コロナ禍で報じられるインド

INDIA TODAY 6月9日号

India Today 6月9日号電子版が配信された。

この前の号の特集は、「自助の共和国」と題して、コロナ禍で大変なことになっている人々に対して、サポートの手を差し伸べる人々を取り上げていた。コロナに罹患した人たちのために自宅で食事のパックを作って提供している人から、グルドワラーで「酸素のランガル」として、酸素ボンベで重症患者に提供するスィクのボランティアの人たち、ヘルプラインを開設し、電話でコロナ関係相談に乗り出した有志の医師たち、はてまた数千人のスタッフを擁するNGOで、コロナの状況に鑑みて、一時的にコロナ患者救済の活動を始めた団体等々、それぞれの出来る範囲で、大変な中でも世間のために働きかける人々の姿に感銘を受けた。

さて、今回はそのまったく反対で、「恐怖のとき」と題して、コロナにより不足している治療薬、酸素ボンベ、酸素濃縮装置その他を投機的に買い占めてボロ儲けする人たち、コロナでの失業、先行き不安からくる精神疾患が多発していること、河岸に流れ着くコロナ死が疑われる多数の遺体等々、たいへん暗い側面が伝えられている。

日本など、外国のメディアに取り上げられるインドは、平時でも偏りがあり、コロナ禍においてもそれ以上であったりするが、もちろんインドへの関心がその程度なので仕方ないことではある。しかしながら、大変好ましい話も、それとは反対にあまりに悲痛な話題も、あまり伝えられないのは残念でもある。これもまた、コロナで大変な目に遭っているのは、インドだけではなく、世界中なので、やはりこれも仕方のないことではあるが。

INDIA TODAY 6月2日号

ブラック・ファンガス

このところインドのテレビニュースを含めた各種メディアで新型コロナ感染の患者が回復期に「ブラック・ファンガス」に冒されるという事例が多く報じられている。「真菌感染症」のことだが、致死率は50%で、眼球や顎の骨を切除しなくてはならなくなったりする場合もあったりするというから恐ろしい。

「ブラック・ファンガス」といえば、私たちは食材のキクラゲを思い浮かべてしまうが、同じ「菌類」でも、それとこの病気の原因となるものとはまったく異なる。新型コロナの症状が重くなった患者には、炎症を抑えるためにステロイド系の薬が投与されるが、この副作用として免疫力が低下すると、生活環境に普遍的に存在する真菌類がと取り付いて起きる真菌感染症「ムコール症」。新型コロナに感染さえしなければ、こうした薬を投与されることはなかったため、この病気に関連して起きたものだと言える。

インドの国営放送「ドゥールダルシャン」のニュース番組では、この「ブラック・ファンガス」について、『患部が黒くなる場合が多いので「ブラックファンガス」と呼ばれるが、必ずしも黒くなるとは限らない。気が付くのが遅れないよう注意する必要がある。』と報じていた。

州によっては、この「ブラック・ファンガス」について、エピデミックを宣言しているところもあるが、コロナそのものと異なり、「ブラックファンガス」自体は人から人へ感染する類のものではない。身の回りのどこにでもある真菌類が原因のとても稀な症状で、前述のようにステロイドの大量投与で免疫力が極端に低下するという特殊環境で起きるものであるからだ。

インド、新型ウイルス患者の間で真菌感染症が急増(BBC NEWS)

 

インドのコロナの状況

今週のインディア・トゥデイの特集は現在のコロナの状況。表紙は火葬場に防護服姿の人たちが新たな遺体を運び込む様子で胸が痛む。インドで、一時は「これで収束に向かうか?」というムードであったころ(今年1月から2月)があったにもかかわらず、現在の状況に至ってしまった背景の分析がなされている。

日本で取り沙汰される変異株だけではなく、祝祭等(宗教行事や結婚式等)が派手に繰り広げられるなど、安堵感の中での緩みがあったこと、一気に第2波(インドにおける第一波とは全国的なロッグダウン明けからの急拡大から昨年末あたりまで)が広がる中で、ワクチン接種のペースが追いつかなかったこと、医薬品の流通に阻害要因があったことなど、社会的背景などにも切り込んでいる。今後の成り行きがとても気になる。

デリーのコロナ関係の動静について、インド各メディアが市内の大病院、「Ganga Ram Hospital」からの情報を掲載することが多い。この病院名を入れてニュースの検索をすると、たいへん緊迫した状況を伝える記事でいっぱいだ。現在90%の患者はコロナ感染者。大きな総合病院なのだが、心臓外科等を一時的に取りやめて、ほぼコロナ対応専門のようになっているそうだ。

ハザーリーバーグ周辺の民俗画の村巡り⑨

ヴィラーサト・トラストでは、村々で民俗画保存の活動を進めるとともに、インド各地や欧州を含む海外でも展覧会やワークショップを開催するなどして、ハザーリーバーグ周辺の村々の民俗画への認知を高める取り組みを実施している。

