食いしん坊万歳!

 東京都内、JR沿線ある駅近くの中華料理屋。繁華街でおなじみのランチバイキング。店主が中国人なら厨房、ホールもすべて中国人。だけどお客はほとんど日本人。こういうお店は最近多い。
 良くも悪くも「味も大陸」との評判もあるが、客の入りはいつも上々。B級グルメ激戦地にあって地元っ子のハートをガッチリつかんでる。決め手はやはり「本場」と「ローカライズ」のバランスだろうか。和製中華とどこか違う風味、でも日本人好みのツボは外さない。
 向かいにどっかり座った大きな人影。「おい、ビールくれ」と店員に声かける巨体のオジさん、よくよく見ればインド人。大皿にたっぷり盛った料理を目の前に、割り箸をバキッと鳴らして豚の耳のスライスとホイコーローを片付ける。小龍包を次から次へと平らげた挙句、コッテリとした豚足にとりかかる。ムンバイ出身のヒンドゥー教徒、日本に長いこの人に食のタブーはないらしい。
 思えばそういう人をしばしば見かける。自宅近所のある店でたまに出会うインド人の家族連れ、一家四人でいろんな刺身を美味しそうに食べている。
「え?こんなのも食べるの」とちょっと不思議に思うこと自体、ステレオタイプな先入観からくる一種の偏見かもしれない。それでも「な〜んでも食べるインド人」を目にすると、ちょっとドキッとしてしまう。
 とかく「食」は信仰にもかかわる問題。日本に長く住んだからといってタブーが消滅するわけではないが、往々にして多少は妥協せざるを得なくなってくるもの。、なんでも食べるのが良いかどうかはさておくとして、ボクらの好みや嗜好がわかりそれを積極的に評価するインド人が出てきているのはやっぱり嬉しい。
 食いしん坊万歳!

家路

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 就労機会とベターな賃金を求めて物乞い、家政婦、工場作業員、教員、経理士、IT技術者等々、実に様々な人々が外へと出て行く。まさにインドは出稼ぎ大国。
 しかし同時に周辺国から同じような動機で、インドに出てくる人たちもまた多いのは興味深い。バングラデシュからの不法移民は各地で社会問題になっているし、インドのどこにいってもネパール人のチョーキダールやサービス業に従事する労働者は多い。
「みんな大きな夢ばかり見ているんだ」
ヒマなオフシーズンのゴアの宿、キッチンで働くネパール人青年が言う。
「外国に行けば、大いに稼いでいい暮らしができると思っているからね」
 結局こうしてインドに来ている彼もそのひとりということになるのだが、ここで何年間も働いて過ごしてみて「現実が見えてきた」のだという。
 国外で働く人たちの多くが、エージェントを通じて出入国や仕事の斡旋を受けているとのことだが、
「だけど実際には1 Lakhしかかからなくても2 Lakh、3 Lakhと懐に入れるような連中だからね」
と彼。近隣地域から日本にモグリで働きに来ている人たちのことでもよく耳にするようなことである。
「こうして働いて故郷に送金してみたところで、国や仕事にもよるけどあんまり貯まらなかったりもするのさ。何年も何年も離れていると、地元との縁も薄くなってくる。留守の間にいろいろ事情が変わるしね。久しぶりに帰郷すれば、まるで外国人みたいになった自分の立場に気付くというわけだ。条件の良い仕事を探そうにもままならない。だから出稼ぎに出ているんだもの。何か自分で始めようにも元手が無いとどうにもならない。運よくまとまったお金があったとしても、ノウハウがなければ往々にして失敗するものさ。リッチな人は運が良かったんじゃなくて、お金の扱いかたをよく知っているものだからね。そうじゃない人は結局使うだけ。まあ、しばらくしたらそれまでと同じように出稼ぎの旅に出るっていうのは多いみたいだなぁ」
 すでにあまり若いとはいえない彼の遠い眼差しが見つめているのは「現実」や「故郷への想い」なのか、それとも「まだ見果てぬ夢」なのだろうか。
「何かを求めて」彷徨う若者は多い。それが自分にとって一体何なのか見つからないうちに青年期を終えてしまう人たちもまた多い。
 勇気を出して外に飛び出してみることより、「家路につく」ことのほうがよっぽど難しいことだってあるのかもしれない。

