インドの「民営列車」について

インドにおける鉄道は英領期には複数の鉄道会社が各地で運行しており、中には「藩営鉄道」もあった。独立後はそれらが「インド国鉄」として統合されて現在に至る。唯一例外的に存在していた「英国資本の私鉄区間」はマハーラーシュトラ州のヤワトマルとアチャルプル間の189kmの路線のシャクンタラ・エクスプレス。こちらを所有していたのがKillick, Nixon and Companという民間企業であった。2020年を最後にこれは廃線となっている。

そのインド国鉄だが、実はインドでも国鉄民営化の話はときおり出てきた。その結果として近年は「民営列車」が登場している。

日本でかつての国鉄が民営化されたり、民営化後のJRの不採算路線の一部が廃止ではなく、自治体や民間企業との協力による第三セクターへと移管されたのとは異なる手法によるものとなっている。

現時点で「民営化列車」の数は多くないが、インド国鉄の子会社による運行となっていることだ。その子会社とはIRCTC。つまりインド国鉄のネット予約とケータリングサービスを全面的に取り扱っているあの会社だ。同社はBSE及びNSE上場の株式会社だが、株式の67%をインド政府が保有している。そういう特殊な背景のある企業で、外国人の目から見ると、インド国鉄におけるそうした事業が入札等の手続きなしでIRCTCに丸投げされているのは奇妙であるが、このIRCTCの存在そのものも「民営家圧力」の中から生まれたものであった。IRCTCの設立は1999年。

ネット予約についてはインドの複数の旅行ネット予約会社も取り扱っているが、IRCTCのシステムに乗り入れての実施であり、ユーザーはIRCTCのアカウント保有が利用条件となる。また国鉄のケータリングサービスはホテル運営会社などが受託しており、現場でサービスをしているのはそうした企業だが、IRCTCが入札を実施して委託しているものだ。(ラージダーニー、シャターブディー、ヴァンデーバーラト等々の特別エクスプレス及び一般エクスプレスの上級クラス車両において実施しているものであり、勝手に乗り込んできて商う物売りはこれに含まれない)

そうした状況ではあるものの、今後は外資を含めた様々な企業が参入する方向らしい。

ちょうどデリーその他の大都市における市バスの運行と似た展開かもしれない。例えばデリーにおいては、デリー交通公社(DTC)が市バスろ選を管理して運行させているが、この中には民間資本のバスも多く混じっている。バスのカラーリングや仕様は同一なのだが、そうした車両には受託した企業ないしは個人の名前が記されており、運転手と車掌も公社職員ではない民間人である。これらはデリー交通公社と契約して、同社のサービスとして、定められた路線を運行する事業受託業者の人々なのだ。

あるいは日本の自治体が所有する保育園、図書館、スポーツ施設等などで、事業を受託した民間企業により運営される「公設民営施設」が多いが、それらとも近いやりかたであると言える。

そんな具合なので、今後のインド国鉄では「民営列車」の運行は増えていくのだろうし、これに加えて、たとえば鉄道駅業務や保守関係業務等々の民間委託、不採算路線の民間委託等々といった方向にも展開することがあるのかも?と個人的には予想している。

Private Train in India: All That You Need to Know (RAI.MITRA)

買いそびれたマグネット

先日、南インドで買いそびれたマグネット。ドーサやワダーを模していて、なかなか秀逸。旅行荷物の一切合切を持っての移動中、半日ほどの鉄道乗り換え時間を利用して、オートをチャーターして回った先の中で眺めの良い展望台があり、そこの露店で見かけたもの。こういう気の利いた細かさはインドらしくない。

「へえ、いいじゃん。でもこんなの腐るほどあるんだろう」と思ったが、その後遭遇せず。こんなグッズにも一期一会ということがある。

実はまだどう転ぶかわからない「インドの選挙結果」(6月5日現在)

昨日6月4日にインドにおける今回の総選挙開票結果が明らかになった。日本では「モーディー政権三選、今回は支持を減らしつつも勝利」と報じられているが、実は組閣に成功するまではそうとは言えないようだ。

インドの報道で伝えられているところだが、党利党略とポスト獲得のためにBJPと帯同していた有力政党がそれぞれいくつかの「要求するポスト」のリストをBJPに渡しており、満足のいく結果が得られないとBJPを中心とするNDA(という政治アライアンス)から国民会議派を中心とするINDIAブロック(という政治アライアンス)に乗り換える可能性がかなりあるらしい。

総議席543議席のインド下院で、BJPが単独で過半数を得られなかった(240議席)ことから、協力関係にある有力政党の発言力は強くなる。またNDA全体で293議席、INDIA ブロックで234議席と大きな差はない。

