バングラデシュの翼 日本乗り入れ便運休

biman bangladesh
 長らく親しまれてきた(?)バングラデシュ航空の東京便が運休となる。(よくビーマン・バングラデシュという表記を見かけるが、本来『・』の前に部分については『ビマーン』とすべきである)
 この決定がなされたのは今月に入ってからだが、少なくとも今の時点では11月から来年3月まで、東京発着便の運行停止が確定している。4月以降については今のところ未定。同社に問い合せてみたところ、理由は『不採算路線のリストラによるフライトネットワーク再編成』とのことである。
 無論、先進国の首都に飛ばすから儲かるというものではない。今年5月のファクルル・イスラーム・アーラムギール航空大臣の発言によれば、ダッカ・ニューヨーク便についてはフライトあたり8万ドルの赤字が出ている計算になるとそうだ。もちろん発着にかかる費用や燃料費のみではなく、アメリカ現地に事務所を構えて操業するにあたってかかるトータルなコストを含んでの話である。

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加齢と闘うスターたち

 今年41歳になるサルマーン・カーン。特にインドではかなり大きな息子や娘がいても全然おかしくない年齢だが、80年代後半のデビュー当時と変わらないような役柄を演じ続けている。1965年生まれのアーミル・カーンだってまだ学生の役を演じることができるし、シャー・ルク・カーンもそんな歳にはまだまだ見えない。それでも3人とも1965年生まれだ。ジューヒー・チャーウラー、マードゥリー・ディクシト、アクシャイ・クマールらは彼らよりもふたつ下で今年39歳。
 でもこうした年齢は、日本はもとよりインドにおいてはなおさらのこと名実ともに立派なオッサンでありオバサンである。
 そういえば今では老人役ばかりの旧世代スターたち、今年64歳になるアミターブ・バッチャンは、50歳を目前にした15年前の『HUM』あたりまでは若者役が多かったし、リシ・カプールも10年少々まではまだまだ青年の役柄で映画に出演していた。90年代に差しかかったあたりは彼らにとってキャリアの大きな節目であった。
 観客側にしてみれば、野心溢れる青年たちがギラギラした中年期を経ることなく、いきなり年配者としてスクリーンに出るようになったのだから、どうも解せない気がするのは私だけではないだろう。

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スリランカな週末 東京渋谷の代々木公園

 10月14日(土)と15日(日)に今年で3回目となる『スリランカフェスティバル2006』 が開催される。
 日本におけるスリランカのプレゼンスの規模の違いを反映してちょっと小ぶりだが、ステージで繰り広げられる多様なプログラム、様々な業者や団体等による出店などと合わせて、ちょうど先日同じ場所で行なわれた『ナマステ・インディア』のスリランカ版だといえる。
 秋の柔らかな陽射しのもと、おいしい紅茶を楽しみつつ熱々のホッパーをほおばり、香り高いカレーを楽しんだ後はアラックを片手に舞踊や音楽を鑑賞しながら、ゆったりとした週末を過ごしてみるのはいかが?
スリランカフェスティバル2006

サッカー インド大善戦!

 10月11日、バンガロールのスタジアムで君が代に続いてジャナ・ガナ・マナの演奏がなされた後、インド時間午後5時40分、日本時間にして夜9時10分にAFCアジアカップ予選A組インド対日本の試合がキックオフされた。
 すでに本大会行きが決まっている日本にとっては消化試合に過ぎず、今回の大会ではすでに後に続くものがないインドにとってもこの試合で具体的に得られるものは特にない。それでもインドにとっては世界レベルのチームとの対戦は決して多くない貴重な機会である。特に若手の選手にとっては自らの実力を自国のサッカー協会や所属クラブにアピールする絶好のチャンスだ。開催地がバンガロールということもあり、自国ファンの目の前でインドがどこまで頑張ることができるのか大いに期待されるゲームだ。
・・・とはいうものの、スタンドには空席が目立つ。サッカー熱の高いカルナータカで戦う自国代表の試合がこんなものであるのはちょっと寂しい。
 前半の日本は2点を挙げたとはいうものの、明らかに格下(FIFAランクを書く)のチームのペースに合わせてしまい、持ち味のスピード感を欠く退屈な試合をしていたと言わざるを得なかった。ただしこの両得点を挙げたガンバ大阪の播戸の気持ちの入ったガッツあふれる姿勢は良かった。風貌、体格といいプレーのスタイルといい、若いころのインドのエース、ブーティヤーを彷彿とさせるものがある。
 そのいっぽうインドはといえば、FWのバイチュン・ブーティヤーはインド、いや南アジアを代表する名手とはいえ、前線に張っている彼にいくつかのいいボールが渡っても、やはり相手が日本くらいのレベルになると特に目立たないごくフツーの選手となってしまうのはやはり盛りを過ぎたためもあったのかもしれない。全般に技術・戦術のレベルの差が大きいため個々の選手に気持ちの余裕がないのだろうが、せっかくフリーでボールをキープしていても平凡なミスにより失ってしまうシーンが目立つのは残念だった。
 だがインドは思い切り引いて守りを固めてカウンター一発を狙う・・・という形でくるだろうという大方の予想に反して、中盤の高いところから果敢にプレスをかけてくる積極的なスタンス、だからといって簡単に裏を取られることない守りの固さは大いに評価できるだろう。
 個々の選手としては中盤のマンジートはなかなかいい仕事をしていたし、ステーヴンも卓越した技術を見せてくれた。ディフェンダーのプラディープが自陣深いところから時おり前線へ繰り出す長いパスも魅力的だった。 誤解のないように付け加えておきたいが、FIFA世界ランクの評価ほどにはインド選手の個人技のレベルは決して低くないのである。

