メディアと言語圏

ウッタラーカンドはひどい荒天による洪水や地滑りなどで大変なことになっている。メディア各社がへ報じているところだがAajtakのようなヒンディー語メディアとともにIndia Todayの英語ニュースも24時間オンエアーされているのでご参考願いたい。

それにしてもヒンディー語メディアではインド北部各地のさまざまなニュース、とりわけ「ヒンディーベルト」は当然としても、その周辺地域のベンガル、グジャラート、そしてマハーラーシュトラ関係の出来事も報じられるいっぽう、南インドに関しては、大物政治家が突然亡くなったとか、大災害が起きたとか、よほど大きなことが起きない限り、ほとんど出てこない。ケーララ、タミルナードゥなどはまるで外国のようだ。

大きな国なので、言語圏が生活圏であり、興味関心の圏内であることがよくわかる。それがゆえに、各地方語の番組がそれぞれの地域では圧倒的な支持を得るのだろう。Zee TVのベンガル語のエンターテインメント番組は隣国バングラデシュでもよく視聴されているようで、人々の支持も高いようだ。同時にベンガル語によるZee News番組もなんとなく目にしているはずなので、インドの事情についても相当詳しいはずだ。たぶん西ベンガル州の人たちはバングラデシュで起きていることについてはあまり関心はないだろう。

バングラデシュからは休暇時期にカルカッタやメガーラヤ州などに家族や仲間と出かけたりする人は多いし、カルカッタで先進医療を受けるために定期的に出てきている人も知っている。そういうのもかなり多いらしい。やはりそのあたりでも、国は違っても同じベンガル語世界ということで、ひとつの「地元圏感覚」のようなものがあるようだ。

GNT (Good News Today)

常々、前向きで楽しく、人々が元気になるニュースばかり流す「ハッピーニュース・チャンネル」のようなものがあれば良いのにと思っていた。

巨大地震のような災害のときにも、新型コロナウイルスの流行が頂点に達してにっちもさっちもいかないときでも、そういう苦境で人々を救うべく奮闘している人たちや回復して元気になった人たちなどの姿もある。もちろんそうした状況とは関係なく、明るい話題というものは常にそのあたりに転がっているはずだ。ただ、何か大きなことが起きると、そうしたポジティヴな話題にスポットライトが当たらなくなってしまう。悪いことが起きると、畳みかけるように様々なチャンネルで繰り返し報じられて、気が滅入ってしまう思いをした人は多いだろう。繰り返し映像で流れるアメリカのツインタワーの崩壊シーンであったり、日本の東北で起きた津波の様子であったりといったものはその典型であった。

「ハッピーニュース」の需要はインドでも高かったようで、今年9月から、インドのIndia Todayグループのニュースチャンネル「AajTak」に姉妹番組「Good News Today」が加わった。前者はご存じのとおりインドや世界のニュースを人々に伝えるヒンディー語のニュース番組だが、このたび開始された後者は、まさに私が夢想していた「ハッピーニュース・チャンネル」そのものといった構想で開始されたものだ。いずれもインドでオンエアされているものが動画配信されており、もちろん日本での視聴することができる。

India Today Group launches Good News Today, India’s first and only positive news channel (India Today)

放送開始時の映像は以下のリンク先から閲覧できるが、コロナ禍の中でパンデミックに関する陰鬱な報道が非常に多い中で、「気分が沈むのでニュース番組を観たくなくなった」という声を背景に、人々が前向きになることができる、元気の出るニュースを届けるチャンネルとして開始されたとのことだ。「ニュースを変えるのではなく、視点を変える」ことをポリシーにしているのだそうだ。

Good News Today Live TV | GNT TV Live | Watch Live Good News Today Launch (Youtube)

ライヴ放送は、こちらから観ることができるが、「Good News」とは言っても、能天気に愉快なニュースを垂れ流すというものではなく、政治の動向、公害などの社会問題なども取り上げられているなどバランスの取れたものであるようだし、ニュースとニュースの合間にバジャンの演奏なども入ったりして和める。

インドのテレビニュースで多い誘拐、殺人などの事件、視聴者などが投稿したリンチ映像の転用などといった、お茶の間ではあまり目にしたくない凄惨な映像とは無縁のチャンネルは家庭の団欒のひとときなどで流れる、ある意味安心なニュース番組としても支持されるのではないかと思う。

国名・地名の表記

リンク先記事によると、諮問評議会定数45名のうち30名が直接選挙で選ばれたとのこと。この国の政治のことはよく知らないが、残りの15名はおそらく王族の指定席であったり、国王の指名する者であったりという具合なのだろう。それでもこうした形で民意が反映されることは悪くはない。

