デーラー・サッチャー・サウダーのグルー

刑期20年で服役中のデーラー・サッチャー・サウダーのグルー、グルミート・ラーム・ラヒーム・スィンが「しょっちゅう仮釈放で出てきている」ということで問題に。

スィク教系の教団だが、普通のスィク教徒たちからは異端視されている。殺人その他の罪で服役中だが、先代のグルーの誕生日、本人の病院受診その他で毎回ひと月程度の仮釈放を受けているようだし、ハリヤーナー州やパンジャーブ州の選挙戦のときにも出てきていたりするのは、政界との繋がりがゆえだろうか。

豊富な資金力も背景にあるようだが、逮捕されて投獄されている今も失脚することなく、デーラー・サッチャー・サウダーの現役グルー。

No more parole to Ram Rahim without permission: HC to Haryana govt (National Herald)

パンカジ・ウダース氏逝去

これはもう言葉にならない。あまりに残念。本日2月26日にパンカジ・ウダース氏が亡くなったとのこと。ガザル界の大御所、ヒンディー語映画の歌のリリースも多かった。青春時代の大事な思い出の曲もある。ご冥福をお祈りします。

合掌

Legendary ghazal singer Pankaj Udhas passes away (Deccan Herald)

インド版文革進行中

イスラーム支配やムスリムの歴史や文化に因んだ歴史的な地名がどんどん変えられていく。

「アリーガル(アリーの砦)」が「ハリガル(聖なる砦)」へ。イスラーム教徒による影響はなかったことにしようと、どんどん進んでいくのは地名改名に限らない。

学校のテキストからはムガル朝に関する記述は消え、マイノリティー(ムスリム)を擁護する政治は「トゥシティーカラン(甘やかし)」と非難。イスラーム教徒がヒゲを伸ばせば「カッタルパンティー(原理主義過激派)」呼ばわりされたり、凶悪事件でムスリムが犯人だと「イスラーム教徒が」という部分か強調されて報道されたりする。社会総がかりのムスリム叩きにも見える。ある意味、「インド版文化大革命」が進行中とも言えそうだ。かつて中国で旧体制関係者や地主階級など旧支配層が吊し上げられたように、インドではイスラーム的なもの、それに連なるものが叩かれる。世界最大級のムスリム人口(2億人超のインドネシア、1.7億人のパキスタンに次ぐ3位で1.7億人前後のインド)を抱える国であるだけに、今後の成り行きも気にかかる。

しかしムスリムやクリスチャンなど外来の信仰に対して非寛容であるのとは裏腹に、スィク教、仏教、ジャイナ教等のインド起源の信仰コミュニティーとは非常に親和性が高いこと、北東州のアッサムやマニプルなど、マジョリティーとはかなりカラーの違うヒンドゥー文化とも何ら問題なく融合していく「ヒンドゥー至上主義」のありかたには「寛容の国」らしい懐の広さも感じられるが、これはセクト主義とも教条主義とも異なる幅広い「インド的なるもの」の再構築を目指す政治運動であるからなのだろう。

その「インド的なるもの」のタテヨコの幅があまりに広いため、他所の国での「国粋主義」「右翼思想」とは比較にならないほど、緩やかかつ寛やかなものであるとも言える。それがゆえに、その「ヒンドゥー至上主義」の網の中に収まる多くの人たちにとっては、何ら窮屈さも不快さも感じることがない。イスラーム教やキリスト教の原理主義と異なり、人々の生活を縛るものがなければ、西欧化されたライフスタイルを否定するわけでもないし、お寺参りを強要することもない。ただサフラン色の旗印を笑顔で眺めながら、「ジェイ・シュリー・ラーム(ラーマ神の栄光を)」などと唱えていれば、それで良し。

それでいて汚職が比較的少なく、経済に明るく、為すべき施策をどんどん進めてくれる実務に優れた政権(BJP政権)が支持されるのは無理もない。

だがそれでも懸念されるのが政権のムスリム(及びクリスチャン)に対する冷酷な扱いである。

From ‘Aligarh’ to ‘Harigarh’: Uttar Pradesh Continues Its Name Changing Spree (THE WIRE)

