Rann of Kutch 1

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グジャラート州東部からパーキスターンのスィンド州のインダス河口にかけてカッチ湿原 (Rann of Kutch)と呼ばれる低地が広がっている。雨季には、雨による氾濫とともに海水が混ざり合う泥地となる。しかし乾季には乾燥した固い大地となり、ジープ等の四輪駆動車での走行が可能となるものの、塩分を多く含む大地であるがゆえに、もちろん耕作には適さず、人口密度の極端に低い地域である。
カッチ地方の行政中心地であるブジに向かう際には、鉄道であれ道路であれ、盛土した土手の上を走ることになるため、その一部を車窓越しに垣間見ることはできるものの、いつかそこを訪れてみたいと常々思っていた。地質的に稀な地域であるということもあるが、ここは野鳥の宝庫としても知られている。
Rann of Kutchは、地理的にふたつに分けられる。Google Earthで眺めると、インド・パーキスターン両国にまたがる、湾とも大地ともつかないカッチ大湿原 (Great Rann of Kutch)と、カッチ湾の入り江につながるカッチ小湿原 (Little Rann of Kutch)である。グジャラート州のカッチ地方は、このふたつの広大な湿原の存在により、長く外界と隔たれていたため、独自の文化とアイデンティティを育むこととなった。
さて、そのふたつの湿原であるが、当然のことながら足の問題がある。カッチ大湿原の地域には、雨季でも安定した陸地となっている場所には町があり、パーキスターン国境に近いそれらのエリアでは、事前に警察でパーミットを取得すれば訪問することができる地点は少なくないものの、センシティブな関係にある隣国からの侵入者が警戒される地域でもあり、どこかでクルマをチャーターして湿原を走るという具合にはなっていないようだ。
いっぽう、より内陸に位置するカッチ小湿原では、そういう制限はない。国立公園になっていることから、森林局で許可を取得すれば自前の四輪駆動車かオフロードバイクで存分に走ることができるとはいえ、私はそのどちらかを所有しているわけではない。
湿原周辺のいくつかの町では、国立公園でもあるその地域の見物を売りにする施設がいくつかあるが、その中のひとつザイナーバードという村にある宿泊施設を利用することにした。そこでは日中一杯、湿原を訪れるサファリをアレンジしているということだ。もちろんその村には特に見るべきものはなく、宿泊客の目的は100%湿原(・・・といっても乾季に一部残る池を除いては砂漠のようなものだが)見物であることは言うまでもない。
列車をヴィーランガーム駅で下車して、タクシーで1時間ほどのところにある村。駅前からごく狭い市街地を抜けると踏切でしばらく通過列車を待つ。インドの貨物列車はずいぶん長いなあ、とよく感じていたので数えてみると52両。機関車と最後尾の乗務員が搭乗する車掌車を含めると54両編成である。
道の両側には畑が続くが、栽培されている作物の大半はクミンか綿花であることから、いかにも『痩せた大地』という印象だ。
宿に着いたときにはすっかり陽は落ちて真っ暗になっていた。敷地内には、この地域の民家を模したコテージが散在している。ここで働く人が数人ヒマそうにしている他には人影がないのは、みんな夕方のサファリに出払っているからであった。薄暗い電球の灯った東屋でチャーイをすすりながら日記でも書くことにした。
やがて戻ってきた何台かの四輪駆動車から降りた人々が集まってくる。東屋の端に料理が並べられて賑やかな夕餉が始まる。西洋人のグループがひとつとファミリーで来ているインド人たちが数家族。コールカーターから来た写真家集団の姿もあった。食事で同席したアメリカのシリコンバレー在住NRIのK氏によれば、彼らはアマチュアながらもインドの写真愛好家たちの中ではよく知られた存在なのだとか。
実際には酒はいろいろ出回っているようだが、今も公にはグジャラートは禁酒州であり、こういうところでおおっぴらに飲む人はいないため、みんな食事が終わるとそそくさとコテージに戻っていく。翌日早朝からバードウォッチングに出るので、早く寝ることにする。

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