ところで国名は本来は「قطر‎」つまり「カタル」なのに、メディアではよく「カタール」と表記される。なぜ長母音を加えてしまうのかといえば、英語力での綴り「Qatar」の「ar」部分は「アール」であろうという連想から来るのだろう。日本語での外国地名表記のありかたについては、基本的に現地の読み方に準じるというスタンスはあるようだが、独自の文字(アラビア文字など)が用いられる地域では、英語での表記から日本語の読みが書き起こされるという揺れがあるようだ。

パキスタンの「ペーシャーワル」(پشاور)も同様で、長母音となるのは「ペー」と「シャー」の部分であのだが、日本のメディアではいずれも短母音となり、なぜか「ワル」が「ワール」となる。だが英語での綴りPeshawarを思い浮かべると、「Pe」「sha」のいずれにも長母音を暗示させるものはなく、「war」は日本語における慣用として長母音化される現象が起きるのだな、と推測される。

いずれも日本にとって馴染みのある土地ではないため、英文情報から起こされたものを記事にする際に、こうした形で定着することになったのだろう。

インドのIT産業隆盛により、急速に注目を集めるようになった90年代前半、その中心地となったバンガロール(現ベンガルール)については、当時すでに「バンガロール」でほぼ定着していたものの、ニューズウィーク日本版などを中心に「バンガロア」「バンガローア」という表記も散見された。「Bangalore」の語尾を「ロア」ないしは「ローア」と読んだらしい。

同様にかなり前のことになるが、旅行業界関係者が「Lahore」と「ラホーレ」と表記した例も目にしたことがある。日本語表記については、現地の読み(لاہور=ラーホール)ではなく、定着している英語表記をどう読むか?ということになっている例が少なくないように思われる。

女性の当選者なし 初の国政選挙―カタール (JIJI.COM)

Kindle端末買い替え

日本のアマゾン用にKindle Paperwhite(左)、インドのアマゾン用に9年前に購入したKindleを使用していたが、あまりに動作が緩慢になったので注文したKindleの一番安いモデル(右)が届いた。

前者は画面部分と縁部分の段差がなく、一枚のフラットなガラススクリーンで仕上げてあるのに対して、後者は画面の部分のみガラスのため段差がある。そのため操作感、ページめくり感は前者のほうが勝るとともに、画面の見た質感が実際の紙のごとく自然な風になっているとともに、黒地に白文字で表示する「ダークモード」も選択できるようになっている。しかし反応速度もストレージサイズも変わらないため、安い左のほうで充分な気がする。

日本アマゾンとインドアマゾンでそれぞれ別の端末を使っているのは、日米のアマゾンはKindleアカウントを結合できるのに対して、日印のそれはできないからだ。そのため専用の端末を用意する必要がある。

インドアマゾンで発行されたKindle書籍のうち、日本アマゾンでも購入できるものはとても少なく、価格も高くなる。ときには数倍にもなる。しかし不思議なのは、ときにしてその逆のケースもあることだ。日本アマゾン用に使用している左の端末で表示しているヒンディー語書籍がそんな例外だった。たまにそういうことがある。

インド訪問時には、いつも帰国前に書籍漁りをするのが儀式みたいになっていたが、Kindleで購入できる書籍であれば、それで購入するに越したことはない。送料はかからないし、あるいは重たい思いをして運んでくる必要もない。もちろん紙の書籍ならではの良さを否定はしないが、これを日本まで移動させるための手間とコストを考えると、やはり電子書籍はありがたい。ただしどんな本でも電子で入手できるわけではなく、紙媒体でしか出ていない興味深い本が多いのもインド。

それでもやはりコロナ禍にあって、電子書籍はなおさらのことありがたい。ウェブのやインドの電子版の週刊誌などに出ている書評で見かけた作品を、インドアマゾンで即座に購入できるからだ。まさにKindleさまさまである。

インドの食卓から

インド国営放送による「The Hidden Kitchens of North-East」というプログラムがある。国営だけに、日々、多言語・多文化のインド各地のニュースが様々な言語で画面で飛び交うが、民放ではあまり扱わないテーマも取り上げるのもそれらしいところだ。

これまで同局の「Wah Kya Taste Hai」のシリーズで、インド国内各地各種料理について、カシミール料理、パールスイー料理やチベット料理なども含めたさまざまなものを取り上げていたし、少し前にはラダック料理に関するシリーズものもあり、なかなか興味深く、お腹も鳴る。

「Wah Kya Taste Hai」にしても「THE Hidden Kitchens of North-East」にしても、放送後はYoutubeに上がっているため、これらタイトルを入れて検索すると、これまで放送された分が多数出てくる。観てみると楽しいことだろう。ただし言語はヒンデイー語のみである。

このリンク先は「The Hidden Kitchens of North-East」のエピソードの第1回目。

 

The Hidden Kitchens of North-East : Ep #01