インド代表チームがやってくる!

 6月9日の夕方、埼玉スタジアムジャナ・ガナ・マナと君が代が流れることになる。ご存知「2006 FIFAワールドカップ」のアジア一次予選グル−プ3のトップをめぐり、二勝無敗で独走する日本と、一勝一敗で三位につけているインドが対戦。試合の様子は夜7時からテレビ朝日系列で生中継される予定だ。
W杯インド代表チーム
 FIFAランキングでは、格上のシンガポール(110位)を下す頑張りを見せたインド(139位)。アジアでは韓国と並ぶ強豪・日本(25位)との実力差は計り知れないが、W杯本大会出場常連国となりつつある日本チームを相手に、インドがどれだけのプレーを見せてくれるか期待したい。
 何を隠そう昔はサッカー小僧だった私。間違っても、日本の引き分けや負けといった大失態は期待しないが、往年のインドファンとしては、インドが記録的な得点差で負けるなどという悲しい試合は見たくない…複雑な心境である。
 試合内容とともに気になるのはスタジアムの観客席の様子。はるばる母国の代表チームがやってきても、クリケットとは違い、インドにおいてサッカー人気は特定地域に偏っている。頼みの綱は、IT系プロフェッショナルを中心とした在日カンナダ人(カルナータカ州出身)たちだが、あいにく試合は平日の夜。忙しい彼らが会場まで足を運ぶだろうか?インド代表ゲームシャツを身にまとい、三色の国旗をはためかせて熱く応援するインド人の姿を見れるのか?
 この試合の後、9月8日に今度はカルカッタでインド側が日本代表を迎え撃つことになる。インドのホームゲームで、しかもサッカーが人気の西ベンガル州都だ。どんな盛り上がりを見せてくれることだろうか。 ともあれ、6月9日と9月8日の両日、日印サッカーファンはスタジアムに集合!


●関連サイト
THE INDIAN NATIONAL TEAM
ステファン・コンスタンティン監督のWEBサイト
Kahkashaan:メヘンディー掲示板
「インドも応援。アジア第1次予選」「観戦前に選手を知る。(続き)」ふたつのスレッドで話題。選手の顔と名前をチェック。
スターとして 先駆者として―インド主将ブティア(読売新聞)
サッカーリンク集 「さっかりん」
日本国内ではインド代表チームの情報はほんと少ないようだ。
パキスタン・インドにおけるサッカーボールの生産と児童労働
日本のサッカボールもインド製!? ボールにまつわるちょっと暗い話。

ヴェラッパさん再選

photo by www.globalaging.org
 以前、きまぐれピックアップでもふれた「最高齢のインド現役国会議員」ラーマチャンドラ・ヴェラッパさん。元々は国民会議派だったが、現在ではBJPに所属。総選挙での再選を目指して立候補していた。
 その後どうしたのか気になっていたが、調べてみれば見事当選。国会議員の高齢記録をさらに伸ばすことになった。しかし、厳しい選挙戦で体力を消耗したのか、体調を崩し、現在は病院で療養中とのこと。
 こんな年齢で、議員という責任ある仕事がまっとうできるのか、と心配に思う人も少なくないだろう。彼が続投できるのは選挙区の人びとからの信頼が厚いためだが、彼にかわる魅力ある人材が出てこないという背景もある。
 インディア・トゥデイ誌の懸賞付世論調査の中で、こんな質問を見かけたのを思い出した。
●政治家に65歳定年を設けるべきか?
●国会または州議会の議員に選出されるのを、
 五期以内に制限するべきか?
●大臣(首相を含む)を務めることのできるのを、
 二期までに制限するべきか?
 インドは総人口の54%が25歳以下という若者の国だが、国会議員の平均年齢は55歳以上で、中央政府閣僚ともなると平均61歳を超えるという。
 社会の年齢構成に見合った政治の若返りも必要だが、言うまでもなく高齢者も社会の大切な一部である。一世紀近く生きてなお、社会の第一線で活躍しようというのだから実に頼もしいおじいさんだ。
 政権が中途で解散することがなければ今回の任期は5年。5年後には、ヴェラッパさんは99歳。こんな型破りな人がいるのもまたインドらしい。


●ヴェラッパさんの近況
記事によって年齢が違うのは、「やっぱり」という感じ。
心配無用!ワシは元気だ (The Hindu)
Good day? bad day (BBC)

寄港地から格安フライトはいかが?

Air Asia
 妙チクリンな料金でキャンペーンを打っている航空会社があるとは聞いていたが、いくらなんでもこんなに安いとは!
 タイやマレーシアを中心に、空のネットワークを広げているエア・アジア。限られた座席数とはいえ、バンコク―ナコンラチャシマー間をたった9バーツ(1バーツ=約3円)で乗せてくれるオドロキのキャンペーンを打ち出している。バンコク市内を走るエアコンバス並みの料金で、そんな遠くまで連れて行ってくれるとは!
 それ以外に、マレーシアのクアラルンプルからペナンまで、9.99リンギット(1リンギット=約30円)というチケットもある。どちらも空港税や保険その他500円ほどプラスアルファになるが、それにしても驚愕の安さだ。
 日本で働いている私としては、目下、お金よりも時間が欲しくてたまらないが、インド帰りに、バンコクやクアラルンプルに立ち寄る人は少なくないだろう。この超格安の便を利用された方があれば、ぜひお話をうかがいたいものだ。
 それにしてもいまだ割高なインド国内の空の便。価格競争の波がやってくるのはいつの日のことだろうか?

