ロンリープラネット「INDIA」

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 ついに「LONELY PALNET」日本語版が発行された。
 この本は、ご存知のとおり、オーストラリアに本社があるLONELY PLANET PUBLICATIONS社のガイドブックを翻訳したもの。日本での版元メディアファクトリーからは、これまでイギリス、カリフォルニアなど欧米諸国、タイ、トルコ、バリにベトナム…と発行されてきたが、ついに真打登場(?)である。
 目下、店頭に並ぶ日本語版はまだ12タイトルと少ないが、今後ますます拡充されていくことだろう。
 オリジナルの英語版のほうは、世界の様ざまな国をカバーしているが、それだけではない。たとえば、インド関係だけでも、実に多彩なラインナップだ。メインとなる「India」以外に「North India」「South India」、ディープな山歩きガイド「Trekking in the Indian Himalaya」、都市ガイド「Delhi」「Goa」「Mumbai」、地域ガイド「Rajasthan」。ヒンディー語・ウルドゥー語、ベンガル語のフレーズブック、地図帳「India & Bangladesh RoadAtlas」、さらには旅行記まで刊行されている。
 読者の国籍が多岐にわたり、年齢層も若者から中高年までと幅広いため、1981年の初版発行から幾度も改訂を重ねてきたインド編。情報の蓄積量、旅行者が求めるツボをきちんと押さえた編集はスゴイのひとことに尽きる。
 対象となる国、執筆陣によって若干のカラーの違いはあるが、ほぼ統一されたフォーマットで構成されているため、文字ばかりギュ〜ッと詰まっていても、とても読みやすいつくりになっている。
 いままで日本語で発行されてきたガイドブックといえば、一目で内容が把握できるようヴィジュアル面に重きが置かれていたが、ロンリープラネットによる「圧倒的な質と量」は新鮮な驚きをもって迎えられることだろう。
 ただ、一部の業種をのぞき、日本で働く人々の休暇期間は限られている。大学生か専業バックパッカー(?)でないかぎり、これほど本格的なものに手を出すのだろうか…と少し心配にもなる。
 ともあれ与えられた情報を取捨選択するのは読者自身。新しいガイドブックを手に、これまで想像もしなかった「何か」に触れることができるかもしれない。インドでの新しい発見や楽しい出会いなど、みなさんの貴重な体験やご感想をぜひお聞かせ願いたい。

▼インド ロンリープラネットの自由旅行ガイド10

サリナ・シンほか多数共著

[メディアファクトリー刊/A5判/2004年/3200円]

日本では「ロンプラ」の愛称で親しまれ、世界中のバックパッカー必須のガイドブック『Lonely Planet』のインド編邦訳版がついに登場!聖地を巡り、アーショラムでスピリチュアル体験。宮殿ホテルでマハーラージャ気分。市場攻略、アーユルヴェーダ。ヒマラヤを望む北部から、南はケーララの海岸まで、インドを満喫するデータ&ガイドブック。 (ISBN:4840108668)

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洗濯楽しきゃ、旅楽し?

Photo by Tamon Yahagi
 せっかく気分よく旅に出ても、所帯じみた悩みは常につきまとうものだ。洗濯である。高級ホテルに泊まってランドリー・サービスを利用するわけではないので、基本的には自分で洗うことになる。(ときにエコノミーな宿でも頼めることはあるが)
 毎日シャワーは浴びるわけだから、ついでにシャツやズボンも洗濯するなんてワケないのだが、面倒なのは乾かすことなのである。
 乾季の時はいい。干してから数時間もすればパリッと乾く。庇のついたバルコニーがあれば、突然の雨に見舞われても大丈夫。
 一方、困るのは雨季だ。部屋にベランダも窓もないと最悪。仕方なくイスの上に広げたり、ビニール紐を張ったりしてみるのだが、なかなか乾かない。洗って一晩明けたというのに、ジットリ湿っている衣類を目の前にすると、朝からユウウツな気分になる。もちろん、扇風機を回したまま寝れば一晩でカラッと乾いてくれるが、自分自身がカゼをひいてダウンするというリスクがともなう。

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天国か地獄か、インド列車のしくみ(2)

Photo by Mamoru Miura / www.shumpu.com
 はたして客車料金の違いは、そのクオリティに見合ったものだろうか?例えば急行列車で1000キロ移動した場合の運賃は、以下のとおりである。
●二等座席…………188Rs
●二等寝台…………301Rs
●AC座席…………657Rs
●AC三段寝台…………845Rs
●一等…………986Rs
●AC二段寝台…………1,352Rs
●AC一等…………2,628Rs
 同じ列車に乗っても(通常、ひとつの列車に全クラスが連結されているとは限らないが)最上クラスに乗るには、最下クラスのなんと14倍もの運賃を支払わなくてならない。
 さらに、この同距離をラージダーニー急行のAC一等で行こうとすると、3150ルピーもかかってしまう。これは国内線の飛行機運賃並みである。その一方、1000キロという距離を急行ではなく、運賃の安い鈍行列車を乗り継いで行くと、たったの103ルピーで済んでしまうから驚きだ。このふたつの運賃を比較すると、その差は30倍以上になる。

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天国か地獄か、インド列車のしくみ(1)

Photo By Mamoru Miura / www.shumpu.com
 駅に着いたが出発まで時間がある。新聞を買って待合室で読むことにした。採光の悪い室内は陰気だが、腰を下ろせるベンチや体を伸ばせる長椅子などが置かれている。トイレとシャワーだってあるからそれなりに便利だ。古い駅ともなると、天井から大きな金具が突き出ている。まだ電気が通じていなかった時代、専属の使用人がここから吊るした板状のファンを動かしたのだろう。
 列車と同様、待合室もセカンドクラス(二等)とアッパークラス(一等やACクラス)が別室になっている。にもかかわらず、室内の様子は変わらないことが多い。アッパークラス用であっても特に快適なわけではないし、下のクラスと比べて清潔でもない。利用者の客層を分けること自体に意義があるのだ。
 「貧富の差が大きい」ということは、人びとの経済的な立場が違うということにとどまらない。教育水準、価値観や立ち居振る舞いだってずいぶん違ってくる。カーストとは異なる次元で人びとを律する生活水準の差。だれもかれも同じように扱うことは、少なくともいまのインドでは現実的ではない。
 列車内と待合室に共通点があるすれば、「上のクラスほど乗客の人口密度が低くなる」ということだろう。列車の客室では、高級なクラスほど客一人あたりのスペースが広い。暑さ寒さの厳しい折には、ACのありがたさが身にしみる。夜行では寝具が提供される。ラージダーニーやシャターブディーなど特別急行では食事や飲み物のサービスという嬉しい+αもある。

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