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ICパスポート(2)

 ところでインドでは、外圧よりもむしろ国内的な理由からパスポートの電子化急いでいるようだ。テロリストや犯罪者たちによる変造・偽造パスポートによる入国を防ぐことが、インドで『E-PASSPORT』と呼ばれる新型パスポートの導入の準備が急ピッチで進める主要な理由のひとつだ。 電子チップに記録されたデータにより、出入国地点でそれをチェックする設備が備え付けられている限りは、インドはもちろん他国でも不正な旅券を行使しようとした者を摘発することが容易になることが期待されている。もちろん入国審査の迅速化にも有効であることから、近年とみに増加しているインド発着の空の旅客の出入国管理の効率化にも役立つ。
 インドでは2007年から電子パスポート導入の試行期間として、政治家や外交官といった公用で外国を訪問する人たちのパスポートを電子化する予定。この中で技術的な改良や検討を加えるとともに、新しいタイプ旅券発行に対応できる体制を整えたうえで、ある時期を境にその後更新や新規発行がなされるものはすべて『E-PASSPORT』化されるのだろう。今年6月中旬の報道では『2013年までに』電子化を完了させる予定らしい。もちろんそれまでにE-PASSPORTを市民に発行する・・・といった悠長なものではなく、現存のものも新規発行のものからも旧タイプの旅券を排除し、すべて新しいタイプのものと入れ替えるということである。
 ただし技術的な問題もさることながら、ことインドのような国にとっては費用の問題も頭痛の種である。現行の旅券の場合は作成におよそ1500ルピーかかるというが、電子化するにあたり埋め込まれるチップひとつの価格が500ルピー近い。これらは旅券取得者に転嫁できるにしても、電子パスポートを作るための設備、出入国チェックその他必要な場所で電子情報の読み取り確認ができる装置等々の導入にあたっての初期費用だけでも相当なものだろう。もちろん一連の動きを新たなビジネスチャンスとして、これらに関する利権をめぐって水面下ではかなり前からいろいろな動きがあるはずだ。
 進んでいる部分は確かに目を見張るものがある反面、遅れているところについては目を覆いたくなるような状態であることが珍しくないインド。せっかく電子化されてもパスポート申請を取り扱う部署の腐敗や怠慢から不正な旅券の取得が発生したりすることもあるかもしれない。それにクレジットカード同様、新型パスポートの偽造だって不可能ではないそうだ。技術の進歩の権力側の専売特許ではなく、それに対抗する側もさらに腕を上げている。こうしている今もどこかで悪意を抱く人々が偽造・変造IC旅券の作製技術の確立に日夜取り組んでいることだろう。
 こうしている今も世界中で数え切れないほど多くの人々が国境を越えて移動を続けている。その中で旅券や査証などの偽造や変造およびその行使を行なう人はごくごくひとにぎりの例外的存在である。こうしたごくわずかな数の人たちによる不正を防止という非効率にしてあまり生産的とは思えない目的のために、世界規模で多額の資金や労力が費やされることになる。
 またICパスポートの導入について法的、政治的、人権上の問題が懸念されている部分もあるし、自国政府の権限の及ばない外国政府の手に自国民の個人データを蓄積させるのはいかがなものかという疑問も提示されている。これらすべてを含めて、善意の市民たちが払わなくてはならない代償はいかに大きなものであろうか・・・と思うのは私だけではないだろう。

Indians to have e-passports by 2013 (Times of India)
便利だけですまないIC旅券:入管法改正案の問題点 (JANJAN)