サルの天下(1)

Arukakatさんの『これでインディアExpress』に『猿の猿退治』と題して、アカゲザルに対する他種のサルを用いた捕獲作戦の話が出ていたが、このアカゲザルときたら体力と知力ともに高次元でバランスが取れており、しかも集団行動するので私たち人間にとってかなり手強い相手だ。
インドでよく見かけるアカゲザルは、オナガザル科マカク属に分類され、同じくマカク属のニホンザルと近縁だ。種が近いために交雑も可能。日本国内で飼育されていたアカゲザルが野生化し、ニホンザルとの雑種の出現が懸念されているのだとか。このサルはアフガニスタンから南アジア全域、そしてインドシナや中国にまで広く分布している。
よく子供向けの物語で、サルといえばユーモラスなキャラクターで描かれることが多い。しかし実際は野犬などよりかえって危険で非常に厄介な動物であることはいうまでもないだろう。平面的かつ直線的な動きが多く、石や棒などを軽く振り回せば簡単に動きを封じることができる犬と違い、予想もしない動きと上下左右への変幻自在な身のこなしに加え、相当高い知能を持ち合わせるこのサルと素手で渡り合うのはあまりにリスキーだ。
ちょっと脅せば『おぉ、勘弁してくれ』と、手にした食べ物を放りだしてしまう人間を前に、サルたちは自分たちの序列の感覚から『オイラが先に食べる=奴よりも立場が上』と解釈して、さらに図に乗って大胆な行動を取るようになってくる。自然界に存在しない人口的な味覚を覚えるとともに、サルが威嚇せずとも自ら進んでエサとしてくれたりする人間たちを前に、サルたちは『弱いヤツが強いサルに上納している』としか思っていないのかもしれない。
人間たちとの接触が濃厚な地域ほど、お互い困った問題が生じている。日本でもサルとの関係に手を焼いているところは少なくない。いろいろ工夫しても知恵のある動物なのであまり効果がなく、サルが匂いを嫌うとされるヤギの放牧をするといった消極的な対抗策を試みている地方もあるらしい。
〈続く〉

劇場『雑踏』

昔、20歳前後の大学生だった私が初めてインドに来たとき、鉄道でマイソール駅に夜明け前に到着。しばらく時間を潰そうと待合室に入り、荷物を床に置いて一息ついた。近くに座っていた、きちんとした身なりの男性ボソボソと話しかけてきた。
『I need your help. 実は夜行列車でサイフをスラれてしまいまして・・・』
彼はバンガロールから列車でやってきたのだという。寝ている間に・・・というのはときに自分自身も不安に感じることがあり、身につまされるものがあった。
『後日、必ず返しますからお金を貸してください』

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Namaste Bollywood #08

Namaste Bollywood #8
早いもので、ボリウッド専門情報誌Namaste Bollywoodも第8号目である。前号に引き続いて今号の特集は『Bollywood Beauty part 2』だ。前回取り上げられていたマードゥリー・ディクシト、ジューヒー・チャーウラー、カージョルといった顔ぶれの次の時代を担うアイシュワリヤー・ラーイ、スシュミター・セーン、ビパーシャー・バスーといった女優たちが登場する華やかにして艶やかな誌面。

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ナマステ・インディア2007

 
 
曇りときどき雨という予報どおりの天候のもと、東京渋谷区の代々木公園で『ナマステ・インディア2007』が開催された。
午前中、ときおり雨がやや強く降りベッタリと湿った天気のもと、人出もまばらで閑散としていたものの、昼すぎからほぼ雨が止むと会場が急に込み合うようになり、昨年同様の賑わいとなってきた。
日本人のインド舞踊家たちによるバラタナティヤム、UPとハリヤナーおよびラージャスターンの舞踊団、古典音楽などのステージの人々の目が釘付けとなり、カラフルな衣装で踊るバングラー、ボリウッドのダンスともなれば、舞台の前で派手に踊りまくる人たちも大勢あり、素晴らしい盛り上がりを見せていた。

 
人気のプログラムは多かったが、会場で配布される案内のチラシに『ヨーガ・レクチャー』とあり、誰が来るのかな?と思っていたら、なんとスワーミー・ラームデーヴであったのには非常に驚いた。ついに日本でも大きなブームを呼ぶのだろうか。ビリーズ・ブートキャンプの後に続くのは、スワーミー・ラームデーヴのヨーガビデオなのかもしれない?何かにつけて『インド』がブームのこのご時世、ありえないことではない。
Swami Ramdev
Swami Ramdev
このイベントは1997年にすみだリバーサイドホールで開催されたのがはじまりであったと記憶している。規模といい来場者数といい当時とは比較にならない。また会場で目にするインドの人々の数も飛躍的に増えている。それだけ日印間の距離が近くなり、日本におけるインドという国、インドの人々のプレゼンスが向上したことの証でもあろう。
9月30日も引き続きこのイベントが同会場で催される。明日の空模様も同様らしいが、きっと本日以上の大盛況となるに違いない。

子どもたちの楽園 2

National Rail Museum
National Railway Museumは、古い車両を屋外展示するエリアとミニチュアや資料などをもとに歴史を解説する屋内展示のエリアから成る。
植民地時代の三等車両、巨大な蒸気機関車、家畜運搬車両、脱線車などを取り除くためのクレーン車両など、異なるゲージ幅のさまざまな車両が置かれている。
サルーン車両
山岳地のトイトレインで使われた小さな可愛らしい機関車に客車、旧藩王国内の路線で使用された王族用のサルーン車などもなかなか興味深い。これらの多くが当時のイングランドのグラスゴウをはじめとする英国および欧州の先進工業地域で製造されたものであることが、車両にはめ込まれたプレートの文字から見てとれる。
グラスゴウで製造されたことを示すプレート
ちょっと変わった風体の乗り物もある。20世紀初頭には、パンジャーブの一部地域で『モノレール』が走っていた時期があったらしい。もちろん高架を走る現代的なものではなく、地上に敷かれた一本のレールを頼りに走る蒸気機関車だ。車両が転倒しないように補助輪が付いているのが何ともユーモラスである。訪れたときに、ちょうどこの古い車両を走らせているのを目にすることができた。
20世紀初頭の『モノレール』
『モノレール機関車』はドイツのベルリンの会社が製造したものであった。
時代ものではないが、敷地内を一周するミニチュア・トレインも人気だ。ウチもそうだが、周囲でもまた子供たちは敷地内でいくら時間を過ごしても遊び足りず、「そろそろ帰るよ」という親に「まだ帰りたくないよう!」とせがんでいる姿を多く目にした。
ここはどうやら子供たちの楽園のようだ。
 

National Rail Museum