「乗客の過半数以上が陽性」は誤り

先週木曜日、そして金曜日にイタリアからアムリトサルに到着したフライトから175名中125名、同じルートの別のフライトの290名中150名がインド到着後の検査で陽性と判明という驚きのニュースに腰を抜かしたが、どうやら問題は乗客ではなく検査機関にあったようだ。現在はこの機関は別の検査機関に交代させられているとのことで、もはやこのような驚愕の結果は出ていないとのこと。

だいたいイタリアから搭乗する前にも検査を受けているはずなので、目的地に着いてみたら「あら不思議!全乗客の半数や3/4が飛行中にアッという間に陽性に!」なんてことが起きるはずがないのだ。(笑)

インドでは、ときに物凄くいい加減な事が起きるものだ。

以下は当初伝えられていたニュース

125 passengers of Italy-Amritsar chartered flight test positive for Covid-19 (INDIA TODAY)

150 passengers of another flight from Italy test positive for Covid upon arrival at Amritsar airport (INDIA TODAY)

こちらは空港の検査機関に問題があったらしいことを伝えるニュース

Covid-19: India lab investigated over 298 positive tests on flights from Italy (BBC News)

Lab under scanner after 200 test positive at Amritsar airport (THE HINDU)

Covid positivity rate at Amritsar airport dips 5-times after lab change (Hindustan Times)

インドの第3波

12月下旬あたりまでは感染状況が落ち着き、1日の新規感染者数が6,000人前後になっていたインドだが、現在は感染拡大「第3波」により、本日1月9日時点で直近24時間の感染者数が14万人を超える事態となっている。

Coronavirus Live Updates: India Reports 1,41,986 New Covid Cases, 285 Deaths (INDIA TODAY)

https://www.ndtv.com/india-news/coronavirus-live-updates-india-reports-1-41-986-new-covid-cases-285-deaths-2697401

これに先立ち、1月6日には、アムリトサル空港でイタリアからのフライトで到着した160人の乗客のうち、125人が新型コロナ陽性というニュースが流れていたのだが、この日同じくイタリアからアムリトサルに着いた別のフライトにおいては、乗客290人のうち150名が陽性というショッキングなニュースもあった。

Punjab: 125 passengers of Italy-Amritsar flight test Covid positive on arrival (The Indian EXPRESS)

150 passengers of another flight from Italy test positive for Covid upon arrival at Amritsar airport(INDIA TODAY)

昨年10月にチャーター機での入国による観光客受け入れ再開、11月からは定期便を利用して入国する観光客の受け入れを再開していたが、世界で感染力の強いオミクロン株の流行していることにより、一度は緩めた水際措置を再度強化する方向に舵を切っている。

始まったばかりのインドの第3波。どこまで拡大していくことになるのだろうか。

メディアと言語圏

ウッタラーカンドはひどい荒天による洪水や地滑りなどで大変なことになっている。メディア各社がへ報じているところだがAajtakのようなヒンディー語メディアとともにIndia Todayの英語ニュースも24時間オンエアーされているのでご参考願いたい。

それにしてもヒンディー語メディアではインド北部各地のさまざまなニュース、とりわけ「ヒンディーベルト」は当然としても、その周辺地域のベンガル、グジャラート、そしてマハーラーシュトラ関係の出来事も報じられるいっぽう、南インドに関しては、大物政治家が突然亡くなったとか、大災害が起きたとか、よほど大きなことが起きない限り、ほとんど出てこない。ケーララ、タミルナードゥなどはまるで外国のようだ。

大きな国なので、言語圏が生活圏であり、興味関心の圏内であることがよくわかる。それがゆえに、各地方語の番組がそれぞれの地域では圧倒的な支持を得るのだろう。Zee TVのベンガル語のエンターテインメント番組は隣国バングラデシュでもよく視聴されているようで、人々の支持も高いようだ。同時にベンガル語によるZee News番組もなんとなく目にしているはずなので、インドの事情についても相当詳しいはずだ。たぶん西ベンガル州の人たちはバングラデシュで起きていることについてはあまり関心はないだろう。

