな競技が競われるオリンピックと違い、多くの国々の庶民たちは幼いころから大好きで、実際にプレーしながら長く親しんできたためその楽しさや難しさがわかり、フィールドに立つ選手たちに負けないくらい感情移入できるスポーツがサッカーだ。

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