ラトナーギリー 3 赤い大地と青い海

マハーラーシュトラ州南部からゴアにかけて、いわゆるコーンカーン地域では、ラテライト質の土壌から、大地が赤く見える。当地の典型的な石建材はこれ。気泡のようなものが入っており、切り出しても表面がデコボコの石。比較的硬度は低いようで、加工はしやすそうだ。

この地域では丘陵地が続くことから、断崖絶壁のすぐ横に穏やかな浜辺の景色があったりする。いろんな眺望が楽しめてなかなか良い。インド人の間では、リゾートとしても知られるラトナーギリーである。

今後、トレッカーの間で赤丸急上昇?のヒマラヤの渓谷

インディア・トゥデイ5月24日号によると、ウッタラーカンドのハルシル(HarsilまたはHarshil)渓谷、ニラーン(Nilang)渓谷への訪問にインナーラインパーミットが要らなくなる方向での検討が進んでおり、実現目前まできているそうだ。
実のところ、私自身はハルシルもニラーンも知らなかったのだが、1962年の中印紛争以来、中国国境に近いため、軍事上の理由で入域が制限されていたとのこと。
風光明媚でとても良さそうなエリアらしい。氷河を目にすることができるところもいくつかあるらしい。
ウッタラーカンドの観光案内関係サイトに風景写真が紹介されているが、眺めているとぜひとも訪れたくなってきた。

Harsil Photos (euttaranchal.com

見どころが無尽蔵のインドだが、こうして新たに名所がドンドン加わってくるのがまた嬉しい。

チトワン国立公園2

ジャングルウォーク

早起きしてチトワン国立公園のジャングルウォークに参加。参加、といっても、私以外にカナダから来た若い男性がいるだけなのだが、安全面への考慮からガイドが2人付くことになっている。

まずはこの船で河を進んで水鳥を観察
船着場の対岸にアリゲーターの姿
河で洗濯する人々

川、草原、深いジャングルと変化に富む国立公園を徒歩で行くのは楽しい。様々な水鳥を含めた鳥類、ワニ、サイ、何種類かの鹿などを観察することが出来た。

ガイドのひとりは、地元先住民のタールー族で、動物の生態に詳しいだけではなく、彼の民族や村の話も聞くことも出来たのは幸運である。

トラの足跡
サイ

水際では、トラの足跡をいくつか見つけることも出来たが、歩いている最中にトラとばったり遭遇することがあったらそれはそれで困るかもしれない。ガイドたちが手にしている棍棒が威力を発揮することを願うしかない。

ちなみに英語のjungleは、英語の語彙を構成する三大要素であるローマン系、ノーマンフレンチ系、アングロサクソン系のいずれでもなく、インド亜大陸のजंगल(jangal)からの借用語。他にも、大航海時代から植民地期に至るまで、もともとの英語には無かった概念や事象などを表す語彙が南アジアのボキャブラリーから吸収されているのだが、jungleについても、それまで英語で抱えていた『森林』を意味する語彙では表現出来ない奥深さと、畏れがあったのではないかと想像したりする。

徒歩で歩くのは愉しいのだが、危険な野獣に遭遇して窮地に陥ることはないのか?ということがときどき頭の中をよぎる。そういうケースは皆無というわけではないようだが、これまでの経験値で危険は少なく、動物たちをそこそこ近くで眺めることが出来るコースが選択されているのだろう。それでもやはりちょっと気になるが。

ジープサファリ

宿に戻って昼食を済ませた後、今度はジープサファリに参加した。ひとつのグループ単位が10人ほどのようで、他のところで申し込んだ人たちと合流して1台のジープで回る。

だが当然、公園内の未舗装ではあるが、道路を走ることとなる。両側はジャングルであったり、深い藪であったりする。そのため動物はあまり見ることができなかった。何種類かの鳥、ハヌマーンラングール、アカゲザル、牛くらいある大きな鹿、クロコダイルくらいだろうか。

最後のほうで訪れた大きな沼には、ずいぶんたくさんのクロコダイルが日向ぼっこしていた。気持ち良さそうだが、非常に危険なワニ。すぐそばではワイルドボアが水際で草を食んでいたが、こういうのが餌食になるのだろう。

クロコダイル

国立公園内のワニのブリーディングセンター外にいたのは、ベンガルタイガー・・・ではなくネコ。人が来ると、とりわけスナック菓子の袋をもっていると、足元にまとわりついてねだる。気品のある顔立ちで美しいネコだった。