そのため選挙戦途中でINDIA ブロックを抜けてNDAに寝返ったニーティーシュ・クマールのジャナタダル(12議席)、アーンドラの雄、チャンドラハーブー・ナイドゥーのテルグ・デーシャム(16議席)、チラーグ・パースワーンのローク・ジャンシャクティ・パーティー(議席)といったBJPに対する忠誠関係になく政党の合計32議席分の不安定要素がある。

打算でNDAに参加しているこれらの政党が、もしNDAを抜けてINDIA ブロックに合流すると、NDAは293議席-32議席=261議席、INDIA ブロックは234議席+32議席=266議席で、態勢は逆転してしまう。そこでどちらにも属さない小政党や無所属による残り16議席分がどのように動くか。

インド政治において、合従連衡の失敗による選挙結果の逆転劇は2019年末にもあった。マハーラーシュトラ州議会選挙でBJPとシヴ・セーナーの連合が圧勝したのだが、組閣におけるポスト配分でもめて、後者は選挙で敵として戦った相手である国民会議派とナショナリスト会議派と手を組むという驚きの連立政権を樹立させた。

そのようなことがあっては、シヴ・セーナーに票を託した人々の意思は?思いは?といったところだが、インドではこのような合従連衡の崩壊や乗換えはけっこう起きる。

ニーティーシュ・クマールもチャンドラバーブー・ナイドゥーのいずれも首相に次ぐナンバー2あたりのポストを要求するであろうし、どちらの政党も配下の議員たちに有力なポストを求めるはず。

ひょっとしてNDAが組閣に失敗して崩壊というようなことがあれば、INDIA Blockに彼らが乗り換えて、ニーティーシュ・クマールあるいはチャンドラバーブー・ナイドゥのいずれかが首相あるいは副首相、ラーフル・ガーンディーが内務大臣、国防大臣チラーグ・パースワーン・・・といった、思いもしなかった「インド新政府」が発足する可能性がまだ残されているというわけだ。

あながち「ヨタ話」とも言い切れず、昨年まではビハール州のチーフミニスター、副チーフミニスターとして協働しつつも、前者の地位にあったニーティーシュ・クマールが後者テージスウィー・ヤーダヴのラーシュトリヤ・ジャナタ・ダルとの連立関係を解消し、これと入れ替わりにNDA入りして州政権をジャナタダル+BJPという形で組み替えて激しい非難合戦を展開したふたりが、本日いずれもデリーに向かう飛行機の中で隣り合わせに乗って仲良く会話していたという報道もある。

デリーでは、まさにこれから組閣に向けてのNDAの重要な会合が開かれるが、それと同時にINDIA Blockのほうでも「政権奪取」に向けての最後の試みが展開中という。

前者の会合が難航し、後者の試みが成功すると、アラ不思議、勝利宣言をしたモーディー氏のBJPが野党に転落していて、国民会議派が与党連合の主軸としての組閣を発表・・・なんていうことがあるかもしれない。

インドの政治、インドの選挙というものは、いつもながら実に面白いなぁと思う。最後までどう転ぶかわからないハラハラのドラマである。

Tale Of 2 Pics: Nitish Kumar, Tejashwi Yadav Sit Together On Delhi Flight (NDTV Elections)

熱波と死者

北インドの熱波による死者に関するニュースが続いているが、6月1日に総選挙の最終となる第7フェーズの投票がなされたウッタル・プラデーシュ州では暑さにより1日で33人もの投票所スタッフが亡くなったとのこと。

これに先立つ第6フェーズの5月25日に投票が行われたデリーでも投票所のスタッフが12人も亡くなったとのこと。いずれも投票当日の1日間に起きたことだ。選挙関連の仕事をするのも、こういう季節には命懸けだ。

すでに出口調査ではBJP率いるNDAの大勝の見込みが伝えられているが、いよいよ明日6月4日に今回の総選挙の集計結果が出て勝敗が判明する。

Dozens killed by extreme heat in India as polls close in world’s largest election (CNNWorld)

 

トルコ菓子

フォートのここからコラバ方面に少し歩いたところにあるHURREM’Sというトルコ喫茶店が素晴らしい。

バクラヴァその他のトルコ菓子とトルコ式コーヒーや紅茶を楽しめる。このところ、インドの都会ではこうしたものを見かける機会が増えた。インド人とトルコ菓子は相性も良さそう。

こういうのが日本にあったら大ヒットしそうだ。高級感もあって良い。そのぶん高いのではあるが。