ハッピーエンド

ウッタルカーシーでトンネル工事中に出入口が崩壊して、41人の労働者たちが閉じ込められて17日目。毎晩、インドのテレビニュースプログラ厶を見ているのだが、日々その様子が報じられ、なかなか救出に至らないこと、タイの洞窟で子供たちが閉じ込められたときに活躍したチームが協力してくれること、鉄パイプを通じて食料、水や酸素などが送られていることなどが、刻々と報じられており、非常に気になっていた。

そしてようやく、41人全員が救出されたとのことで、ホント良かった、良かった。

ひとりとして命を落とすことなく、もちろん若い人たちばかりであるらしいことも幸いしたのだろうけど、まだ極寒期ではなかったこともあるのだろう。

ビハール、UP、ヒマーチャルなどの彼らの実家にテレビクルーたちが派遣されており、そこから父親、母親が救出された息子たちと無事を喜び合っていたり、小さな子供がケータイで「父ちゃん、大丈夫?」と叫ぶのに対して、現場の父親が「心配要らない。元気だぞー!」と返していたりするのが画面に映る。別のシーンでは夫の無事をテレビ画面で確認した奥さんが安堵の表情で涙を浮かべていた。思わずこちらももらい泣き。

全国で連日大きく報じられたトンネル崩落事件だったが、ハッピーエンドで本当に良かった!

41 rescued workers emerge dazed and smiling after 17 days trapped in collapsed road tunnel in India (apnews.com)

11月は5州で選挙

インドのニュースをつけると、今年の11月に5州(ミゾラム、チャッティースガル、ラージャスターン、マッディャ・プラデーシュ、テーランガーナー)で行われる州議会選挙のニュースと関連のディベートプログラムがたくさん。

私がいつも観るのはヒンディー語ニュースであるため、ミゾラム州政治は地元少数民族政党の争いなのでメインストリームの政治と関連が薄くほとんど報じられないが、ヒンディーベルトのチャッティースガル、ラージャスターン、マッディャ・プラデーシュの3州は、まさにインド政治の主戦場なので火花が出そうな勢いでの報道。ミゾラムよりは扱いの頻度は高いとはいえ、南インドの重要州テーランガーナーについてもヒンディー語放送でフォーカスが当たる度合いはあまり高くはない。

このあたりについては、英語メディアでも拠点となる街の位置する都市やそれが属する州とその近隣州が中心となるため、ごくいくつかのメディアをウォッチングしているだけではインド関連のニュースをまんべんなく吸収しようとすることはできない。政治の潮流も州や地域毎に、まるで別の世界、別の国のようであったりするため、「日本の約8倍」という物理的な面積よりも、さらにインドの政治・社会的な広がりは大きい。

11月の5州における州議会選挙は、来年4月~5月に予定されている中央政府の下院選挙の前哨戦と位置づけられる面が強いため、内外からの注目はとりわけ高い。

インドでは伝統的に「注目されるムスリム政党」は存在しなかった。独立以来、ムスリム票を集めるのは中道左派の国民会議派(及び左派政党)、1980年代以降は特定の地域政党もムスリムからの集票に強いものが出てきたが、「国政で存在感を持つムスリムによるムスリムのためのムスリムの政党」というものはなかった。(独立以降、ムスリムの政党がなかったわけではない)

近年、大きく注目を集めているのがAIMIM。100年近く前にハイデラーバードで発足した政党だが、現在の党首アサードゥッディーン・オーウェースィーが指揮するようになってから各地に活動を広げるようになった。

ただし「ムスリムの政党」といっても急進的な宗教政党ではなく、オーウェースィー自身がそうであるように、リベラルで世俗的なイスラーム教徒による世俗政党。ゆえに国民会議派と支持層が重なるため、国民会議派とは犬猿の仲。

ゆえに「BJPのBチーム」などとも言われる。つまりAIMIMに票が流れた分、国民会議派の得票が減るからである。

5州の選挙結果、うちミゾラムは独自の密室空間のようなものなのでさておき、その他4州の開票結果がどのようなものになるのか、その結果を受けて来年の国政選挙(下院選挙)が極右モーディー政権の続投か、あるいは会議派率いるINDIA ( Indian National Developmental Inclusive Alliance)がこの流れを止めるのか、とても興味のあるところである。

Assembly Elections 2023 | Election Commission announces polling dates for five States; only Chhattisgarh to vote in two phases (THE HINDU)