白い塩の砂漠

朝9時の宿の前でオートがやってくるのを待つ。
先日久しぶりにお会いしたジェーティーさんにオートのチャーターを頼んでみたところ、「日本人女性が予約しているのでシェアすることにしては?」と言われたので、そうすることにした。本日向かうのはブジの町から北へ90kmほど進んだところ、Great Rann of Kutch (大カッチ湿原)の周縁部にあたる地域。

カッチ地方には、Great Rann of Kutch(カッチ大湿原)とLittle Rann of Kutch(カッチ小湿原)とがあるが、これらの「大」と「小」はあくまでもこれらふたつの面積の比較上の話であり、どちらも広大な湿原である。湿原とはいっても内陸部や高原などにある湿原と異なり、真水と海水が混じり合うものであることから、モンスーン期にはドロドロの湿地帯、乾季には広大な砂漠状態となるなど、季節によってその姿を大きく変化させる。

これらの地域は、人間にとっては不毛な大地で、製塩業や風力発電くらいしか利用価値のない土地ということになるものの、農業を含めた人々の経済活動に不向きであるがゆえに、人口も非常に少なく、人の手が入る度合いが少なかったがゆえに、独自の自然環境が豊かに残っているとされる。

カッチ湿原には野生動物の保護区が多く、以前カッチ小湿原にある野生のロバの保護区を訪れたことがある。

Rann of Kutch 1(indo.to)

Rann of Kutch 2 (indo.to)

Rann of Kutch 3 (indo.to)

Rann of Kutch 4 (indo.to)

野生のロバ以外にも、ニールガーイその他の大型草食獣、オオカミ等も棲息している。またフラミンゴその他の大型の渡り鳥も多く飛来しては、乾季にはカラカラに干乾びた大地となるこの地域に点々と残る水場で羽を休めていることから、この時期にはバードウォッチャーたちにとっての楽園でもある。

ホワイト・ラン、ホワイト・デザートと呼ばれるエリアまではかなり距離があるようだ。片道で90kmほどあるため、往復で180kmくらいになる。そんな長距離をオートで走ったことはこれまで私にはない。片道で3時間くらいかかってしまう。午前中はかなり寒いし、本当ならばタクシーのほうが良かったであろう。実際のところここに行く車両多かったのだが、私達以外はすべてバスか乗用車であった。速度も倍くらい違うため、移動に倍くらいの時間がかかってしまうことにもなる。

多少の植物が繁っていたり、まったくのカラカラの大地であったりという程度の違いで、基本的には単調でまったくフラットな景色の中を進んでいく。ブジからあまり遠くないところに枯れ河があった。雨季には流れる河であるとのこと。ブジからの行程を三分の二くらい進んだところにはビランディヤーラーという村があり、道路から少し外れて立ち寄る。

遠目には魅力的な伝統的なカッチの村に見えたのだが、実は観光客のためにしつらえてあるものであるという側面が強いことが判った。伝統を模したもので、それはそれで面白いのだが、ここでの稼ぎは女性たちによる手工芸らしく、どこの家でもそれらを販売している。売っていたものはビーズ細工であったり、刺繍であったりするのだが、稚拙な造りのものばかりであった。それなのにやけに高い値を言ってくるのだ。村の家屋内にはヒンドゥーの神の絵が壁に貼ってあるところもあったが、村の入口にモスクがあり、やはり運転手のバラトさんもこの村の住民たちは皆ムスリムであるという。なんだかいかにも観光向けの村といった具合だ。

その村を出てから道路に戻って少し進んだ先がポリスのチェックポストで、ここでパーミットを発行してもらう。ここからさらに30kmくらい進むとホワイトランに着くようだ。チェックポストを少し過ぎたあたりでは、ラクダの群れを飼育している男たちがいた。ラクダに任せてパーキスターンとインドの間を往来する密貿易が行われているとのこと。人はつかずにラクダだけが移動するのだというが、本当なのだろうか。

Rann Utsavの会場

ホワイトランにつく前に、開催中のRann Utsavの会場で食事することにした。12月初旬から3月初旬にかけて毎年開催されている政府主導のイベントで、会場には沢山のテントがあるとともに、食事の模擬店がいろいろ出ている。あまりたいしたものはないにしても、こんなところでこのような大きな規模のイベントが開催されていること自体がちょっとした驚きかもしれない。

Rann Utsavの会場から少し走るとホワイトランに着く。面白いのはそこに到着する手前までは塩のように見えるものは特にないのに、ある地点から急に真っ白になってしまうことだ。

入口にはゲートがあり、ここから塩原に入る。ふたりのBSFの兵士が警備していた。こここまで来る少し手前に検問があるが、そこもBSFの詰所であった。

どこまでも続く白、白、白・・・。
塩の塊は少し水分を含んでいる。

塩原はまるで雪原のようである。地平線の彼方(の方角はパーキスターン)までずっと白い塩原が続いている。なんとも不思議な光景だ。15日に一度の大潮の際に海水が流れ込んで、この広大な塩原を形成したのだという。塩の下を少し掘るとすぐに水が出てくる。この塩は不純物が多く、食用に適さないが除雪用、工業用として輸出されているとのこと。塩原には観光客をのせるための馬とその世話人たちがたくさんいた。白い塩の反射がまぶしく、目が痛くなりそうだ。満月の夜には塩原全体が銀色に輝くということだ。

少し掘るとすぐに水が出てくる。

ホワイト・デザート、塩で出来た砂漠があるというのは実際に目にするまで信じがたいような気がしていたが、こうして訪れてみるとこの光景は幻想的でさえあった。

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