正しいのはどれ? インドの地名

INDIANmaps
 インドの地名をカタカナやローマ字で発音どおりに表記するのは難しい。
 たとえば、U.P.州「アーグラー」は、通常「AGRA」と表記されるため、短母音と長母音の区別がつかなくなる。本来は短母音の部分が、日本語で表記される際に長母音となって、ラージャスターン州「ジャイプル」「ウダイプル」の最後の二文字が「〜プール」と書かれるのこともしばしばある。デリー近郊「グルガオン」の「ル」のように、英語にも日本語にもない音が含まれることもある。
 英語とヒンディー語との表記が違う街もある。たとえば、アラーハーバードがイラーハーバードで、バローダがヴァドーダーラーといった具合だ。相手にまったく通じなくて困ることはまずないが、地名にこめられた意味もある。本来の綴りも知りたいところだ。
 ヒンディー語を表記するデーヴァナーガリー文字で書かれたインド全国や各州の地図は、書店やバーザールの露店で入手することができる。
 私がいま欲しくてたまらないのは各大都市のヒンディー語地図帳。一枚ものではなく、町名まで入った詳細な市街アトラスともなるとまず見当たらないのが現状だ。
 デーヴァナーガリー文字によって書かれた世界地図では、SHANGHAI(上海)は「シャンガーイ」。TOKYO(東京)の「ト」が反舌音となり、歯にモノが詰まったような音になる。
 インド国内の地名だって、ヒンディー語圏外の町ともなれば、デーヴァナーガリー表記で正しい発音を表せているのか怪しいもの。東北辺境州のように、民族的にも言語的にも「インド」とのつながりが薄い地域ともなればなおさらのこと。
 こうした地図はその言葉を話す人たちの発音がわかって面白いのだが、一般の書籍同様、地図もグレードの高いものはまずローマ字で書かれている。地元の言葉、とりわけ最大の話者人口を持つヒンディー語によるものでさえも質やバリエーションの乏しさは否めない。これは、まさにこの国の複雑な言語事情を象徴しているようだ。