ワニのブリーディングセンター

午前中のジャングルウォークを100とすれば、午後のジープサファリは30点の赤点レベルであった。森林や灌木など、視界を遮るものが少ないロケーションでの場合と異なり、森林地域でのジープサファリはこれまであまり楽しめたことはない。大型の獣が道のすぐ近くに潜んでいたとしても、往々にして獣自身はこちらの動きをつぶさに観察しているものの、ジープ側からは見つけることが出来ず、というパターンとなる。

〈完〉

クアン・スィーの天然プール

ルアンパバーンから日帰りでクアン・スィーの滝を訪れた。

想像以上に美しい場所であった。幾重にもテラス状になった天然のプールがあり、それぞれから落差の少ない滝が流れ落ちている。水は茶色ではなく、少し濁った白色というのが珍しい。これが茶色であれば、さほどの名所にはならなかったはず。

天然のこれほどまでに美しいプールがあるとはまったく意外である。滝のエリアにいる間は、滝から生じるミストに満ちており、大変涼しい。

駐車場から滝へと向かう手前のところでは、保護されたというツキノワグマの施設があった。このあたりではかなり沢山棲息しているらしい。

ソーンマールグ2

ずいぶん早く出たのだが、まだ誰もいない時間帯に歩き回ることができ、テントで商っている人たちもまだ寝ている頃だった。早起きして出てきた甲斐があったというものだ。

しばらく歩きまわってから、スタートした地点に戻った頃、いくつものテントの食堂が店開きを始めていた。その中のひとつで、メギーのヌードルを注文。商っているのは、周辺地域の村々から来ている人たち。シーズン中はずっと滞在しているそうで、4月から9月あるいは10月まではこうしているとのこと。

彼らは、1年のうち半年ほどは、店となっているテントで寝泊まり。大変なことではあるのだが、やはり現金収入のために仕方ないのだろう。村で留守番をしている家族たちは、畑仕事にいそしんでいるとのこと。

氷河を後にして、来た道をクルマで下り始める。道路脇にはところどころ雪渓が残っている。真冬にはどんな景色になっていることだろうか。

本日同行したスウェーデン人のジャコーは、外国旅行といえば、いつもバードウォッチングが目的とのこと。川沿いに走る道路、途中で幾度か停車してはバードウォッチングを楽しむ。私にはヒバリの声にしか聞こえないようなものでも、彼には特定の鳥の姿が目に浮かぶのだという。冬はケララにいて夏になるとカシミールに移動する渡り鳥やカシミール地方のみに生息して世界中のどこにもいない珍しい鳥も少なくないとのこと。

少し大きな集落のあたりで、クルマを待たせてしばらく散策する。

集落を過ぎると土砂崩れの跡のようなものが見えるが、これは雪渓であった。

土砂崩れの跡かと思ったが、実は雪渓だった。

谷間の向こうに見える斜面を上ってみた。

その脇を進んでいくと小さな川の流れがある谷間に出る。そこから進んでいくと斜面があるのだが、なかなか急であった。斜面にへばりついて土地の中から出た岩をつかんで足元にあまり体重をかけないようにして、ともすれば崩れ落ちてしまう足元にひやひやしながら進んでいく。私の靴はタウンシューズなのでこれはちょっと無理だと観念して途中で引き返すことにした。靴が靴だけに、滑落しそうで怖い。

ジャコーはそのまま進んでいくのだが、やはり途中で観念したようで、私が集落まであと少しのところまで降りたあたりで振り返ると、ちょうど彼が下ってくる姿が遠目に見える。
上から降りてくると、土砂崩れに見えたものの正体がわかった。土砂崩れではなく雪渓である。表面が泥だらけになっているのだが実は雪。川の上に覆い被さっているため、冬季には相当の積雪があることがわかる。

雪渓のところどころから崩落しており、その下に川の流れが見える。
登るときにその上で何か作業している女性と子供たちがあり、ちょうど私たちが通るところで休憩していたので尋ねてみると、薪に使う木を採取しているとのこと。流されてきた木の破片や枝である。こうしたものを収集している人たちは山の斜面でもあったし、集めて頭上に載せて運ぶ人たちの姿もあった。

奇妙なのは、なかなか力仕事だと思うが、これは女性の仕事であるようで、こうした作業をしている人たちはどこでも全員女性たちばかりであった。

ここで見かけた女性は二十歳とのこと。子供は五歳。姉と弟かもしれないし、母親と息子なのかもしれないが、それは聞きそびれた。

私たちはクルマに戻り、あとは一路スリナガルへ戻る。

風光明媚なカシミール