「ムルシダーバードはどうでしたか?何の目的でムスリムのエリアに行きましたか?」
滞在を終えてインドから出国するところだった。コールカーター空港のイミグレーション担当官が手元の端末を操作しながら言った。
「えー!?」とビックリするのは私。
かつてムルシダーバードは、かつてナワーブが支配したエリアだが、今でもそこにムスリムが多いのかどうかは知らない。それはともかく、私がそこを訪問したことがなぜわかるのか気味が悪い。
担当官に「よくご存知ですね。宿泊したのはベーヘラムプルで、ムルシダーバードで観光しました。帰りにはカルナーで108 シヴァ寺院に参拝したり、ISKCONのマーヤープルも行きましたが。でもどうやってそんなことをご存知で?」と尋ねると、はぐらかして答えない。
おそらく担当官が見ていたのは、宿泊の際のC-Formの情報だろう。なぐり書きした用紙が、そのまま積み重ねられていくだけかと思ったら、ちゃんとオンラインで共有されているということらしい。そういえばC-Formのウェブ版もしばらく前から運用されているし。
こんな具合だと、もし誰かがデリーのジャマーマスジッド界隈のムスリム宿に泊まり、コミュナルなテンションが高くて観光地でもないUP州のモラーダーバード、ムザッファルプル、ムザッファルナガルのような、原理主義過激派と関わりのある人たちがいることで知られる街をハシゴしてデリーに戻ってからすぐにカシミールのスリナガルに飛び、デモや鎮圧が頻発するラールチョウクに滞在して、他の地域に行くことなく飛行機でデリーにとんぼ返りしてからすぐに帰国しようとしたら、「いついつどこで誰に会ったのか?」と、別室で詰問されることになるかもしれない。
インド訪問する人たちの足取りはインド政府によってモニターされている。もちろんインドの法律をしっかり守って物見遊山をする私たちには何らやましいものはないので、まったく気にする必要はないのだが、唐突に滞在先についてドンピシャリなことを言われると、さすがに驚いてしまう。
※内容は新型コロナ感染症が流行する前のものです。