「圧力鍋」と「造反有理」

cooker bomb
 「インドからネパールへの圧力鍋の持ち込みはご法度」という決まりがあることをご存知だろうか。たかが圧力鍋とあなどってはいけない。取り締まりはかなり厳しく、禁を破ったものは警察に拘束されることもある。
 禁止の理由は治安対策。「鍋が危険物?」と首をかしげる向きもあるかもしれないが、大量の火薬と組み合わせることで、圧力鍋は強力な時限爆弾に簡単に変身する。これらは、ネパール各地で頻発しているマオイスト(毛沢東主義者)のテロに頻用されているのだ。
 調理器具の販売業者にとってはとんだトバッチリ。高地で煮炊きするために持ち込んだ道具に難クセつけられて困惑する外国の登山隊もあるようだ。
 圧力鍋はガスコンロとともに、インド・ネパール主婦たちの家事の負担を軽減してきた。家庭でも食堂でも、あの「シューシュー」という音が聞こえてくると、条件反射的に「さあ、ご飯だ!」とお腹がグウと鳴る。アットホームな温もりを感じさせる生活音のひとつである。
 家族団らん、あるいは仲間たちとの食卓に並ぶ、おいしい料理を作ってくれるはずの調理具が、こともあろうか、多数の人々の命を殺めるとは想像するだけでも恐ろしい。
 いまや世界のほとんどの国で、「共産主義」や「革命」というボキャブラリーが歴史的用語となってしまった感もあるが、ヒマラヤ山脈の一角ではいまでも現実味を持って受け止められている。
 マオイストの活動に加わる人びとの中には、少数民族と女性が多い。被抑圧者たちの切羽詰った状況が団結力を生み、暴力によって恐怖を煽り、服従させることによって勢力を拡大する。「政権は銃口から生まれる」という毛沢東の人民戦争論を忠実に実践しているのだ。
 狭いながらも民族ゴッタ煮状態のネパールは、現在、内側から相当な圧力がかかっている。今後、うまく蒸気を逃がすことができるのか、それとも破裂してしまうのか予測がつきかねる。
 隣国インドでも、規模は小さいがナクサライトのような左翼過激派を抱えている。地続きで相互に人びとの往来が盛んな両国。国境をはさんだインド側でも過激思想や違法な武器の蔓延といった心配もある。
 ネパールで事業、あるいは投資を行うインド人たちが、マオイストの強請りや攻撃の対象になっているため、状況次第では両国の関係にもヒビが入りかねない。今後の成り行きが気になるところだ。
 政府が治安対策を強化したところで、反乱を生む土壌は変わらないだろう。なにしろ毛沢東語録によると世の中は「造反有理」なのだから。


▼関連リンク
・圧力鍋爆弾テロ:
Army claim 18 Maoist killed
Violence in Nepal escalates
Youth shot dead, bomb blasts rock valley
・日本人の日記から:
ポカラ空港「圧力鍋持ち込み」でモメる(Osaka Alpine Club)

インドの新しい顔

マンモーハン・スィン新首相 / photo by rediff.com
 すったもんだの末、ようやくインドの新しい首相が決まった。インドの新しい顔となったマンモーハン・スィン氏は、1990年代初めに国民会議派=ナラシマ・ラオ政権で財務大臣を担当。91年の経済危機を乗り越えて、その後の成長へと続く改革の道を切り拓いた。当時のラオ首相の最大の功績は、彼をこのポストに起用したことだとまで言われる。
 1932年、現在パキスタン領内にあるパンジャーブ州西部生まれ。パンジャーブ大学、オックスフォード大学、ケンブリッジ両大学で学んだ後、国内いくつかの大学で教えた経済学者であるとともに、中央銀行総裁をしていたこともある。
 パキスタンのムシャラフ大統領(インドのデリー生まれ)とともに、南アジアの両大国のリーダーの生まれ故郷は、そろって国境の反対側ということになる。このふたつの国の血のつながりの濃さを象徴しているようだ。
 マンモーハン・スィン氏はインドで初めてのスィク教徒(非ヒンドゥー教徒としても最初)の首相でもある。彼によって「名前の綴りにRが含まれる人物は首相になれない」という謎めいたジンクスは破られた。
 過去のインド首相で、自身がこれほど経済に明るい人物がいただろうか。どこから見ても異色な新リーダー。会議派政府を閣外協力する左派との関係の舵取りが難しいと思われるが、今後の手腕に多くの人びとが期待しているに違いない。