インドへの扉が開く日

現在、インドでは1日の新規感染者数が2万数千人といった具合であるため、人口規模が約1/10の日本における2千数百人程度に相当する。日本の初夏あたりには「第2波」でひどい状況にあったため「インドは今も大変」と思っている人もいるかもしれないが、今はインドと日本の感染状況はほぼ同程度である。

こういう具合であることを受けて、各国がインドからの渡航者受入れに動いていることについて、以下の記事を参照願いたい。

Canada latest in list of countries to allow Indian travellers; here are all international destinations open now (Firstpost)

また、インド側も今月末から来月初めあたりに、観光客受け入れ再開のアナウンスを予定しており、具体的にどのような内容のものとなるのか注目されるところだ。

Foreign tourists to be allowed to visit India soon (Travel Daily Media)

先進国を中心にワクチンが普及してきている現在、より感染力の強い変異株の登場とワクチンによる抗体維持が続く期間に限りがあることが判ってきたことなどにより、開発時に期待されていた効果がフルに発揮されているとは言えない部分はあるとはいえ、今後は国と国との間の往来も次第に制限が取り払われていくことだろう。

日本においても、遠からずこうした緩和が予定されているが、帰国時の隔離などが免除されるようになれば、再びインドと日本の行き来が盛んになっていくはず。

今後の推移を見守りたい。

チャーンドニー・チョウクの美化事業

あまりの混雑ぶりと騒々しさだったので、こういう風になるのも良いかもしれない。「庶民のマーケット」として知られているが、もともとはあんなワサワサした地域ではなかったのはインド独立前まで。

ムガル時代には大通りに水路が流れ、ところどころに噴水もある綺麗なエリアだった。ラール・キラーの城下町、王室や貴族御用達の大きな店が建ち並ぶ商業地区と豪壮な屋敷の貴人たちの居住区などから成るエリアだった。1857年のインド大反乱の後、時の皇帝、バハードゥル・シャー・ザファルがラングーンに流刑となりムガル王朝は終焉。北デリーのこのあたりの地域、城塞都市だったシャージャハーナーバードの壁は、現在も残る一部を残して取り壊され、いくつもの門だけが残った。それでもまだこの地域には引き続き富裕層が暮らし、イギリス当局による役所や銀行等の施設、そして駐在する英国人官憲の屋敷などもあった。

印パ分離の時期に、ここに多く暮らしていたイスラーム教徒の上層部がパキスタンへ脱出していき、空き家となったところに内部を細分化して庶民が入ってきたとされる。おそらく地元のヤクザ連中など腕っぷしの強い連中が占拠してお金と引き換えに部屋を割り当てたり貸し出したり、それを借りた人が需要の高さから「これは儲かりそう」と又貸ししたりしたことなどが始まりだったのだろう。

そんなわけで、この地域にある建物の多くは荒廃しているが、よく見ると大きな邸宅であったり、元は銀行の大きな支店の建物であったりもするし、街区に残されるゲートなどもたいへん趣のあるものが多い。もともとが庶民の街にはなどではなく、富裕層の地域であったがゆえのことなのだ。

イスラーム教徒の社会的地位の低下は、こうした上層部の流出と表裏を成すものであり、イスラーム教徒のお金持ち、文化人などといった経済的、社会的に影響力が強い層が数を大きく減らし、貧しい人たちが多く残れば、相対的にインド社会における存在感は低下していく。チャーンドニー・チョウクは、そうした独立後のインド史の転換を象徴する場所でもある。

Ground Report: Beautification work of Chandni Chowk completed, watch the new look here (ZEE NEWS)

マハーラーシュトラ州で「寺院の再開」をめぐり火花

同州でコロナ対策が順次緩和されている中で、「すでにモールやバーは開けているのに、なぜ寺は閉めているのか?」と、州与党のシヴセーナーを同州野党BJPが攻撃。

寺院の参拝者締め出しは、春先の祝祭ごとが重なった時期により感染爆発となったことを踏まえてのことだろう。ふだんの参拝ですら、モールや商店街よりも、さらに密だし、神像や建物の一部に口づけしたり、素手で配られるプラサードを素手で受けて口にすることなど、感染の機会の濃密さはショッピングの場の比ではない。

マラーター民族主義を標榜する極右政党のシヴセーナーは先の同州議会選挙まではBJPの友党であったが、選挙戦勝利後の組閣のポスト割当で紛糾して瓦解。前者が国民会議派及びその協力関係にある政党と連立するというまさかの展開で、偏狭な地域民族主義極幹政党と中道左派という、いずれの支持者をも裏切る不思議な政権が樹立したのは2019年11月だったが、コロナ禍という試練の中で持ちこたえている。

シヴセーナーは野党のときには不条理かつ暴力的なバンド(ゼネスト)を敢行して、建物を破壊したり、人々に大怪我を負わせたりもする。地元マハーラーシュトラ州で、シヴセーナーが号令をかけてのバンドを実行する際、大勢の活動家や動員した暴徒がバール、鎌に斧、三叉の槍、手製の刀などの凶器まで手にして、バンドの呼びかけに従わず開けている店、運転しているクルマやオート、事務所や会社などを襲撃する。あまりの乱暴狼藉ぶりが恐ろしいため、役所や公共機関まで業務を放棄してしまうのだ。もちろん市バスや鉄道すら例外ではない。

ところが、政権党となると、まるでウソのように極めてまともな施政を敷くことが出来るのが不思議だ。党首のウッダヴ・タークレーは、たぶんジキルとハイドみたいな人なんだと思う。政権にあるとジキル博士なのだが、下野すると、とたんにハイド氏になる不思議な人物だ。

Amid Covid curbs, BJP begins its temple run in Maharashtra (Hindustan Times)

下げ止まり

第2波の抑え込みのために実施されたロックダウンその他の措置が功を奏して、一時は新規感染者数が4万人を割りこんだインドだが、ここ数日間は下げ止まり感がある。

まあ、しばらくこんな具合かな?とは思うものの、様々な制限が緩和されてきていることから「第3波」の懸念の報道もある。

回復基調にある国々が一部にあるいっぽうで、そうではないインド、日本その他多くの国々は、まだ先も見通せずにいるので本当に大変だ。

ワクチンの普及を図りながら、ブレーキを踏みつつも、状況を確認してアクセルも踏まなくてはならない。ときに内外からの批判を浴びつつも、なんとか国を運営していくのが政府の仕事だ。

India reports 43,393 new Covid-19 cases, active cases slide to 458,727 (Hindustan Times)

デルタ株の広がりで新たなロックダウンや行動制限

「新型コロナ感染症」から「デルタ感染症」と呼び名が変わりそうな勢いだ。

今にデルタに特化したワクチンが求められるかもしれないし、今後ブースター用にと開発されるのは、デルタ用に新開発されたものになるんじゃないか?とも想像している。

しかしながら主流となっているメッセンジャーRNAタイプのワクチンは、そこに組み込む遺伝子情報を変異種のそれに書き換えるだけで出来てしまうというスグレモノだ。もちろん新規に治験等は必要なのだが。感染症に対抗するワクチン技術がたいへん進化していることは心強い。

しかしながらワクチンの普及とともに、もうすぐそこまでに来ていると信じていた「コロナ後」が、まだしばらく先のこととなりそうであることは残念であり、気が滅入るものでもある。

Global report: rise in Delta variant cases forces tougher restrictions (The Guardian)