ジェイド・グーディー亡くなる

先日から危篤状態にあった、イギリスのリアリティーショーのスター、ジェイド・グーディーが亡くなった。享年27歳。ご冥福をお祈りしたい。
Reality TV star Jade Goody dies (BBC NEWS)
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彼女の命を奪った病、子宮頸ガンは、よく知られているとおり、ヒト・パピローマ・ウイルス(HPV)への感染が大きな原因であるとされる。
他のガンに比べて、若年層の患者が多いことも特徴だが、日本ではこの病についての検診の受診率が低いことも問題とされている。
現在では、HPVへの感染に対する予防ワクチンという、有効な手立てがあるが、少なくとも日本ではまだそれは普及していない。しかし今年中には承認される見込みらしい。
性交渉未経験の10代前半の女児を対象とする公費負担による接種を求める声が高いという。

ジェイド・グーディー

ジェイド・グーディーが危篤状態にあるとのこと。2007年にリアリティショー『ビッグブラザー』にて、シルパー・シェッティーに対して執拗に投げかけた問題発言により、人種差別だとして内外に大きな波紋を投げかけたあの人だ。
差別的な発言をしたのは彼女だけではなかったようだが、その口火を切り、同様の発言を繰り返したことに加えて、普段メディアを通じて彼女が視聴者に与えていたイメージもあったことから、袋叩きに遭うことになったようだ。
この出来事がいろいろなメディアで取り上げられるまで、私はこの人がイギリスでとても有名なタレントであることさえ知らなかった。実のところ、私はこの人がテレビに出演しているところを直に見たことはなく、YouTube他の動画投稿サイトで彼女が出ているクリップを片っ端から閲覧しただけだが、それでも彼女の強烈な個性は充分伝わってくる。
その後、ジェイドはインドへ謝罪旅行に赴き、シルパーとともにインド版ビッグブラザーのビッグボスに出演するなどして、彼女と和解しているが、もちろんインドでは彼女に対してネガティヴなイメージは根強いだろう。
もともと歯科医院で看護婦の仕事をしていた彼女は、2002年にビッグブラザーに『ちょっと可愛らしい看護婦さん』として出演する機会を得て、一気にスターダムを駆け上ることになった。
しかしながら、とりたてて外見がどうというわけではなく、なにか人を魅了するものを持ち合わせているわけでもない。私でもセレブになれそう、と思わせる『普通さ』とは裏腹の毒舌マシンガントークが多くの人々の非難を巻き起こしつつ、瞬く間に悪役としての地位を築いたようだ。
自身の名前を冠したパフュームをプロデュースしたり、フィットネスのDVDに出演したり、自伝を出版したりと、テレビ以外の場所でも活発に動いていた。
昨年夏に末期ガンであることが判明してから、様々な治療を受けてきたがすでに病巣は多臓器に広がっており、あと数週間の命らしいと各メディアに報じられていたのは今月前半のこと。
その深刻な病状について、彼女に知らされたのは先述のビッグボスに出演時。番組中のアナウンスで『出演中に電話を使うことは許されないが、事があまりに重大であるときにはそれが許可されることもある』とあったように、実に深刻な事実がイギリスの主治医から彼女に伝えられ、ジェイドはイギリスに緊急帰国した。
インドを、インド人を侮辱したと大騒ぎになったしばらく後で、インドを訪れてから受けた重篤な宣告。何か因縁じみたものを感じたのは私だけではないだろう。
以前交際のあったボーイフレンドとの間にもうけた5歳と4歳の息子の母でもあるが、現在同棲中のボーイフレンド、ジャック・トゥィードと今年2月に挙式、晴れて正式な夫婦となった。しかしこのカップルに残された時間はあまりに短かったようだ。
昨日夜から容態が急激に悪化し、すでに意識のない状態にあるという。天敵から友人へと転じたシルパーは、ムンバイーからイギリスへ向かっている。
ジェイドは、自分に与えられた定めを受け入れて、最後の瞬間までメディアの前に姿を見せ続けることを宣言し、人々の注目を一身に集めるタレントであることを天職としてまっとうしようという、非常に芯の強い女性である。
・・・だが、彼女自身はまだ27歳。二人の幼い子供たちの母親でもある。あまりに酷な運命の仕打ちだ。

インドの西隣の核保有国にクーデター近し?

インドのテレビAaj Takを見ていたら『パーキスターンに再びクーデターの危機迫る』というテロップとともに、危機を伝えるニュースが流れてきた。
‘पाकिस्‍तान में फिर हो सकता है तख्‍तापलट’ (Aaj Tak)
緑豊かでのどかな風景の広がるスワート地方で、仏蹟等の見どころも多く、風光明媚な上部スワートとともに、観光地としても名高いエリアであったが、2007年に始まったタリバーンによる武装闘争のはじまりとともに、物騒な地域として知られるようになってしまっている。
そのスワートで、今年2月にこの過激派勢力による彼らのイスラーム法による支配を認める政府当局の決定を憂慮する内外のメディアによる報道は記憶に新しいところだ。
Pakistan agrees Sharia law deal (BBC NEWS South Asia)
Aaj Takのテレビ報道によれば、当事者能力を欠く政府の元にあるパーキスターンで再びクーデターの動きが予想されるとのこと。続いて先日バーングラーデーシュ首都で発生した国境警備隊の反乱についても、パーキスターンのISIの関与の可能性を示唆するニュースも流れており、ちょっと背筋が寒くなる思いがする。
もちろんパーキスターンと対立関係にある隣国のメディアによる報道であること、とりわけ昨年11月26日にムンバイーで発生した大規模なテロ以降、同国に対する囲い込みの姿勢を強めているインド発のパーキスターン国内情勢に関するニュースである部分はある程度差し引いてとらえる必要はあるかもしれない。
しかしながら、インドの隣国の政局の混迷ぶりを目にすれば、誰もが多少なりとも懸念しているところではないだろうか。
同国内の不穏な動き自体もさることながら、こうした状況を横目に第三国による大掛かりな陰謀が着々と進められているのかもしれないし、こうした報道の裏側にはそれを現実のものとしようという意思が蠢いているのかもしれない。
これが杞憂であればそれに越したことはないのだが、テレビから流れるニュースを見つめながらいろいろと思うところの多い本日の夕方であった。
とりあえずは、国はどこであれ、世の中が平安であること、無辜の市民たちに犠牲を強いるようなことが起きないことをを祈るのみである。

