インドの(途上国はどこもたいていそうだが)公共交通機関を利用するのにはなかなかパワーが要る。都会は広いだけに、乗り物をうまく利用しないことにはにっちもさっちもいかない。通常、インドの都市部では公共の足といえばくまなく張り巡らされたネットワークを持つ市バスということになるだろう。郊外電車、路面電車を走らせている街もあるが、ごく限られた路線を行き来しているだけなので、利便性では前者の足元にも及ばない。
だが線路といういかにもわかりやすいルートを往復するものと違い、道路にバス路線 が矢印で描かれているわけでもなし、しばらく長く住んでいなければどの番号のバス がどう走っているのか見当もつかない。そうであっても普段の自分の行動圏からはみ 出せば、やはり文字どおりの異邦人となってしまう。
また膨大な人口を背景とした需要に対する供給が追いつかないため、朝夕には出入口まで乗客で鈴なりになっていたりするのを目にした途端乗る気が失せてしまうし、運行間隔がアバウトためか、同じ番号のバスが立て続けにやってきたかと思えば、その後首を長くしてもなかなか来なかったりする。バス停で完全にストップせずに「徐行」中にステップから乗り降りしなくてはならなかったりするのはお年寄りや身体に不具合を持つ人たちにはさぞ大変なことだろう。
バスはともかく歩いていてもそうだ。「歩道」の縁石が階段の三段分ほども高く、一応足元に注意を払っていないと、蓋が失われたマンホールの中にスッと消えてしまうこともありえるし、コンクリートの敷石もあちこち欠落しているのでつまずいたりするし、急に野犬が飛び出してきたりもする。早朝にジョギングを楽しめる環境ではないから、歩いていても快適とは言いがたい。
片側複数車線の大通りの中央分離帯は、反対車線から対向車が大きくはみ出してくることのない「安全地帯」だ。半分渡ってここで一息ついてから残りを渡ることができるのだが、これがない通りではかなりの勇気と判断力が必要になってくる。日本と違っておおむね街の灯が暗いこともあるが、特に見通しが悪くなる日没後はこれらに加えて「視力」も大切になってくる。
来たれ、操縦士!
インディア・トゥデイ誌(6月27日号)によれば、現在インドの航空各社は「飛行機を購入するよりも難しい」問題に直面しているのだという。大幅な路線増、新会社の参入等によりパイロットが不足しているため、どこの会社も操縦士獲得に血眼になっているそうだ。
しかも今後5年間に国内を巡る飛行機が300機増えることが見込まれていることから、あと現在の人数に加えて3000人ものパイロットの需要があるとのことである。
国内の飛行訓練施設のキャパシティ、訓練にかかる時間、費用どれをとっても、その溝を埋めることは難しいのだという。大幅な不足を補うための臨時的な措置として、外国人の雇用もすでに始まっているというが、こちらは雇用期限が3ヶ月までとのことで、根本的な解決にはならず、人材の供給不足が業界の成長の足を引っ張ることが懸念されている。
こうした状況下で、他社が提示するより魅力的な報酬を得ようと、現在勤務している会社を辞める操縦士が続出し、存続が危ぶまれる区間もあるというから大変だ。どこの会社も彼らの引止め工作に奔走しているらしい。そのおかげパイロットの定年が60歳から61歳に引き上げられるとともに、給料が昨年比で40%から50%も増えたという。これらに加え新たな操縦士を育成するために多大な出費をしなくてはならないわけで、逼迫する人件費に経営陣は頭を抱えているといったところだろうか。
競って派手な広告を打ったり、マスコミに華々しく取り上げられたりしている航空業界だが、華々しい成長の舞台裏には、案外泥臭い問題を抱えているようだ。
人材が足りない・・・急な成長期を迎えた業界には珍しいことではないが、見方を変えれば、まさに目下前のめりで突っ走っているインド経済そのものを象徴しているかのようでもある。
またもやインドの本がやってくる。
例年4月か5月に行なわれていた東京国際ブックフェアだが、今年は7月7日から10日(日)にかけて臨海副都心の東京ビッグサイト東展示場で開催される。時間は朝10時から午後6時まで。
昨年もこの催しについて触れてみたが、言葉の壁もあってか日本国内の出版社等の参加は非常に多いのにくらべると、外国からの参加は出展者たちの数、陳列される図書の点数ともに少ないことから、正直なところあまり「国際」的な展示会という気がしない。外国書籍の多くは日本語訳の版権を売る相手を探すためことが第一義にあるようで、ちょっと気になるタイトルがあってもその場で購入することはできないことも多いのも残念である。
デリーのアサフ・アリー・ロードにある語学書のHINDI BOOK CENTER で知られるSTAR PUBLICATIONS (PVT) LTD が今年もFEDERATION OF INDIAN PUBLISHERSとして出展する。 毎年この催しのたびにやってくるヴァルマー氏はなかなかの知日家だ。
基本的にここのブースで陳列される書籍は、他の顧客の予約が入っているものを除いてその場で販売される。面白い本は早い者勝ちということになるのだが、興味のある方は当日足を運んでみてはいかがだろう。
インド人は本の虫?