また、アーティストたちによる作品を空港、鉄道駅などに展示するたともに、バザーリーバーグの公共施設の塀などにも描かせることにより民俗画への認知度を高める試みを実施している。

行政もこうした活動については前向きのようで、活動のために資金その他の支援に乗り出しているとのこと。ジャールカンド州ではまだ存在しているとは言い難い観光業の振興への貢献も期待される。

しかしながらスポンサー側にも都合や思惑があり、本当は鉱物由来の染料で描くところ、ペンキを使うように言われたり、ジャールカンドのアーディワースィー(先住民)のヒーロー、ビスラ・ムンダーを描くよう頼まれたりしたりと、当惑するようなことがいろいろあるようだ。

しかしながらこれまでの取り組みが功を奏して、ハザーリーバーグ周辺の民俗画がGIタグ(Geographical indication Tag)取得することとなり、この地域固有の文化としてさらなる認知が高まることが期待される。

GI tag for Jharkhand’s Sohrai Khovar painting, Telangana’s Telia Rumal (The Hindu)

ハザーリーバーグのソハラーイー・ペインティング、コーワル・ペインティングについては、これに関する研究を長年続けてきたブル・イマーム氏による以下の文章をご参照願いたい。

Comparative traditions in village painting and prehistoric rock art of Jharkhand (XXIV Valcamonica Symposium 2011)

コロナ禍のため、しばらくの間はインドと諸外国との間の往来が困難な状況が続いているが、長期的にはインドの新たな魅力として広くアピールするポテンシャルに満ちているはずだ。

絵が商業化されて、男性の描き手が続々参入してくるという、ミティラー画等と同じ轍を踏むことになるのかもしれないが、これらの伝統を維持してきたアーディワースィー(先住民)の人々の暮らしぶりや村でのライフスタイルなどといった生活文化も合わせてトータルにアピールできるようになると良いと思う。

得てして、商業化、観光化というものは、外部からの資本とマンパワーの進出を招き、もともと現地に暮らしてきた人たちのメリットが顧みられないようなケースが少なくないのだが、そのあたりのバランスをどう保っていくのか、今後の進展に注視していきたい。

既出だが、ドウジーナガル村すぐ外の民家。訪問当時、ホームステイ受け入れを打診中とのことであった。まさにそれが描かれている家に滞在しながら民俗画を鑑賞できる機会が出てくると面白いかもしれない。

内容は新型コロナ感染症が流行する前のものです。

新型コロナウイルス感染症 インドでは集団免疫達成も近し?

このところインドで新規感染者数が激減。昨日は1万1千人超という数字であった。

Latest News Highlights: 11,039 New Coronavirus Cases Take India’s Tally To Over 1.07 Crore (ndtv.com)

昨年8月から9月にかけては毎日10万人に迫る規模であったのが嘘のようだ。

この日の日本では2500人。インドは日本の10倍の人口を擁することから人口あたりの新規感染者という視点から見ると、インドはなんと日本の44%にしか過ぎないことになる。

これは何故か?

その答えはこちらの記事にあるのかもしれない。

首都圏住民の半数以上が感染、血清調査で判明 (CNN.co.jp)

首都圏人口の56%がこれまでに感染して抗体を持つ可能性があるとか、集団免疫達成には人口の60〜70%が免疫を持つ必要があるとか、いくつかの都市ではすでに集団免疫を獲得している可能性があるとも書かれている。

いくつかの都市といえば、とりわけ、昨年初夏からひどくやられていたマハーラーシュトラ州内の街がいくつか頭の中に浮かぶ。ケーララ州、タミルナードゥ州にもそういう街があるかもしれない。

そこにきてワクチン接種も始まっているのだから、案外コロナ禍からの脱出と立ち直りは早いかもしれない。感染者数の割には死亡者がやけに少ない(総数では大きなものだが、感染者数、人口に比すると欧米のひどい国の比ではない)のは、若年層に厚い人口構成が幸いしたのかもしれない。無症状や軽症で済んだ若者たちも多かったことだろう。

実施された大規模な血清検査の結果、デリー首都圏では56%超の住民が新型コロナウイルスに感染して抗体が出来ているとのことだ。集団免疫達成には住民の6割から7割が免疫を持っている必要があるとされることから、どうやらこれが達成される日は遠くないようだ。

ただしこの「集団免疫」について、よくわからないのは、新型コロナについては罹患したことがあっても免疫の効果は数か月しか持たないという話を聞くことだ。ワクチンについても接種完了したからといって、ずっと有効なわけではなく、こちらも数か月という。

そのような状態なので、今後エンドレスで免疫が切れる頃にワクチンの接種を繰り返す生活を送らなくてはならないのだろうか。またそのようなことがインドをはじめとする途上国はもちろんのこと、先進国でも可能なのだろうか。