バングラデシュからは休暇時期にカルカッタやメガーラヤ州などに家族や仲間と出かけたりする人は多いし、カルカッタで先進医療を受けるために定期的に出てきている人も知っている。そういうのもかなり多いらしい。やはりそのあたりでも、国は違っても同じベンガル語世界ということで、ひとつの「地元圏感覚」のようなものがあるようだ。

ヘロイン禍

芸能人などの有名人が逮捕されたら、大騒ぎして報道するのは、いずこの国も同じ。

インドでも同様で、シャールク・カーンの息子、アーリャンの逮捕関係のメディア露出は相当なもので、中には「ムスリムを標的にしたBJPの陰謀説」のような荒唐無稽なヨタ話をもっともらしく吹聴するニュース番組もある。

そんな中でのインディア・トゥデイの「ヘロイン禍」の特集記事。「インディア・トゥデイ、お前もか?」と思いながらページをめくっていったが、さすが「ちゃんとしたニュース雑誌」は、ゴシップ誌や半ニュース半ゴシップ誌と大きく異なる。

世界中のケシ関係の麻薬供給元の85%はアフガニスタンが占めているそうだが、近年はインドへの供給量が大幅に増えていることが、水際での押収量の増加で明らかなのだそうだ。先日もアフガニスタン発でイラン経由のコンテナがチェンナイで差し押さえられ、空前押収量を記録したとのこと。

麻薬を大きな収入源とするターリバーンの「怪進撃」の要因のひとつには、この関係の売上増が果たした役割もあるかもしれない。

同様に近年はパンジャーブ州で、とりわけ若年層へのドラッグ使用の蔓延が大きな社会問題になってもいるのは、ずいぶん前から聞いており、それを題材にした「UDTA PUNJAB(2016年)」という凄惨な映画が物議を醸したこともあった。

パンジャーブ州への薬物流入は、国境地帯の農村部で移送がなされる様子が同作品でも描かれており、背後には当然、パキスタン側の組織があり、これには同国の工作筋も関与していると言われている。

アーリャン・カーンの逮捕というのは、現在の麻薬禍において発生した無数の現象面での「ひとつの例」であり、背後にある動きこそ重要かつ深刻なものだ。

現象面の末端に過ぎない個人を叩くのではなく、背後の巨悪にメスを入れたインディア・トゥデイ誌の姿勢は、まさに社会の木鐸としての矜持だろう。

インディア・トゥデイ10月20日号

インドへの扉が開く日

現在、インドでは1日の新規感染者数が2万数千人といった具合であるため、人口規模が約1/10の日本における2千数百人程度に相当する。日本の初夏あたりには「第2波」でひどい状況にあったため「インドは今も大変」と思っている人もいるかもしれないが、今はインドと日本の感染状況はほぼ同程度である。

こういう具合であることを受けて、各国がインドからの渡航者受入れに動いていることについて、以下の記事を参照願いたい。

Canada latest in list of countries to allow Indian travellers; here are all international destinations open now (Firstpost)

また、インド側も今月末から来月初めあたりに、観光客受け入れ再開のアナウンスを予定しており、具体的にどのような内容のものとなるのか注目されるところだ。

Foreign tourists to be allowed to visit India soon (Travel Daily Media)

先進国を中心にワクチンが普及してきている現在、より感染力の強い変異株の登場とワクチンによる抗体維持が続く期間に限りがあることが判ってきたことなどにより、開発時に期待されていた効果がフルに発揮されているとは言えない部分はあるとはいえ、今後は国と国との間の往来も次第に制限が取り払われていくことだろう。

日本においても、遠からずこうした緩和が予定されているが、帰国時の隔離などが免除されるようになれば、再びインドと日本の行き来が盛んになっていくはず。

今後の推移を見守りたい。