ゲリラとポルノ

 政府を向こうに回して独立や自治等を求めて活動する反政府武装勢力が、麻薬の生産やその流通、要人等を身代金目的で誘拐、実効支配地域の住民たちの中から強制的に徴兵を行なうといったことはよく耳にする。
 質・量ともに圧倒的に有利な政府を相手にまともに渡り合うのは限りなく不可能に近いことだ。何しろ向こうは「国家」という巨大な機構の中に豊富な財源を持ち、警察という治安組織、軍という武力を備えるとともに、「法」という後ろ盾のもとにあらゆる権力を行使できるからだ。さらに必要とあれば「外交力」にものを言わせて周辺国や世界の列強国から様々な形の有形無形の援助を受けることも可能なのである。
 そうした中で反政府武装組織が活躍できるスペースといえば、公権力がまともに機能している限りは、政府の腕力が及びにくい辺境ということになるだろう。そこに住む人々はえてして政権を構成するマジョリティとは大きく違う背景を持つ人たちで、特定の地域性、民族性、宗教その他の文化的・思想的要素を共有するとともに、内部での結束が非常に固いグループということにもなろう。見方を変えれば、まさにそうした異質性がマジョリティとの埋めがたい溝、絶えない摩擦と軋轢を生むのかもしれない。
 ともあれ田舎の貧しい民間人たちがやむにやまれず武器を取る、いわば百姓一揆に近い性格のものとすれば、資金的にとても苦しいのは無理もない。彼らが闘いを挑む相手の自国政府と対立関係にある隣国から資金、技術等の供与を受けているケースもあるにせよ、基本的にはなんとか知恵をしぼって自給自足でやっていくしかない。
 そうした中、インド東北部のトリプラ州では反政府組織が資金調達のためにポルノフィルムを製作してインド国内や周辺国に流しているという記事を目にした。組織に捉えられた女性がゲリラ兵士を相手に出演を強制されるケースが多いとのことだが、ゲリラグループ内の女性兵士が出ることも珍しくないのだそうだ。こうしたものが出てきたのは最近一、二年ほどのことだが、この風潮はここにきて一気に広がってきているとも書かれている。
 ゲリラとポルノという奇異な取り合わせはショッキングだが、これは降伏したゲリラ兵を取り調べた警察から出た情報だという。トリプラ州の反政府組織が実効支配する「解放区」、他地域のシンパたちの失望そして人心離反を狙ったプロパガンダという部分もあるのかもしれないが、政府が組織の非道を糾弾してみたところで、この地域で続く叛乱の原因が取り除かれるわけでもない。
 インド国内いくつかの地域で今も分離活動が続いている。多民族・多文化が共生するこの国で、まさに人々の叡智が試されていることだけは間違いないだろう。
India rebels ‘making porn films (BBC South Asia)

秋は代々木公園でお会いしましょう

 毎年秋の恒例行事となっている「ナマステ・インディア」は、ここ数年会場となっていた築地本願寺から場所を移し、「第13回ナマステ・インディア フェスティバル 2005」として、同じく東京都内の代々木公園で2日間(昨年までは1日のみ)開催されることになった。
 ここでは例年5月にタイフェスティバルが盛大に開かれていることをご存知の方も多いことだろう。会場・期間ともに従来よりも大幅にスケールアップすることになるが、プログラムの内容もまた一層充実することであろう。
 次第にその数を伸ばしている日本在住のインドの人々の数と同様、回を重ねるごとにこのフェスティバルが着実に成長してきていることを見るにつけ、主催者の方々のたゆまぬ熱意と多大な努力がうかがえる。会場では、長年日本に定住し在日インド人コミュニティの顔役的な立場にある人々を見かけるが、やはり彼らの協力もまた成功の重要な要素であることはいうまでもない。
  同フェスティバル主催者のウェブサイトによれば、在日インド人たちの数は東京地区だけで約7000人と言われているとのこと。催しが盛況であることはもちろんだが、ぜひ多数の方々が会期中に会場を訪れて、日印間で人々の交流をさらに深める きっかけとなることを期待しよう。
第13回ナマステ・インディア フェスティバル2005
会期:2005年10月1日(土)〜2日(日) 午前10時〜午後8時
会場:東京都 代々木公園

インターナショナルな「国内線」

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 エアインディア、インディアンエアラインス両社では、同じフライトで国内線区間と国際線区間を兼ねたものが少なくない。
 エアインディアは国際線・国内線空港が別々になっている街からの発着は、いつも前者なのでわかりやすいが、インディアンエアラインスの場合は、てっきりドメスティックと思い込んでいても、実は国際空港から離陸なんてことがある。国内線ターミナルから遠かったりすると、チェックインに間に合わなくてアウト!というドジを踏むことだってあるかもしれない。
 インディアンエアラインスのチェンナイからカリカット行きの便を利用した際、国内線ターミナルに着いてみると、隣の国際線のほうに行くように言われた。カリカット行きのフライトはオマーンの首都マスカットを経由して最終目的地はUAEのドバイまで行くものであることがわかった。
 インディアンエアラインスの時刻表を調べてみると、湾岸諸国行きを中心にこうしたフライトが多いことに気がつく。特にUAEは産油国としても湾岸地域の商業の中心地としても高い地位を占めているので、インドとのつながりが強いのだろう。

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