インドの人々がこんなによく本を読んでいるなんて・・・
都会には非常に立派な本屋、素晴らしい書物をズラリとそろえる出版社のショールームがあるいっぽう、まともな読み物がないところでは本当に何もない。ちょっと田舎に行けば印刷物といえば地方語の新聞か簡素な雑誌程度しか見当たらないことは珍しくない。日本のように津々浦々までさまざまな書物が浸透しているのとはずいぶん違い、相当不均衡な様子が見られるのがこの国だ。
それなのに、インドは世界一の読書大国だというのだ。以下、NOP World Culture Scoreによる調査結果である。このデータについて、調査対象の地域や社会層がひどく偏っているのではないかと疑うのは私だけではないだろう。
津波から半年
早いもので、世界的な大災害となった昨年12月26日の津波から6カ月が過ぎた。インドでは、死者と行方不明者合わせて1万6千人を超す。津波の原因となったインドネシアの大地震の震源地スマトラ沖に近いアンダマン・ニコバールでは4千人(非公式には1万人とも)が死亡、5万人が家屋を失ったとされる。
現在、地元当局は島嶼からなる同地域の沿岸部を津波災害から守るため、2億ルピーを投じて土による堤防を建設中だが、これに対して環境専門家たちは資金の無駄であるとともに、環境にも悪い影響を与えると警告している。
今回のような大きな津波が来ればこんな堤防で防ぐことはできないであろうこと、大地が海水に浸ったことによる塩害が心配されているところだが、幸いこの地域が降水量豊富であることから、じきに地面から塩分が取り除かれるはずのところ、地表を伝う雨が海に流れ込まなければ塩が土地に堆積してしまうのだという。そして土が海に流れ出すことにより珊瑚が死滅してしまうことや建設用の土砂が掘り起こされることにより島の森林が減少することも危惧されていると、下記リンク先のニュースに書かれている。
未曾有の大災害後、行政側としては何かしらの手立てをするのは当然のことだが、「地域住民の要求により」とはいうものの、中央政府から下りてくる特別予算がついた以上、何としてでも消化しなくてはならないという消極的な理由もあるのかもしれない。現場をあずかる担当者の立場にあっても組織の歯車のひとつにすぎず、上意下達の命令体系の中で黙々と仕事をこなすしかないのだから。個々の職員たちはそれなりに誠実にやっているつもりでも、総体で見れば責任の所在がはっきりしないい加減さが目に付くのは、洋の東西を問わずお役所ならではの体質かもしれない。
また「地元からの要求」はさておき、こうした付け焼刃の事業案件を掘り起こしては中央政府や地元行政の要所に働きかける土建業者やブローカーがいて、人々の見えないところで大きな利権が動いていることもあるのかと想像する向きもあるだろう。
ともあれ数百年に一度とされる稀な大災害を「今回は運が悪かった」と片付けてしまうのか、今後同様の騒動が起きるのは数世代先になる可能性が高いことを承知のうえで可能な手を打っておくのか。津波にかかわる研究や対策の充実が望まれるところではあるが、ただでさえ財政的に苦しい途上国にあっては悩ましいところだろう。記憶はやがて風化していくものだが、今回の津波は私たちにどんな教訓を与えたのだろうか。
Questions over Andaman tsunami aid (BBC South Asia)