マジューリー島2

ガラムールの町のはずれにある宿は、簡素な竹造りの高床式の建物である。このあたりではこうした構造の家屋をよく見かけるが、そんなローカル色があるのは楽しい。部屋の中にしつらえてあるベッドも竹で出来ていた。周囲に池や水溜りは多く、宿の下の土地も雨季には水が張ってしまうような地形になっているため、1年の大半は蚊の大群がブンブン飛び回っているであろうことは想像に難くない。寒い時期に訪れたのは幸いであった。

蚊はともかく、おそらく暑い時期には風通しが良くて涼しく過ごすことができるのだろう。夜、床に就いてから判ったのだが、あまりに風が通り過ぎて寒くてたまらなかった。寝袋を持っていてもこんななので、ちゃんとした防寒着や暖かい寝具を持たない庶民の家では、冬の時期を過ごすのはなかなか辛いことであるはずだ。

午後5時近くなるとすっかり真っ暗だ。周りには電気が灯っているところはほとんどなく、電気そのものがほとんど来ないので、外に出ると降るような星空が堪能できるのが嬉しい。私の部屋がある高床式の建物からみて未舗装の小路を挟んで向かい側の母屋で食事を注文。

母屋のキッチンで食事を作ってくれる。

たまたま同じ宿に泊まっている西洋人夫婦はドイツの人たち。彼らは大学生時代にバブル前夜の日本を訪問したことがあるとのこと。ヒッチハイクをしたら、そのドライバーが彼らの次の行き先に向かうクルマをわざわざ探してくれたとか、沿道でヒッチハイクを試みていたら警官がやってきて、注意されるのかと思ったら、警官自身が通りがかりのクルマをいくつか止めてくれて、彼らの行き先を通過する人を見つけてくれたりして、大変感激したとのことだ。

この宿を経営する人たちは、12世紀にチベットから移住してきたと考えられているミリという部族の人たちであるとのこと。別名、Missing Tribeとも呼ばれているとのこと。移住していった先で土地を失い続けているためそう呼ばれているそうだ。彼らの片割れはアルナーチャルにも暮らしていて、仏教徒であったり、クリスチャンであったりするそうだ。北東インドには様々な民族が暮らしているが、彼らの存在もその豊かな多様性の一部ということになる。

バスルーム

しばらく楽しい会話をしてから、離れにある自分の部屋に戻る。バスルームは扉がなく、井戸水。鉄の匂いがして冷たい。この水温では浴びる気にはならない。竹で出来た家屋に泊まるというのは風流でいいのだが、外の風がそのまま入ってくるのには閉口する。屋根が付いていて、この時期には珍しい雨が降っても濡れないことを除けば、屋外に寝ているのと何ら違いはない。ベッドも竹を編んで作ってあるため、通気性は抜群だが保温性はゼロであり、寝袋に入ってはいるものの、あたかも真冬に野宿しているようで寒くてツラい夜となった。

風通しが良いということは、冬季は非常に寒いということ。

〈続く〉

 

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