ネパール首都の宮殿博物館 本日オープン

カトマンドゥのナラヤンヒティ宮殿が、本日2月27日(金)から宮殿博物館として一般公開される。
宮殿が博物館として転用される第一段階において、地元紙カーンティプルおよびカトマンドゥ・ポストのウェブ版であるeKantipurの記事によれば、宮殿内の52ある部屋(メディアによっては90室あるのだとも・・・)のうち、19室のみが展示室として開放され、15人ずつ25分間のみ参観可能というから、ちょっと敷居の高い博物館ということになろうか。おそらく政治的に微妙な部分があることから、厳重な警備がなされるのだろう。
この博物館は『シャハ王朝の真の歴史を知る』ための場所として位置づけられているようで、昨年6月に廃止された同王室の栄華をしのぶなどといったものではないようだ。宮中で繰り広げられた陰謀、政治の腐敗、人々に対する圧政などといった負の側面を人々の前に明らかにしたり、2001年にこの宮殿内で発生した殺戮事件の真相にも光を当てることが期待されているようだ。
ただし宮殿建物の転用について、『博物館にするのは簡単かもしれないが、その後の施設の維持はどうやっていくのか?』と、おそらく財政的な部分から行く末を危ぶむ声もあるようだ。
現在、同国政府を率いるマオイスト勢力の意向に沿う形での『王室犯罪史博物館』ないしは『革命運動博物館』といった色合いのものになるのかどうかよくわからないが、近いうちここを訪れる方があれば、ぜひそのご感想をうかがいたいものだ。
Narayanhiti museum (eKantipur.com)
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※『新加坡的印度空間4』は後日掲載します。

退屈は幸せだ

新聞であれ、テレビであれ、ニュースが退屈なものであるときほど、実は『良い時』なのだと思う。手にとってみて、そこに書かれているものがルーティーンな内容で、退屈のあまりすぐに投げ出してしまうようなときは、少なくとも悪いことは起きていないわけだ。思わず目を見開いてしまうような、かじりついてしまうようなセンセーショナルな報道といえば、たいていが非常に好ましくないものであることが多い。
今日もやはりそうだった。9月26日深夜前後から本日にかけて進行中のムンバイーでの連続テロ事件の報道がそれだ。今日の午後はずっとZEE NEWSやAAJ TAKといったニュース番組にかじりついている。ムンバイー市内のタージ・ホテル、オベロイ・ホテル、ムンバイーCST駅構内等で起きた一連の惨劇。これを書いている現在も、2軒の五ツ星ホテルでは人質の安否が危ぶまれるとともに、コラバ地区のナリマンハウス付近でも銃撃が続いているとか。
すでにタージ・ホテル内だけでも80人もの死者が出ており、363号室にテロリストたちが隠れているらしいなどとアナウンサーは伝えていた。それからしばらくして建物内に治安当局が入り込んで片端からドアを開けて、出るに出られずにいた宿泊客を救出が始まったようだ。
押しても引いても開かないドアの中には犯人たちが潜んでいるのではないかという疑いがあり、そんな部屋のひとつ471号室に突入した治安要員たちが中にいた犯人の一人を銃殺したという。
血なまぐさい事件が画面の向こうでリアルタイムで進行しているという緊迫した状況で、ふと思い出すのは2001年9月11日にアメリカで起きた同時多発テロ。
『WTCのツインタワーのひとつに航空機が衝突する事件が起きました』というアナウンスから始まったあの日のニュース。その直後に2機目がもうひとつのタワーに接近して衝突して大きな火花を散らす。そのときテレビの報道番組を見ていた人たちが皆、事件の目撃者となった。手段は違うが、画面の向こうから感じるのは、まさにあのときと同じ空気だ。
それにしても今年はずいぶん多い。後半部分に限っても、これだけの大きなテロが発生している。
10月30日 アッサム東北部 64名死亡
9月30日 インド西部 7名死亡
9月27日 デリー 1人死亡
9月13日 デリー 18名死亡
7月26日 アーメダーバード 49名死亡
7月25日 バンガロール 2人死亡
5月13日 ジャイプルで63名死亡
現在進行中のテロ事件の早急な鎮圧と背後関係等に関する解明を望みたいところだが、それが明らかになったところで、根本的な解決などありえないことが、一番難しいところだ。社会に不安と秩序の乱れを、そしてコミュニティ間に対立や猜疑心を与えることは避けられないだろう。
悲哀と混乱を闇であざ笑う何者かに対して、私たちはかくも無力なのか。底知れぬ悪意を抱く者たちに行為に対して、私たちはただ黙ってそれを受け入れるしかないのだろうか。
あるいはこれを悪魔の仕業とするならば、良き市民たちはそれを神から与えられた試練と受け止めるのしかないのか。
ニュースが退屈であることは、実は幸せであること、ごく何でもない日常がどんなにありがたいことか、改めてしみじみ感じる。
TERROR STRIKES MUMBAI AGAIN, OVER 100 KILLED (ZEE NEWS.COM)